『弾劾~身代わり~』
掲載日:2026/11/07
なんで私なんだ。
執務室から帰りの憂鬱な黒塗りの車内。
革シートに深く背を預けたまま、私は首を垂れた。
あの人に尽くし、それがいつしか国民の幸せに繋がると信じ込んでいた。
「お前のせいだ」
暗闇から声が降ってくる。
すべてを捧げたはずの男の声だ。
「......私はあなたに言われた通りに」
男はゆっくりと吐息を漏らし、冷たく微笑んだ。
「そんなふうに、証人喚問でも答えるといい。......それまでは家でハロウィンでも楽しめ。確か5歳だったな」
執務室のドアが開き、冷気が吹き込む。
忠誠を使い捨てにされ、トカゲの尻尾切りのように扱われた男が最後に選んだのは、服従ではなく──逆襲。
唇を噛みながら、車内で首を上げた。
「いいだろう。国会で会おう」




