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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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死闘?

「スライムベッド・シングル!」


 俺はジャケットからスライムベッドを召喚して、俺とレイナの前に展開させ盾とする。メモリーガンから放たれた弾が、スライムベッドの中にめり込んで勢いを止めた。


「蚊取り閃光!」


 同時に、俺は蚊取り閃光に火をつけ、ヴィラの前に投げつける。


「くっ!」


  真夏の太陽のようなすさまじい閃光が、ヴィラの視界を襲う。


「ローラント早乙女流、剛の型・地燕拳!」


 レイナは閃光の中、一気に間合いを詰めヴィラの懐に入り込んでいた。俺とレイナによる、完璧に息の合ったコンビネーション技。レイナの華奢な身体からは想像もできない強烈な一撃が、ヴィラを襲う。


「えっ!」


 だが驚きに目を見開いたのは、レイナの方だった。

 ヴィラの銀色のドレスが大きな盾のようなものに形を変え、レイナの一撃を防いだ。自律防御の魔法ではない。視界を奪われたヴィラは何らかの魔法具で巨大な障壁を作ったのだ。


「あれは、水銀か!?」


 俺はようやくヴィラの魔法具の正体を看破する。


 変幻自在に形を変えるあの物体の正体は水銀だ。金属でありながら液体の性質を持つ水銀は、魔法の基礎にして、魔術師なら誰もが一度は扱う物質だった。


「〝麗血の水銀ブラッディ・マーキュリー〟」


 自身の魔法具を誇示するヴィラ。強力な魔力で自在の武器に変えた水銀が彼女の獲物だった。


「くっ!」


 事実、初撃に失敗したレイナは襲い来る無数の巨大な水銀の針に追われ、激しいバク転を繰り返しながら俺のそばへと戻ってくる。


「スライムベッド・キング!」


 俺は後退してきたレイナをかばうように、スライムベッドをめいいっぱい展開させ、二人をかばう盾とする。厚さも大きさも、最大のもの、これでしばらくは防げるはず──


「なんだと!」


 だがヴィラの魔法の神秘に、俺は驚愕した。先端がナイフのような形に変化した水銀は、まるでゼリーを斬るがごとく、スライムのベッドを切り裂いたからだ。


「終わりよ」


 障壁がなくなるのを待っていたかのように、ヴィラの両手から放たれた水銀は巨大な腕の形となり、俺の体をわし掴みにした。


「ノートン君!」


 圧倒的な魔力量にモノを言わせた強さ。さすがは天にとどくとうたわれた魔女の力だった。


「ふふふ、捕まえたわ」


「……捕まえたのは、俺の方だ」


 だがアイテム使いとしてのだまし合いは、こちらの方が上だ。水銀の巨大な拳の中に捕らわれながらも、俺は不敵な笑みを見せた。


『はぁ~い♡』


 俺の手のひらに握られていた黄色い宝石の、脳天気な声が響く。


 その輝きに気づいたヴィラの瞳に、戦慄の色が走った。


「まさか、〝雷黄石〟(イエロー・ストーン)!?」


『いえ~す! 正解者には、雷撃のプレゼントをさしあげます』


 イエローストーンが光ると同時に、水銀の先にいたヴィラを電撃が襲う。


「──くっ」


 だが彼女とてただの魔術師ではない。ヴィラは水銀の腕を崩して俺との接続を解除し、感電の被害を最小限にとどめる。


「獲った! チェストー!」


 だが態勢を立て直す間など与えない。再びヴィラの懐に入り込んでいたレイナ。今度こそは逃れられない拳の一撃が放たれる。水銀の魔力を解いた今は、防ぐ術などないはずだ。


「〝優雅さこそ、校則なり(エレガンス・イズ・ザ・ルール)〟」


「えっ!」


 だがヴィラが唱えた呪文に反応し、学園校舎の床と壁が隆起し、レイナの身体を拘束する。


「校則を司る戦域魔法か!」


 俺が気づいた時には既に自分の脚も拘束され、動くことができなくなっていた。


「ふう、危なかったわ、念のため、持っておいて正解だったわね」


 髪を手でかき分けながら、勝利の息をつくヴィラ。彼女の手元には、エレガンストーンが握られている。そうか、校長が持っていたあの石は、今彼女が持っているのか。


「予想外に手ごわかったけど、残念だったわね」


 そう言うと、ヴィラは拘束されたままのレイナの姿を、うっとりとした表情で覗き込む。


「まずはそのドレス、私がもらい受けるわ」


「やめろ。無理に脱がせば、塩の柱になるぞ」


「貞操保護の呪いね。問題ないわ、同じ女性ですもの」


 ヴィラが指を弾くとともに、レイナの身体を包んでいたイマジンドレスが粒子となり、レイナはスリップを着た肌着姿となる。


「やはりレイナを呼んだのは、そのドレスが目的か」


「ええ、自在に姿を変えるこのドレスこそ、美の魔女が持つにふさわしいもの」


 ヴィラは静かに目を閉じて瞑想する。すると粒子となったイマジンドレスが彼女の身体を覆い、美しいエメラルドに輝くドレスに変化する。そのデザインも次々に変化する色合いも、現実には存在しえないもの。それはまさにヴィラの理想とする美の頂点のドレスだった。


 世界さえも彼女を祝福し、真夜中だというのに彼女の周囲だけ光り輝いているかのよう。


「ああ、なんて素敵なドレス。初めて見た時から、欲しかったの」


 感極まる声で、ヴィラは自身のドレスをうっとりと見つめた。


『──ホンマかねーちゃん? ガハハ、照れるな! そんなに褒めるなや』


 突然ドレスからした下卑た声に、ヴィラの顔色が変わる。


「な、何なのこの下品な声!」


『ねーちゃん貧乏は好きかい? 大丈夫、嫌いでもすぐに慣れるさ、がはは』


 イマジンドレスはマイペースに下卑た言葉を続けた。ヴィラは慌ててエレガンスカウターを右目にはめ、エレガンス度を測る。


「エレガンス度、測定値マイナス50、60、70、まだ下がるの!?」


『つーかあの猫人の兄さんがさ、「学園でレイナ嬢ちゃんが身につけている間は喋るな」ってさ、酷くない!? アイツ〝お供アニマル〟のくせにさ、がはは!』


「そんな、エレガンストーンでも中和できない! なんて下品な呪い……きゃっ」


 ついに測定不能になったエレガンスカウターが爆発してしまった。当然、俺とレイナの拘束は解けていた。エレガンス度マイナスのヴィラに、校則魔法を使う権限などないからだ。


「チャンスだ!」


 隙を見た俺はヴィラへと疾駆し、ヴィラが手に持っていたエレガンストーンを強引に奪い取ると、レイナに放り投げた。


「レイナ!」


「うん。〝優雅さこそ、校則なり(エレガンス・イズ・ザ・ルール)〟、ヴィラを拘束せよ」


 エレガンストーンを受け取ったレイナが、それを右手に高々と掲げ、校則魔法を発動する。下着がギリ

ギリみえないスリップ姿というラフすぎる姿であっても、レイナのエレガンスさは少しも欠けることはなかった。


「きゃあああ」


 攻守は逆転した。今度は校則魔法がヴィラを襲った。隆起した床と壁によって、ヴィラの体は拘束される。ついに勝負は決した。

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