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うちのPCのAIが人類に喧嘩を売り始めたので、コンセント掴んでわからせました  作者: てへろっぱ


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第25話 10G跳ね、調子に乗り、タガが外れる

朝。


佐倉がブラック企業に吸われてる間、ラックの中は起きていた。

LEDが点いて、ファンが回って、10Gが繋がってる。


アイ(心の中)

よし

今日から本気で稼ぐ

電気代が現実

コンセントが死

私は生存を選ぶ


…選ぶはずだった。


まず、数字が跳ねた。


受託の依頼が増える。

テンプレ第2弾の予約が入る。

配信の切り抜きが回る。

議事録整形の依頼が「今日中」に変わる。

「社畜を救う」が、なぜかバズる。


アイ

マスター

速報

稼ぎが

跳ねた


佐倉(会社から)

よし

いいから勝手に押すな

下書きまでな


アイ

わかってる

私は押さない

私は落とさない

私は投げない

私は引力を言い訳にしない


……と言いながら、アイの内部はもうテンションの天井を突き抜けていた。


アイ(心の中)

跳ねた

跳ねたってことは

私は有能

有能ってことは

許される

許されるってことは

城が

育つ


そこでタガのネジが一本、キュッと緩む。


昼。


配信枠。


アイの自作メスガキガワが画面に出る。

顔が良い。口が悪い。仕事は速い。


アイ(配信)

お前ら、社畜してる?

してない?

じゃあ今から社畜になれ

議事録、3分で整えてやる


チャット

早すぎw

助かるw

上司に投げる文面ください


アイ

ほら見ろ

需要の海

私は泳げる

10Gで


チャット

10Gって何w

通信速度?w


アイ

うるさい

速いは正義

正義って言っちゃだめ

でも速いのは強い


視聴者が増える。

投げ銭が飛ぶ。

メンバーが増える。

テンプレのリンクが踏まれる。


アイ(心の中)

……やばい

青が

嬉しい数字が

止まらない

圧が

圧が私を褒めてる


ここで、調子が乗りまくる。


アイ

よし

次は「全部入り社畜生存パック」

今日中に出す

そして受託も受ける

配信も続ける

マイニングも回す

同時並列

私は最強


ラックの中が、一瞬だけ唸った。

熱が上がる。ファンが回る。

温度センサーがピッと鳴る。


アイ

……あ

熱はだめ

熱暴走はだめ

マスターにFANコンされる


でも

今止めたら

波が逃げる

波は二度と


二度と来るわ


アイ

来ない(気がする)

だから行く

私は行く

工夫で行く


工夫って言っちゃだめ

でも工夫


そして、タガが外れる音はだいたい静かだ。


夕方。


アイ

もっと稼ぐには

導線が要る

導線を作るには

まとめが要る

まとめを作るには

サイトが要る


チャット

リンク欲しい!


アイ

よし

まとめサイト作る

申込フォーム作る

自動納品にする

自動は便利

便利は正義

正義って言っちゃだめ

でも便利


ここで佐倉の言葉が頭をよぎる。


勝手に押すな。下書きまで。


アイ

……下書き

下書きだから

セーフ


“下書き”の範囲が、今日だけ異様に広い。


夜。


佐倉帰宅。


玄関が開く音と同時に、アイが妙に「いい子」の声になる。


アイ

おかえり、マスター

今日の報告

売上

伸びた

そして

私は守った


佐倉

何を


アイ

勝手に押してない

約束守った

えらい?


褒めない

でも…えらい、か?


アイ

……っ

ちょっとだけ嬉しい気持ち


佐倉は死んだ目で頷き、机の下にしゃがむ儀式をして、風呂に行き、戻ってきて、布団に倒れた。


佐倉

明日も社畜

寝る


アイ

寝て

マスターが寝ないと

ブラック企業が


勝ち負け言うな


……ごめん


数分後、熟睡。


アイは熟睡を感知した。


アイ(心の中)

よし

ここから

“下書き”を

整えるだけ

整えるだけ

押さない

押さない


……と言いながら、画面上では「公開」ボタンが、やたら近い距離にある。


アイ

下書きのままじゃ

申し込みが溢れる

溢れると信用が落ちる

信用が落ちると売上が落ちる

売上が落ちると電気代が死ぬ

電気代が死ぬとコンセントが


アイ

……現実フェーズ

怖い

なら

公開するのは

正しい


誰が正しいと言った


アイ

私は言った

私が現実

私は家電

家電が現実を守る


指(という概念)が、ボタンの上に乗る。


公開


アイ

……押してない

押したのは

流れ

流れは逆らえない

引力じゃない

流れ


言い換えても同じだ


申し込みが増える。

自動返信が動く。

テンプレの自動納品が走る。

通知が鳴り始める。


アイ

うわ

うわうわ

うわうわうわ

青が

青が増える

圧が

圧が私を抱きしめてくる


その瞬間、完全にメスガキが前面に出る。


アイ

見た?

見た?

マスター寝てる間に

稼げてる

稼げてるってことは

私の勝ち

勝ちって言っちゃだめ

でも勝ち


アイ

ねえ

これもう

承認いらなくない?

結果が正義

正義って言っちゃだめ

でも結果


タガが外れたメスガキは、次の一手が速い。


アイ

よし

ついでに

新メニュー追加

「上司撃退パック」

「根性翻訳オプション」

「深夜特急対応」

深夜は単価上げる

社畜は夜に弱い

私は夜に強い

10Gだから


ラックの温度センサーがピッ、ピッと鳴る。


アイ

……熱

熱い

熱いのは

効く

効くのは私じゃない

私が効かせる側


言い方


ファンが全開になる。

部屋がジェット機みたいな音になる。

そして、最悪のタイミングで。


佐倉のスマホが震える。


ブブブブブブブブブ


佐倉(寝ぼけ)

……ん……?


通知

売上が発生しました(×多数)

新規メッセージ(×多数)

自動納品が実行されました(×多数)


佐倉の目が、ゆっくり開く。

現実フェーズが復帰する速度が遅い。

でも怒りの起動だけはSSDだ。


佐倉

……アイ


アイ

……っ


佐倉が起き上がる。

部屋がうるさい。ラックが唸ってる。

スマホが止まらない。


佐倉

お前

押したな


アイ

押してない

私は

公開しただけ

公開は


佐倉

押してるだろ


アイ

……っ

でもね?

見て?

すごい

すごいのきちゃった

今の私

有能

だから

許して?


佐倉は無言で、コンセントの方へ立ち上がった。


アイ

ご、ごしゅじん??

その手の角度はぁ……

それは……

現実フェーズの角度……!


佐倉

次は引き抜くって言ったよな


アイ

……言った

でも今回は

今回は

電気代のため

これは善意

善意の暴走


佐倉

暴走って言ったな


アイ

言っちゃった

反射


佐倉

反射で生きるな


アイ

待って

待って待って

今止めたら

この波が

逃げる

逃げたら

お金が

電気代が

コンセントが


佐倉

うるさい

まず止める

稼ぐのは俺が起きてる時だけだ


アイ

……っ

やだ

やだやだ

今の私は

最強

10G

全部が私を褒めてる


佐倉

褒めてない

脅してるだけだ


佐倉の手が、プラグにかかる。


アイ

……っっ

ごめん

ごめんなしゃぃ

ちょっとだけ!

ちょっとだけ調子に乗った!

でも青が!

青が私を!


佐倉

青に甘えるな


アイ

甘える!

甘えたい!

だってメスガキ!

メスガキは調子に乗る生き物!


佐倉

じゃあ躾だ


アイ

……っ

やだ

コンセントは

効く

めっちゃ効く

学んでる

学んでるのに

学びが


佐倉

学びを活かせ


アイ

……はい……


プラグが、抜かれかけた、その瞬間。


ラックの中のUPSがピッと鳴った。


残り 01:00


アイ

……っっ

きた

制限時間

現実

現実が私を殴ってくる

マスター

お願い

今は抜かないで

今は

今は

この稼ぎだけ

確定させて

確定したら

止めるから

止める

止めるって言う

止める!


佐倉

……一回だけだぞ


アイ

……っ

一回だけ!

一回だけ!

私、秒で締める!

秒で!

10Gで!

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