プロローグ2
先程のアスラの面影はない。
全身を覆う黒い毛、鋭く伸びた爪と牙、熊のような体躯そして金色にの瞳。
体が自然に後ずさる。
これが恐怖か?今まで感じた事のない感情が体内をかけめぐる。
「グォォ…」
今までみてきた異形な物とはまったく異なる 意志と強大な力を持つ。
こいつがツクヨミ本来の姿か…。金縛りにあったように動かない腕に無理矢理力を入れる。アスラの眉間を狙い躊躇なく弾き金をひくが 体に似合わない素早さでよけられる。
丸太のような腕が頭をめがけ振り下ろされ、間一髪頭を沈めるが左の脇腹に重い衝撃が走る。
「ぐっ…」
体がふわりと浮いて横に吹き飛ばされる。
すぐに立ち上がろうにも痛みで目がかすむ。
それでも立ち上がり 先程自分の居た場所を見やる。アスラの姿はない。
「ちっ」辺りを見回すが気配を感じない。
逃げたか?いや逃げるはずわない。
神経を研ぎ澄まし、気配を探る。ぴんと張り詰めた夜気に微かに動きを感じ、振り向き様に弾き金を引く
「グァァァァア!!」
低い咆哮をあげるツクヨミ。
当たった!?
続け様に引き金を引こうと思った瞬間、物凄い早さでこちらに向かってくる、よけるだけで精一杯だ。鋭い爪が体に細かな筋を幾つも刻んで行く。
このままではやられる!
一か八かで深く屈み反動で高く跳躍し、目の前のツクヨミ−−アスラの頭上を飛び越える。
「ガァァッッ!」
飛び越え様に首に巻き付けたピアノ線がギリギリと首を絞め始める。