プロローグ3
「ぐっ!」
もがき始めたツクヨミ。その動きに合わせ首にピアノ線がさらに食い込む。ツクヨミのちょうど真後ろでピアノ線を掴み、ぶら下がっている俺に攻撃は出来ない。体を揺さ振り どうにか振り落とそうとするが 俺は絶対に手を放さない。苦しみと怒りがこもったような唸り声を上げながら、徐々に暴れる力が弱まっていく。
それを見計らい、線をさらに引き絞る。
その時だった、
「ギ−−ン!!」
鈍い音をたててピアノ線が切れた
まずい!!そう思った瞬間、頭を掴まれ体を持ち上げらる。
ぐりんと体をひねられツクヨミ・アスラと向き合う形になる。アスラの首には幾本の爪痕が残っている、自分の首に傷をつけ、深く食い込んだ線を切ったのか… 「殺すのか?」
そう問い掛けると醜い顔がニヤリと笑う、いや…笑ったように見えただけかもしれない。
「ぐはっっ!!」
腹の真ん中にアスラの腕が突き刺さり、血が奴の腕を染める。
腹の中で爪がグリグリと動くのが解る。
「あがぅっっ!」
喉から血が溢れ、声すら出せず、痛みと出血で意識が朦朧としてくるぼやけ始めた視界に歪んだツクヨミが見える。
まだ死ねない…
感覚の無くなって来た手でポケットをまさぐる。
あった…
それを握りしめ
、勢いよく金色の瞳に振り下ろす。
「グギャァァ!」
凄まじい叫びを聞きながら体を放り投げられる。
鉄で出来た廃倉庫の壁にしこたま打ち付けられ、更に意識が遠くなる。
まだ…死ねない…
アスラの瞳を突き刺した緋色の玉がついたカンザシを強く握る。
そして深い闇に落ちてくのを感じた…。