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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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決戦(下)

 俺は猫人の脚力を全開に発揮し、高く跳躍。上空から奴を視認すると、その周囲にサラマンダーの火酒の残る五瓶全てを投げつけた。


「イエローストーン、頼む!」


『おまかせあれ!』


 俺は放電状態にしたイエローストーンを、火酒の中に投げ込んだ。


 電撃により着火する火酒、奴の周囲はみるみるうちに巨大な炎で包まれる。


 俺は壁を蹴って素早く地面に着地すると、姿勢を低くし目を凝らして周囲を観察する。炎により重度の視界不良。奴に俺の姿が見えていないのは、次なる一撃が放たれてこないことから間違いない。しかし、こちらは奴の居場所がハッキリと把握できた。


 やはり風の自律防御が災いして、奴の周囲だけ炎が舞っていない。


 俺はジャケットから水が入ったボトルを取り出すと、自分の体にふりかける。同時に水銀で傀儡を作ると、奴めがけて炎の中に突っ込ませた。その影に続く形で、俺自身も炎の中に飛び込む。同時に右手でレイピアを抜く。もはや頼むべき魔法具はない。イエローストーンを手放した以上、何の魔法効果もないこのレイピアだけが頼みだった。


 先鋒の水銀の獅子が、炎を突破して奴に再び牙をむく。


「同じ手を、見え見えだ!」


 奴は聖剣グラムと構え直すと、水銀の獅子をその背後の猫人の影ごと薙ぎ払った。空間ごと断ち切る聖剣の前では、いかなる防御も無意味だ。瞬く間に断ち切られる獅子と猫人の影。


「きゃああああああああああっ!」


 宙を舞う猫人の首の影をみたレイナの切り裂くような悲鳴が、大聖堂中に響く。

 だが彼女の声が聞こえるということは、〝俺自身〟は健在であるという証明だった。


「──あの影も、傀儡か!!」


 炎から現れた俺の姿に、驚愕する奴の顔がハッキリと見えた。傀儡は二つ、あの猫人の影もまた、水銀で作った偽物だった。


 狙うは奴の胸に光る大幸運の護符、この距離では風の加護もなく、聖剣も間に合わない。


 ──獲った──


 必勝を確約されたレイピアの一撃が、奴の胸を穿ち──


「──こいつを焼け、イエローストーン」


 刹那、雷に打たれたような強い衝撃を受け、俺はそのまま地面に倒れこんだ。


 なんだと!?  


 これは電撃、それも間違いなくイエローストーンから発せられたもの。事実、奴の掌に輝く黄色い宝石は、確かにイエローストーンだった。だが本物は、俺が地面に投げつけたはずだ。


「電撃を操る雷黄石イエローストーン、かつて〝あの女〟が盗んだという秘宝。お前が持ってきてくれるのを期待していたよ。もっとも、これは俺が〝作り出した〟偽物だがな」


 魔法具の効果ごとコピーする〝複製魔法〟、そういうことか。


 奴の掌に握られている記憶結晶を見た俺は、全てを理解した。


 〝複製魔法コピー〟、それが俺ことレオニード王太子が、かつて持っていた賦与魔法の正体だったのか。


「素晴らしい魔法だろう? これがお前に与えられた賦与魔法だ。だが天にとどくという期待を受けて生まれたお前は、この能力が明らかとなった時、ひどく絶望していたよ。求めていた能力ではないとね。部下である俺の賦与魔法がお前の劣化版の贋作フェイクであったことすら忘れてな!」


 奴は歯を強く噛みしめ俺を睨めつけると、初めて自身の内心を吐露した。


「──俺の人生で、〝貴族様〟とやらに敬愛の念を抱いたのは、お前だけだった。友情すら感じ、本気で我が正体さえ明かそうかと考えたこともある。だがあの時、何かが音を立てて崩壊するのを感じた。そして気づいた、お前こそが、俺が真に憎むべき存在であるとな!」


 歪んだ表情を浮かべながら、奴は本物のメモリーガンを懐から取り出すと、電撃の衝撃で地に伏せたままの俺に銃口を向けた。


「安心しろ、再び記憶を奪って追放するだけだ。お前が死ねば、賦与魔法も消える。消すには惜しい能力なのでね。何度でも挑んでくるがいい。そのつど、お前から全てを奪ってやるさ」


 俺は、また負けるのか。再び全てを奪われ、記憶すら失って追放されるのか……


 引き金を引く指を見据えながら、最後にレイナの笑顔が俺の脳裏をよぎる。


 直後、俺と奴の両者を、予期せぬ衝撃が襲った。


「チェストオオオオオオオ!!」


 ウェディングドレスのロングスカートから放たれたレイナの蹴りが奴の掌にクリーンヒットし、メモリーガンを吹き飛ばした。


 レイナ!? どういうわけだ?


 目の前にいるレイナの姿に、俺は驚愕に目を見開く。ギアスの拘束により、彼女は俺たちに干渉できないはずだ。それは奴も同じだったらしく、完全なる奇襲となっていた。


「ローラント早乙女流、剛の型、地追衝!」


 俺たちの驚愕をよそに、ウエディングドレスを翻しながらレイナがすさまじい拳を、奴の腹に向けて放つ。至近距離で放たれた恐ろしく速い渾身の一撃。如何なる達人でさえ、この強打は防げまい。


「この女を焼け! イエローストーン!」


「きゃああ!」


 だが回避不能の必殺の一撃でさえも、電撃魔法の前に敗れ去った。感電によって拳の勢いは殺され、レイナは奴の胸に倒れこむ。


「今のは驚いたぞ女。どうやって俺たちの間に割って入った?」


 レイナの長い髪をつかんで顔をのぞきこみながら、奴はレイナに問う。


「……呪いだって、上手く使えば幸福になれるというのが、ウチのモットーなの」


 彼女の言葉の意味が理解できない奴は、眉を寄せて怪訝な表情を深める。


「忠誠のギアスを呪いで劣化させたり、幸運の効果を不幸に変えたりね」


 レイナの視線の先にあるもの。それに気づき、俺と奴の両方が驚愕に目を見開く。奴の胸の勲章に押し付けられているのは見覚えのある記憶結晶だったからだ。


 あれは、サーシャの劣化の記憶結晶。大幸運の護符を、大凶運の護符に劣化させたのか!


「撃って! ノートン君!!」


 レイナの叫び声に呼応して、俺はメモリーガンを懐から取り出すと、幸運の守りを破壊されたショックで硬直したままの奴に狙いを定める。


 焦りもない、怯えもない。ただ奴を撃ち抜く一念で、引き金を引く。


 刹那、風の加護を失った奴の顔面を、空気の弾丸が貫いた。

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