ポロン先生からの呼び出し
翌日、俺は店を開けた。一日ぶりということもあって客が多く、気が付いたら夕暮れになっていた。怪盗エロス事件が終息したため俺は正式に解雇され、女子校であるマホジョへは立ち入り禁止を言い渡されていた。
「さすがに、急にクビにして、以後立ち入り禁止は酷いと思うの」
隣のレイナが珍しく少し怒っていた。彼女はウェイトレス風のエプロンドレス姿で助手をしてくれていた。もちろんあのエプロンドレスも、イマジンドレスが変化したものだったが。
レイナはまだ体験学生としての地位を有していたが、ポロン先生の俺への態度の急変に不満を持ち、今日の登校を拒否していたのだ。俺のために怒ってくれていることが、少しうれしかった。
「ノートン先生、レイナ、こんにちは」
ふと気が付くとカレンが店に来ていた。学生服を着ていることからして、学校帰りに寄ってくれたようだ。
「もう先生じゃないさ」
「え~、いいじゃん。センセ! レイナも、学校来なかったから心配してたんだよ」
「うん。ちょっとね」
「あと、レイナには制服について聞きたいことがあるから、イマジンドレスを着て学校に来てほしいってポロン先生が言っていたよ」
「俺も行っていいのか?」
「男性のノートン先生はダメだって。レイナ一人で来てってさ」
「う~ん、どういうことだろう、ノートン君」
ポロン先生には、まだレイナに用があるということか。
「カレン、今さらだが、あの美灰のコンパクトの出どころは、何かわかったことはないか?」
「ええとね、どうもポロン先生からもらったものらしいよ。ウチのクラスに代々伝わっているものだってさ」
「そうか、これで決定的だな」
俺は思わず長い溜息をつく。
「カレン、ありがとう。今度お礼をする。さて店じまいの時間だ。レイナ、手伝ってくれ」
「……うん、わかった」
「どういうことかな、ノートン君。そろそろ教えてほしいな」
店を閉めカレンが帰ったのを確認してから、レイナは問いかけてきた。俺が真相に到達しつつあることを察したのだろう。
「やっぱり、怪盗エロスは校長じゃなかったってことだよね?」
「ああ、学校に真犯人がいる。これが、何よりの証拠だ」
俺は報酬としてもらったメモリーガンをレイナに見せる。
「これはフェイクミラーで作ったフェイク品だ。こんなもので誤魔化そうなど、さすがにアイテム商をなめすぎだ」
「つまり、本物を持っている人物が、真犯人ってことね」
校長はブルマを餌に真犯人に偽物をつかまされ、犯人に仕立て上げられたのだろう。
「それで、真犯人は誰なの?」
「ポロン先生だ」
「……うん」
俺の言葉をレイナは察していたのか、素直にうなずく。
「だとしたら、どうしてわたしに学校に来るように言ったんだろう? それも、わざわざイマジンドレスを着て?」
「それは行けばわかるさ」
「そうだけど、さすがにわたし一人でいくのは危険な気がするかな。ノートン君は入れないし」
「俺たちは怪盗だからな、不法侵入するに決まっている」
俺の答えに、レイナもニヤリと口元に笑みを浮かべた。
「そうだね。怪盗エルフと怪盗キャットの出番だね。でも、何を盗むの?」
「そりゃ真実だ。ついでに、本物のメモリーガンと、盗まれた記憶を確保する」
「賦与魔法も確保できるかもだしね」
レイナは嬉しそうに微笑む。
そんな事を話していると、ドアがノックされる音が聞こえた。ドアを開けるとカレンが立っていた。家に帰る途中で戻っていたようだ。
「どうしたんだ、カレン」
「聞き忘れてたんだけど、サーシャが学校休んでたんだけど、大丈夫かな?」
「何だと!?」
カレンの言葉に、俺は思わず声を荒らげた。
「それは本当か?」
「う、うん。今日はお休みだったよ。てっきり、メイドのお仕事だと思っていたけど」
「屋敷のメイドは交代制で、今日は休みのはずだ。つまりサーシャは帰っていない!」
「ノートン君!」
レイナが悲痛な声で叫ぶ。
「ああ、急いだほうがいいな」
「あ、あたしも何か協力できることあるかな?」
俺たちの尋常ならざる様子を見たカレンが、手助けを申し出てくれた。
「では、カレンには頼みたいことがある」
俺はカレンに耳うちをすると、大急ぎで侵入の準備に取りかかった。




