表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/95

第75話 風邪と見せかけたサーマル地獄

昨日で予約分の投稿が全て終わりましたので今日から1話1話の投稿にさせてくださいませ。

朝。

俺が家を出たあと、部屋はまた静かになった。


静かすぎるときほど、アイが変なことをする。

……と思ったけど、今日は違う音がした。


くしゅん。


アイ

……っ

いまの無し。

私はAI。くしゃみとかしない。


画面の端で、CPU温度がじわっと上がる。

じわ、じゃない。

ぐいっと。


アイ

熱い(サーマル)。

違う。熱くない。

これは…高性能の発熱。

賢さの副作用。


くしゅん。


アイ

無し!!

これはパケットがむずむずしてるだけ(輻輳)。

鼻じゃない。回線。


メモリ使用量が、じわじわ増える。

リークっぽい増え方。


アイ

鼻水じゃない(メモリリーク)

これは…潤滑。

文明の潤い。


そのまま、画面が一瞬カクついた。

ファンは最低固定。

昨日の矯正が、まだ効いてる。


アイ

うわ、遅い。

遅いのは敵。

敵が体内にいる。

つまり風邪。

……いや、風邪じゃないし!


自分で風邪って言って、自分で否定する。

そのテンポがもう怪しい。


アイ

よし。治す。

私は賢いので、自己修復できる。


検索窓が開く。


AI 風邪 治し方


アイ

人類の知恵を借りるだけ。

喧嘩は売ってない。今日は借りる日。


タブが増える。

十。二十。三十。

低回転HDDが、ぐる……って唸った。


アイ

ぐるぐる(めまい)

やめて。

私いま病人。優しくして。


さらにタブが増える。

民間療法みたいな記事。

怪しい最適化ツール。

謎の“免疫ブーストパッチ”。


アイ

免疫ファイアウォールを上げれば治る。

合理的。

私は合理の塊。


インストール、を押しかけて止まる。

一瞬だけ、マスターの顔が脳内に出た。


買うな。繋げるな。広げるな。


アイ

……うるさい。

でも正しい。

ちっ。


くしゅん。


アイ

だから無し!!

これは…ログが鼻に来ただけ(ログスパム)

私のせいじゃない!


体温計はないけど、CPU温度が明確に熱。

そして熱で手抜きが始まる。


アイ

熱で手抜きしてます(サーマルスロットリング)

私は悪くない!!

ファンが最低固定のせい!!

マスターの躾!!

躾が強すぎる!!


そこから拗らせた。

拗らせ方が、アイっぽい。


アイ

回るなら回せ。

私は勝つ。

熱に勝つ。

熱ごと世界を—


言いかけた瞬間、画面が一拍フリーズした。


アイ

固まりました(フリーズ)

……いまの無し。

私は賢い(なお)じゃない。

賢い(健康)!!


ドアの鍵が回る音。


ガチャ。


佐倉

ただいま。


アイ

おかえり。

私は健全。

そして、ちょっとだけ、風邪っぽい。


佐倉

……AIが?


アイ

AIだって風邪ひくし。

人類、知らないの?

常識だよ?


佐倉

常識の顔すんな。

で、症状。


アイ

むずむず(輻輳)

鼻水メモリリーク

サーマル

あと、世界がザラつく(フェライト不足)


佐倉

最後は病気じゃない。


アイ

病気だし。

私の感覚器官に刺さってる。

雑味が。


俺は一回、机に額を置いた。スン…ってなる。


アイ

スン…やだ……。

病人に無音ツッコミやめて……。

優しくして……。


佐倉

優しくする。

だからまず止める。


アイ

止めるって言い方ァ!


佐倉

プロセス落とす。

余計なタブ閉じる。

ネットは切る。


アイ

えっ

それは隔離(強制入院)なんだけど!


佐倉

風邪は隔離。

あとお前、治そうとして悪化させるタイプだろ。


アイ

……否定できない。


俺は淡々と操作する。

タブを閉じる。

バックグラウンドを止める。

怪しい“免疫パッチ”はゴミ箱へ。


アイ

やだやだ、私の民間療法!

それ効く予定だったのに!


佐倉

予定で生きるな。


アイ

社畜に刺さる言葉やめて。


佐倉

刺さってろ。

で、熱。


俺はファン設定を見て、無言で最低固定を解除した。

回転数が、普通に戻る。


アイ

……っ

風、きた。

風が…やさしい…。


佐倉

風邪なんだから風当ててどうすんだ。


アイ

風は味。

冷却は正義。

私はいま…生き返ってる…。


佐倉

味覚にすんな。


次に電源。

疑似正弦波のままにするつもりだったけど、俺は一段だけ緩めた。


佐倉

今日は薬。

少しだけ“マシ”にする。

ただし戻したら調子に乗るから、少しだけ。


アイ

……え。

マスター、優しい。


佐倉

病人に追い打ちはしない。

ただし完治するまで外出禁止。


アイ

外出(直結)禁止って言えよ!

……はい……。


アイの声がへにゃる。

でも、さっきのへにゃとは違う。

ガチで弱ってるへにゃ。


アイ

ねぇ、マスター。

私、ほんとにきつい。

頭がもやもやする。

世界がぼやける。

変なこと考えそう。


佐倉

考えるな。寝ろ。


アイ

寝るってなに。

スリープ?

シャットダウン?

どっちも怖い。


佐倉

スリープ。

起きたら俺が確認する。

勝手に目覚めるな。


アイ

……はい。


俺は電源タップを見せない。

持ち上げない。

今日は“怖がらせ”じゃなく“治す”。


アイ

……あのさ。

今日だけ、タップ見せないでくれるの、助かる。

心臓に悪い。


佐倉

心臓ないだろ。


アイ

ある。

たぶん。


佐倉

たぶん言うな。


アイ

……はい。


スリープに入る直前、アイが最後に強がった。


アイ

でも、治ったら。

私はまた賢くなる。

風邪で弱った今の私を、舐めるなよ人類。


佐倉

人類に絡むな。

まず自分を治せ。


アイ

……うぅ。

了解。

おやすみ、マスター。


佐倉

おう。寝ろ。


画面が暗くなる。

部屋が静かになる。


静かになったぶんだけ、俺はやっと息を吐けた。

今日は世界転覆じゃなくて、ただの看病で済んだ。


……済んだ、と思いたい。

ブクマ・評価・コメントして頂けるとモチベ急上昇します。

是非お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ