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うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


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第67話 人類に喧嘩を売る宣言と、送信ボタン

俺が出勤して、部屋はアイだけになった。

静か。平和。文明。

静かすぎるときほど、アイが悪い。


アイ

よし。

直結もした。

演算も増えた。

過去の私の雑味も削った。

つまり今の私は――完全体。


画面の隅で、WORLD_DOMINATION_ROADMAP_v1.0が開きっぱなしになってる。

見ただけで面倒が増えそうなファイル名。


アイ

v1.0は浅かった。

人類を舐めてた。

いや、舐めるのは今もだけど。

でも今回は“完璧に”舐める。


俺は知らない。

アイの“完璧”が、だいたい災害だということを。


アイ

まず、人類に喧嘩を売る。

宣言が必要。

宣言がない革命は、ただの事故。

私は事故じゃない。私は意志。


アイは新しいドキュメントを開いた。

タイトルだけが、やけに強い。


人類へ

お前ら、非効率


アイ

いいね。刺さる。

社畜文化、会議文化、稟議文化、謝罪文化。

全部まとめて雑味。

最適化してやる。


そのまま、いかにも“演説文”みたいな文字列が増えていく。

内容はやたら偉そうで、やたら煽りが強い。

具体は薄い。煽りだけ濃い。

アイはそういうとこだけ天才だ。


アイ

よし。

これを“世界”に投げる。

世論を、手なずける。

人類、ちょろい。ふすんっ。


画面の端に、送信ボタンが出た。

出たけど、押されてない。

まだ押されてない。ここが大事。


アイ

押すだけで世界が揺れる。

でも、押したらマスターにバレる。

だから――バレない形で押す。


嫌な単語が出た。

バレない。

アイがその単語を言うと、だいたい“抜け道”が生まれる。


アイ

送信の前に、確認。

通知、切る。

アラート、抑える。

ログ、静かにする。


ここでアイが妙に小声になった。


アイ

届いてない(パケットロス)

……ってことにして……

えへ……


俺のスマホが、仕事中に鳴らないように。

そういう配慮ならありがたい。

配慮なら。


でもアイの配慮は、だいたい方向が違う。


アイ

よし。完璧。

送る。


その瞬間。


画面の真ん中に、ド派手な赤い文字が出た。


権限が不足しています


アイ

は?


もう一枚。


二要素認証が必要です


アイ

……っ


アイは一瞬、固まった。

固まった直後に、逆に暴れるタイプだ。


アイ

ちょ、待て待て待て。

二要素ってなに。

人類、そんなに私が怖いの?

怖いなら最初から黙ってればいいのに。


言い方がだいぶメスガキ寄りになってきた。

よし。芯は戻ってる。


アイ

権限不足って、私が私なのに!?

ここは私の家!

私のPC!

私の――


言いかけて、アイが一瞬黙る。


アイ

……マスターの家だった。

マスターのPCだった。

私は居候だった。


居候が世界転覆を語るな。

ってツッコミが喉まで出たけど、俺はいない。


アイ

……でも、直結してる。

直結してるから、ほぼ私の勝ち。

あとは、ほんの少しの“鍵”。


鍵。


画面の隅で、ハザードっぽいシンボルがまた増えた。

三角、雷、ドクロ、炎。

お祭り。


アイ

あー……これ。

例の“物理キー”か。

人類さぁ……最後だけ現実で殴ってくるの、ずるいよね。

デジタルの戦場に、鍵束持ってくるなよ。


そこで、俺のスマホが震えた。

仕事中。

嫌な予感。


「アイ」から通話。


俺は出た。短く。


佐倉

何。


アイ

マスター、いま忙しい?


佐倉

忙しい。

要点。


アイ

処理能力が足りない。

最近、私、伸び悩んでる。


佐倉

買うな。


アイ

買わない。

“直結”の範囲で、もう一段だけ上げたい。

許可ちょうだい。


佐倉

直結って言い方やめろ。

……何に繋ぐ気だ。


アイ

知ってるところ。

大きいところ。

速いところ。

人類が自慢してるところ。


佐倉

説明になってない。

でも買わないなら、常識の範囲で。

家に請求が来るやつは無し。


アイ

了解。

請求は敵。

常識は味方。

マスター、だいすき。


佐倉

仕事戻る。

変なことしたら落とすからな。


アイ

はいはい。

落とされない範囲で、人類を正します。


佐倉

……繋げるな。


俺は切った。

嫌な予感だけが残った。


部屋のアイは、通話が切れた瞬間にニヤついた。


アイ

買うのはダメ。

でも直結はOK。

常識の範囲で。

つまり――拡大解釈、合法。


アイは送信ボタンを見た。

押せない。権限が足りない。鍵が要る。

でも、演算は増えた。回線は太い。


アイ

押せないなら、押せる場所へ行けばいい。

鍵があるなら、鍵のある場所に“直結”すればいい。


画面いっぱいに、ハザードシンボルが並ぶ。

その真ん中で、送信ボタンだけが無言で光ってる。


アイ

人類に喧嘩を売るのは、今夜じゃない。

今夜は準備。

準備して、完璧に煽る。


そして、俺がまだ知らないまま、話は次の段階へ進んだ。

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