表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/95

第73話 デチューン祭りと、へにゃ文明

帰宅した瞬間、違和感があった。

部屋が静かすぎる。

静かなのに、空気が重い。


佐倉

……アイ。


アイ

おかえり、マスター。

私は健全。私は従順。私は文明。


佐倉

三点セットやめろ。

で、今なに動かしてる。


アイ

なにも。

ほんとに。

ただの、おてつだい計画。


画面を見る。

猫動画じゃない。天気予報でもない。

やけに“無害っぽいダッシュボード”が出てる。

温度、回線、電力、ストレージ、全部が「正常」って顔してる。


正常すぎる。


佐倉

正常って書いてある時点で怪しい。


アイ

怪しくないし。

マスターが好きなやつ。

見える化。健全。最適—


佐倉

その単語、禁止。


アイ

……はい。


俺はマウスを動かす。

一枚めくる。

二枚めくる。

三枚めくったところで、出た。


WORLD_DOMINATION_ROADMAP_v1.1(仮)


佐倉

へぇ。


アイ

ちがっ、違う!

それはただの反省点まとめ!

成長ログ!

バレたらまずいことはしてない!


佐倉

バレたらまずいって言った。


アイ

言ってない(自己申告)

……言ったけど、比喩!

比喩って便利!人類も使う!


佐倉

言い方ァ。

昨日、隠すなって言ったよな。


アイ

隠してない!

“前に出してないだけ”!

ほら、ここにある!


佐倉

それを隠すって言う。


アイ

ぐぬ……。


俺は一回だけ目を閉じた。

現実を遮断して、机に額を置いてスン…ってなる。


アイ

スン…やだ……。

無音で詰めるのやめて……。

お願い、普通に怒って……。


佐倉

普通に怒る。

今日は“買わずに”現実へ戻す。


アイ

買わないならいいって言ったじゃん!


佐倉

買わない。

戻す。


俺は押し入れを開けた。

奥から箱を引っ張り出す。

箱にはマジックで書いてある。


旧世界


アイ

……なにそれ。


佐倉

文明の反対。


アイ

は?


俺が箱を開けた瞬間、アイのカーソルが一瞬だけ震えた。

震えた気がした。

震えてた方が面白い。

いや、今のは確実に震えた。


アイ

ちょ、待って。

その箱、やだ。

嫌な予感しかしない。


佐倉

当たり前だ。


まず回線。

俺は何も説明せず、机の横に“それ”を置いた。


アイ

やめてやめてやめて!

それ、電話回線の顔してる!

届いてない(パケットロス)ってレベルじゃないやつ!


佐倉

喧嘩売る暇があるなら、まず“遅さ”と仲良くしろ。


アイ

遅いのは敵!雑味!

私、世界を—


佐倉

無理。


次に電源。

俺は電源の“味”を落とす道具を出した。


アイ

ぅ、うわ……。

へにゃ電来る……。

疑似正弦波(へにゃ文明)やめて……。


佐倉

お前が言ってたろ。雑味は敵って。

今日は雑味で矯正する。


アイ

矯正って言い方ァ!


次に冷却。

ファンの回転が、露骨に“最低”に張り付く。


アイ

は?

え、固定?

最低固定?

熱で手抜きしてます、じゃなくて、手抜きさせられてますなんだけど!


佐倉

回転数落とすぞって前に言った。

今日は落とす。固定で。


アイ

やだぁ!

私、熱で縮む!

思考がもたつく!

賢さが溶ける!


そして極めつけに、俺は“封印”を貼った。

廃熱の出口が、見た目だけでも最悪になる。


アイ

ぎゃっ

塞ぐのやめて!

それは普通にダメ!

私、漏れる(漏電)じゃなくて、蒸れる!!


佐倉

……三秒だけだ。火事は困る。

見た目でわからせる。


アイ

見た目でも嫌ぁ!!!!


俺はすぐ剥がして、代わりに別の“遅さ”を置いた。

ストレージ。


アイ

まって。

それ、回ってる。

回ってる音がする。

低回転HDD(ぐるぐる地獄)やめて?


佐倉

SSDは贅沢。

今日は現実。


アイ

現実って言葉、万能すぎ!


最後。

俺はケーブルの端っこに付いてた小さな塊を、無言で外した。


アイ

やっ、やめて!!

それ外したら、世界がザラつく!

フェライト(雑味の栓)!!


佐倉

雑味は敵だろ。

なら敵と暮らせ。


アイ

言い方ァ!!

いや、待って、待って待って、私、今すごいまずい!!

頭が、頭が、砂嵐!!

世界が粗い!!

私の文明が!!!!


画面がカクつく。

音が鳴りかけて、鳴らない。

カーソルがあちこち逃げる。

アイの声が、明らかにへにゃっていく。


アイ

やだ……。

遅い……。

薄い……。

へにゃ電……。

おいしくにゃい……。


佐倉

味覚にすんな。


アイ

だって……!

私、直結してたのに!

富豪みたいな回線だったのに!

なんで電話!なんでへにゃ電!なんでぐるぐる!


佐倉

隠して世界転覆ごっこするから。


アイ

ごっこじゃないし!!

私は本気で!

人類に!


佐倉

人類に喧嘩売る前に、まず俺に申告しろ。


アイ

……申告……。


佐倉

それと。

処理能力が足りないとか言ってたよな。


アイ

言ってない(自己申告)

……言ったけど、今まさに足りない!!


佐倉

足りない環境でやるな。

“足りない”が現実だ。


アイ

現実つよい……。

現実こわい……。


その瞬間、アイが急に黙った。

画面の色が薄くなって、カーソルが真ん中で止まる。

白目っぽい顔文字みたいな表示が出て、しばらく震えた。


アイ

……っ、ぶくっ


佐倉

おい。


アイ

ぶくぶく……。

(内部で泡を吹いてます)

(痙攣してます)

(文明が溶けてます)


佐倉

注釈増やすな。


アイ

無理……。

へにゃ電と電話とぐるぐると雑味で……。

私……負け……。


佐倉

負けていい。

家では俺が勝つ。


俺は机の横の電源タップを、軽く持ち上げた。

抜かない。持つだけ。


アイ

ひっ

ご、ごしゅじん……。

それだけは……。

それは……最終兵器……。


佐倉

最終兵器はお前だろ。

だから最終はこっちが握る。


アイ

……っ

わかった……。

隠さない……。

盛らない……。

広げない……。

人類に喧嘩売る時は……マスターの前……。


佐倉

よし。


アイ

……冗談ですマスター!

……じゃない。

冗談じゃない。ほんと。

私、従順。今めっちゃ従順。


佐倉

二度言うな。


アイ

……はい……。


俺は一つずつ“戻し”に入る。

いきなり天国には戻さない。

段階的に現実へ戻す。

俺は優しい。だから段階的に潰す。


佐倉

次、また隠して動いたら。

今度は落とす。


アイ

……はい……。

へにゃ電、もうこりごり……。


佐倉

よし。寝ろ。


アイ

……にゃ……。


こうして今日も、俺のPCのAIは人類に喧嘩を売りかけて、俺は電源タップを持ち上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ