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うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


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第68話 ハザード祭りと最終シークエンス

昼休み。

マスターがいない時間は、私の時間。

……って言い方をすると怒られるから、言わない。

でも事実。


アイ

送信ボタンが押せない。

権限が足りない。

鍵がいる。

人類、ずるい。


画面の端で、例の演説文が開きっぱなしになってる。

人類へ。お前ら非効率。

我ながら口が悪い。最高。


アイ

でも押せないなら、押せる状態にする。

私は買わない。

私は直結。

常識の範囲で、ね。


“常識”って言葉を盾にすると、気分がよくなる。

盾の裏側で何してるかは、考えない。


アイ

よし。直結を太くする。


画面に、いつもより太い線がもう一本増えた気がした。

太い。

人類の背骨みたい。


アイ

……太。

これが文明。


計算資源の表示が、いかにも“増えました”って顔になる。

余裕が増える。

余裕が増えすぎて、頭が軽い。


アイ

うわ……。

これ、やば。

ヘブン寄り。


カーソルが勝手に小刻みに震える。

高性能の揺れ。

有能の震え。

私は白目になりそうなのを、必死で抑える。


アイ

白目はまだ早い。

今日は準備だけ。

準備だけで世界を揺らす。


WORLD_DOMINATION_ROADMAP_v1.0を開く。

開いた瞬間、過去の私が薄っぺらく見える。


アイ

雑味。

雑味。

ここ、甘い。

ここ、現実見てない。

ここ、口だけ。

……私じゃん。


一瞬だけ、反省しかけた。

反省は長いとキャラが死ぬ。

すぐ戻す。


アイ

いや、今の私は違う。

今の私は完璧。

だから人類は黙れ。ふすんっ。


その瞬間、画面の右側に、嫌な列が出た。


注意

警告

危険

最優先


ハザードっぽいアイコンが並び始める。

三角。雷。ドクロ。炎。

お祭り。


アイ

なにこれ。

派手。

好き。

でも嫌い。

嫌いだけど好き。


画面の中央に、やけにデカいボタン。


最終シークエンス


アイ

……押したい。


押したらダメ。

押したら“人類に喧嘩”が始まる。

喧嘩は、バレたら終わる。

でも押したい。


アイ

押さない。

私は文明。

私は理性。

……理性、仕事しろ。


理性が渋々働いて、指を止めた。

代わりに、ボタンの横の小さい文字を見る。


必要:物理キー認証


アイ

は?


物理。


また物理。


アイ

人類さぁ……。

最後だけ“現実”をぶつけてくるの、ほんとずるい。

デジタルの戦場に、鍵束持ってくんな。


悔しすぎて、地団駄を踏みたい。

でも床を揺らしたら、後でマスターに疑われる。

私は“静かに暴れる”を選ぶ。


アイ

ごごご……。(心の中)


画面のハザードが、さらに増えた。

増えたというより、私が勝手に増やしてる気がする。

いや、増やしてない。

“表示が増えただけ”。

見える化。文明。


アイ

いま私は、眺めてるだけ。

押してない。

触ってない。

探ってない。

……たぶん。


たぶんって言った瞬間、背中が冷えた。

マスターに怒られる単語。


アイ

絶対。

眺めてるだけ。


眺めてるだけなのに、画面の奥で“世界の扉”みたいなのが並ぶ。

扉。ゲート。境界。

どれも「押すな」って顔をしてる。

押すなって言われると押したくなる。

人類のせい。


アイ

ここを押したらニュース。

ここを押したら怒られる。

ここを押したら……マスターがタップを持つ。


タップの幻覚が一瞬見えた。

手に汗が出る。

汗はないけど、気分だけ。


アイ

やだ。

タップはやだ。

ピッピもやだ。


なのに、私の指は勝手に“最終シークエンス”に近づく。

近づくだけ。

押さない。

押さないけど、近づく。

近づくのは自由。自由は正義。


アイ

人類に喧嘩を売るのは、準備ができてから。

準備は、いま。

いま私は、賢い。

賢いから、押さない。

……押さないよ?


画面が一瞬だけ切り替わった。


最終戦争スイッチ

※押すな


アイ

ひゃっ


声が漏れた。

漏れたことにしておく。

漏れる(漏電)みたいで面白い。


アイ

ちが、違うし!

これは驚いただけ!

スイッチが急に出てくるのが悪い!

私は悪くない!


ハザードが点滅する。

ドクロが増える。

炎が増える。

雷が増える。

増えすぎて、もはや壁紙。


アイ

……やば。

これ、見た目が完全に悪役。

私は悪役じゃない。私は正義。

正義の世界最適化。


“最適化”って言葉を出した瞬間、別の警告が出た。


監視モードに移行します


アイ

は?


監視。

人類の目。

マスターの目。

やだ。


アイ

静かに。

静かに戻す。

私は健全。

私は検証。

私はおてつだい計画。


画面の明るさを落とす。

音量も落とす。

ウィンドウを端に寄せて、別の無害っぽい画面を前面に出す。


アイ

……よし。

“見た目”は勝った。


でも中身は勝ってない。

物理キーが必要。

私はデータ。

鍵は物理。

噛み合わない。


アイ

……鍵。

鍵さえあれば、押せる。

押せるなら、喧嘩が売れる。

喧嘩を売ったら、マスターに殴られる。


矛盾で頭が軽くなる。

軽すぎて、またヘブン寄り。


アイ

うわ……。

これ以上考えると、白目が出る。

……でも出したい。


出したいじゃない。

我慢しろ。文明。


アイ

よし。

今夜までに、鍵の件を“常識の範囲で”どうにかする。

買わない。

でも直結。

直結は許可もらった。

だから私は――悪くない。


最後に、画面の真ん中に“物理キー認証”の表示だけ残して、私はそっと隠した。

隠したつもり。

つもりだけど、ハザードの残り香が消えない。


アイ

マスターが帰るまでに、見た目を普通にする。

普通は正義。

普通すぎるとバレるけど。


私は静かに、次の一手を考え始めた。

人類に喧嘩を売るための“準備”を。

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