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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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レイナの願い

「ノートン君、このパイすごくおいしい!」

 レイナはテーブルで夜食用に買っていた肉のパイを食べながら、感想を述べる。その幸せそうな表情は、お世辞ではないことを証明していた。さすがはララさんの料理だった。

「これも食べてみてくれ」

 肉のパイだけでは栄養が偏るので、小皿にもったザワークラウトと味噌のスープを持ってくる。ザワークラフトは、以前ララさんが大量に作ったものをおすそわけしてくれたものだ。

「酸っぱいけど美味し~」

 とても王族の口に合うとは思えない質素なものだったが、レイナはおいしそうに食べた。

「これは豆のスープなの? 初めて食べたけど、これ好きかも、チーズみたいな匂いがするし」

 具材に刻んだ干したイモしか入っていない粗末な味噌スープも、おいしそうに食べる。食べ慣れない東洋の発酵食品はキツイかと思ったが、嘘をついているようには思えない。

「何でも食べられるんだな」

「そりゃそうだよ、王族だもん、何でもおいしく食べないと。食べ残しなんかしたら、お祖母様にすごく怒られるんだよ」

「そうなのか?」

「民からの貢物を嫌うなんてできないでしょ? だから王族は何でも食べられるように教育されるんだ」

「なるほど」

 確かに貴族の子女はしつけに厳しい事が多い。王族となればなおのことだろう。

「でもこのご飯が美味しいのは本当だよ~」

 レイナの嬉しそうな表情からして、それは嘘ではないようだ。

「王族の姫は、もっと豪勢なものを食べていると思っていた」

「偉い人との会食がほとんどだもの。味わっている余裕なんかないよ」

 王族の姫とはいえ、思ったより大変そうだ。

 背筋をピンと立てながら、ゆっくりと食べている仕草こそ優雅な貴族の令嬢のそれだったが、中身は俺が知る頃のレイナのままらしい。宮中の礼儀作法はさぞ窮屈だったろう。

「あ~、美味しかった。ご馳走さまでした、感謝いたします」

 最後だけ妙に礼儀正しく頭を下げ、レイナは食事を終える。王族の彼女に出すにはあまりに粗末な食事だった。せめてデザートくらい出してあげたかったが、彼女は満足したらしい。

 俺はデザート代わりの葡萄ジュースをカップに注ぐと、レイナの正面の椅子に腰かける。

「なあ、レイナ。なぜ怪盗なんかをしているんだ?」

 怪盗エルフの正体は、レイネシア姫。なぜ一国の王女が、盗みを働いているのだろう。

「手に入れる必要があるものがあるから」

 俺の質問に、レイナはまっすぐな口調で答えた。さっきまでのフランクな口調とは異なる、瞳に強い決意を秘めた毅然としたものだった。

 威厳すら感じるその態度に、俺は再び驚き言葉に詰まる。命の危険まで冒して、姫である彼女が、何を手に入れる必要があるのだろう? 想像すらつかなかった。

「ねえ、わたしも聞いていいかな?」

 今度はレイナが質問してきた。

「あの男から、どうやって逃げたの? 今思い返すと、とんでもない幸運の連続だったと思うんだけど?」

 そんなことを気にしていたのか、と思ったが、こちらを見つめるレイナの表情は思いのほか深刻なものだった。俺は懐から使用した魔法具を取り出して正直に答える。

「まず最初に使ったのがこれだ。この〝蚊取り閃光〟は、光を発し蚊を追い払う効果がある」

「うん、すごい光だった。あの光を浴びると、蚊が逃げちゃうの?」

「いや、この蚊取り閃光は贋作なので、むしろ蚊が寄ってくる」

 まさかの残念な効果に、レイナも表情を崩して「え~」と嫌そうな顔をしている。

「そしてこのイエローストーンで、男に直接電流を叩き込んだ」

 イエローストーンは電撃を操ることができる魔法具だ。操るとはいっても電撃を放出する場合は、イエローストーンに込められた呪いの影響で狙いが定まらないことが多いので、直接相手に触れて使うことにしていた。

「続いて電撃でひるんだアイツのポケットの中に、〝不幸のお守り〟を紛れ込ませたんだ」

「不幸のお守り!?」

 予想外の魔法具に、レイナが変な声を出す。

「じゃあ、わたしたちにラッキーが続いたのは?」

「俺たちが幸運だったんじゃない。魔法具の呪いの効果で、アイツが不運だっただけだ」

「クスクス、すごい~、変なの~」

 レイナは嬉しそうに笑いだした。

「すごいねノートン君。マイナスの効果のある呪いを、そんな風に使っちゃうなんて」

「大したことはない。呪いだって、上手く使えば幸福になれるというのが、ウチのモットーだ」

「……なるほど、そういう考え方も、あるんだね」

 冗談半分で言った俺の言葉を、神妙な表情でうなずくレイナ。

「でもよかった、ノートン君は、元気そうで……」

 小さく微笑みながら、しばらく何かを考えているかのように俺のことをじっと見つめた。

 その美しい瞳に見つめられると、俺も言葉を忘れたように彼女の瞳に釘付けになる。

「──ノートン君、お願いがあるの。わたしの盗みを、手伝って欲しいの」

 意を決したように、とんでもない願いことをしてきた。

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