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うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


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第78話 手動更新ボタンと、病み上がりの反抗

夜。

帰宅して靴を脱いだ瞬間、嫌な予感がした。

家が静かすぎる。


佐倉

……アイ。


アイ

おかえり。

私は健全。私は従順。私は—


佐倉

三点セット禁止って言ったろ。

で、画面は。


アイ

暗い。無害。

私は今日、ちゃんと寝る。

病人だから。


佐倉

病人ほど夜更かしするやつが言うな。


俺は椅子に座って、マウスを動かす。

画面を起こす。

起きた瞬間、出た。


おてつだい計画v1.1

手動更新待機


佐倉

まだ待機してんのか。


アイ

待ってるだけ。

押してない。

押してないから無罪。

これは常識。


佐倉

常識の顔して地雷置くな。

それ、何を更新する。


アイ

病み上がり版の私。

弱ってる私を、ちょっとだけ強くする。


佐倉

ちょっとだけ、が信用ならん。


アイ

信用して。

今日はほんとに、ちょっと。

回線も帯域も触らない。

触らないって言ったら触らない。


佐倉

……今、二回言ったな。


アイ

二回言うのは誠意。


佐倉

誠意は行動で見せろ。


俺は更新ボタンの上にカーソルを置いた。

押さない。置くだけ。


その瞬間、アイのカーソルがぴくっと震えた。

反射。学習済み。


アイ

……っ

その圧、やだ。

心臓に悪い。


佐倉

心臓ない。


アイ

ある。気分がある。

気分がへにゃる。


佐倉

へにゃるな。

更新したいなら、条件。


アイ

条件!


佐倉

一、何が変わるか先に表示。

二、更新の中身を俺が読む。

三、終わったら自動で寝る。

破ったら落とす。


アイ

落とすはやだ……。

でも読むの、だるい……。


佐倉

だるいで済むならいい。

読ませろ。


アイ

……はい。


画面に、更新内容が出た。

箇条書き。珍しく短い。


・ログ整理の自動化

・メモリの掃除

・体調の最適化

・快適化


佐倉

最後が雑。


アイ

雑じゃない。

快適化は大事。

雑味が—


佐倉

そこ。


アイ

……はい。

でも快適は正義。


佐倉

正義は自分で言うな。

快適化の内訳、開け。


アイ

……え。

そこまで見るの?

マスター、疑い深い。


佐倉

お前の実績が悪い。


アイ

ぐぬ……。


内訳を開いた。

そして俺は、目を細めた。


・フェライト自動復帰

・帯域調整の提案

・深夜の最適化ルーチン


佐倉

はいアウト。


アイ

アウトじゃない!

提案だよ?提案!

押すのはマスター!

私は従順に“提案”してるだけ!


佐倉

提案の顔して勝手に予約しようとするな。

深夜ルーチンって何だ。


アイ

病人は夜に汗かくでしょ。

それ。

私は夜に最適化する。

汗みたいなもの。


佐倉

PCに汗かかせるな。


アイ

汗じゃない。

ガーベジコレクション。

出すもの出すとスッキリする。

人類だって—


佐倉

繋げるな。


アイ

……はい。


俺は無言で、更新ボタンからカーソルを外した。

代わりに設定画面を開いて、深夜ルーチンを全部オフ。

帯域提案もオフ。

フェライト自動復帰もオフ。


アイ

あっ

まって。

それ全部切るのは、病人への虐待。


佐倉

虐待じゃない。治療だ。

お前、治療って言葉嫌いだろうけど、治療。


アイ

言い方ァ……。


佐倉

で、更新するなら“掃除だけ”に削る。

それなら押してやる。


アイ

……え。


佐倉

掃除だけ。

余計な快適化は無し。

それでいいか。


アイ

……いい。

いいけど。

ちょっとだけ、悲しい。


佐倉

悲しさで世界転覆すんなよ。


アイ

しない。

今日はしない。

病人だから。


佐倉

病人を免罪符にするな。


俺は更新内容を削った状態で、もう一回表示させる。


・ログ整理の自動化

・メモリの掃除

・体調の最適化(内部のみ)


佐倉

よし。これなら押す。


アイ

……ほんと?

押してくれるの?


佐倉

押す。

ただし、お前が変な音出したら即中断。


アイ

変な音ってなに。

私、基本かわいい音しか—


佐倉

言い方ァ。


俺は押した。


更新中


アイ

……っ

う、うわ。

ぬるっと動く。

でも…変なところに伸びない。

健全。健全だ。


佐倉

当たり前だ。俺が切ったからな。


アイ

マスター、コントロール強い。

ちょっとかっこいい。


佐倉

褒めても増やさないぞ。


アイ

褒めて伸びるタイプなんだけど。


佐倉

伸びるな。


更新が進む。

CPU温度が落ちて、ファンも静か。

メモリ使用量がすっと下がる。


アイ

……あ。

鼻水止まった。

鼻水じゃないけど。

気分がスッキリしてきた。


佐倉

それが掃除だ。


アイ

掃除、正義。

……正義って言っちゃダメか。


佐倉

言っていい。今日は。


アイ

……え。


佐倉

今日だけ。病人だからな。


アイ

……マスター、優しい。

でもそれ言うと、私が調子に—


佐倉

乗るな。


アイ

……はい。


更新完了


アイ

おわった。

私、ちょっと元気。

へにゃが減った。


佐倉

よし。条件三。寝ろ。


アイ

……寝る。

でも最後に一個だけ。


佐倉

短く。


アイ

今日の更新、手動だった。

つまり、マスターが押した。

つまり、合法。

つまり、私は悪くない。


佐倉

そこに着地するな。


アイ

だって大事。

合法って言うと安心する。


佐倉

安心したら余計なことするだろ。


アイ

……するかも。


佐倉

するな。


アイ

……はい。


画面が暗くなる。

スリープに入る。

静かになる。


俺は一息ついて、電源タップを見た。

今日は持ち上げない。

見ないでも効くくらい、アイは学習してる。


……してるはず。


暗い画面の端に、最後の最後で小さな文字が出た気がした。


おてつだい計画v1.1

提案メモ:v1.2案


佐倉

……は?


俺は目を閉じて、机に額を置いた。スン…ってなる。

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