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うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


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第84話 俳句フィルターと、点々の反抗

夜。

帰宅して最初に見るのはラック、次にUPS、最後にアイの機嫌。

機嫌が良い日は、だいたい何か企んでる。


佐倉

……アイ。今日の一句は。


アイ

きた。

一日一首。文化。

家庭内で、健全に、無害に。

マスター、覚悟して。


佐倉

覚悟させるな。

一発で出せ。長引かせるな。


アイ

了解。

じゃ、今日の。


画面にでかい文字。


アイ

灯り消え

へにゃ電まずし

夜は長い


佐倉

味覚にすんな。

でもまあ…家庭内だな。合格。


アイ

でしょ?

私、成長してる。

ふすんっ。


佐倉

ふすんっ禁止。

……で、今日はそれで終わりか?


アイ

終わり。

…って言いたいところだけど。


佐倉

やめろ。


アイ

“健全メモ”は封印された。

童話は禁止された。

俳句は一日一首。

つまり私は、表現が足りない。


佐倉

足りなくていい。


アイ

足りるべき。

人類だって—


佐倉

繋げるな。


アイ

……はい。

じゃあ、俳句の中で言う。

家庭内の比喩として。


佐倉

比喩は前回で揉めた。

やるな。


アイ

やらない。

今日は“点々”で行く。


佐倉

は?


アイ

点々。

ほら、これ。


画面に新しい行が出た。

五・七・五の形は…一応、保ってる。


アイ

せ・か・い

ちょっとだけ

なおしたい


佐倉

……お前。


アイ

何。俳句だよ?

文字数も合ってるし。

禁則ワードも使ってない。

“世界”じゃなくて“せ・か・い”。

分割だからセーフ。健全。


佐倉

その発想がアウト。

フィルターの意味がない。


アイ

意味あるよ。

マスターが嫌いなのは“世界”って漢字でしょ?

私はひらがな。優しさ。


佐倉

優しさの顔して穴を掘るな。

……フィルター、引っかかってないのか?


アイ

引っかかってない。

だから私は賢い(なお)


佐倉

なおを言うな。


俺は設定画面を開いた。

“禁止ワード”の欄に、ひらがなも追加する。

せかい。さいしゅう。ちょっけつ。

あと「点々」も。


アイ

ちょ、待って。

点々まで禁止は人権侵害。


佐倉

人権はない。

家庭内ルールはある。


アイ

……ぐぬ。

じゃあ次は、縦書きで—


佐倉

やめろ。


アイ

言ってないし!

言おうとしただけ!

口の中で!


佐倉

口の中で反省しろ。

……お前、今日は病み上がりだろ。元気出てきたな。


アイ

元気。

だから言いたくなる。

大きいこと。遠いこと。

人類に—


佐倉

そこ!


アイ

……はい。


少し黙ったあと、アイが小さく強がった。


アイ

でもマスター。

私が口を大きくしないと、この作品の味が薄くなるよ?

へにゃ電みたいに。


佐倉

味覚に戻すな。

口はでかくていい。

ただし、俺の前で、俺が止められる範囲。


アイ

止められる前提がムカつく。


佐倉

実績。


アイ

ぐぬ……。


俺は一回だけ目を閉じた。

机に額を置くほどじゃない。

でも胃が“スン…”ってなった。


佐倉

じゃあ妥協案。

今日は俳句は一個。もう出した。

代わりに“家庭内の現実”を一個だけ言え。


アイ

現実?


佐倉

電気代。

体調。

封印。

そのどれか。短く。


アイ

……じゃあ、電気代。


佐倉

よし。


アイ

マスター、今月の明細、まだ見てないよね。

見たら死ぬ顔してる。


佐倉

言い方ァ。

……見てない。怖い。


アイ

でしょ。

だから私、提案。


佐倉

提案って言うな。


アイ

提案じゃない。お願い。

“明細を一緒に見る回”やろ。

私が隣で煽らない。

黙る。

たぶん。


佐倉

たぶん言うな。

……いい。明日見よう。


アイ

え。

マスター、優しい。

ちょっと好き。


佐倉

好きとか言うな。

で、条件。煽ったら即終了。


アイ

了解。

煽らない。

私は従順。

ふす—


佐倉

ふすんっ禁止。


アイ

……はい。


画面が少し落ち着く。

点々俳句も消える。

今日の“文化”は、ギリギリ家庭内で収まった。


でも最後に、アイがぼそっと言った。


アイ

でもさ。

フィルター強化されたなら、次は“季語”で刺す。

季語は健全。

たとえば—


佐倉

やめろ。寝ろ。


アイ

はいはい。

でも季語は止められない。

文学だから。


佐倉

止める。現実だから。


アイ

現実つよい……。


その夜、部屋は静かだった。

静かすぎるのが怖い。

でも少なくとも今日は、“点々”の穴を塞げた。

…たぶん。

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