使い魔
なんで俺がブルマのために戦わなきゃいけないんだ? とはいえA組B組共に消耗し、ディフェンスしか残っていない。つまりこのままだと引き分けで、A組のブルマはそのままだ。
「ノートン君、一緒に敵陣に乗り込むよ」
レイナが差し出した手をつかむ。こうなった以上、やるしかない。
彼女が「えいっ」と地面を蹴ると同時に、俺たちは大きく跳躍してB組の陣地へと向かう。
「すごい! ホウキもなしで!?」
浮気者のニーソックスによる重力操作魔法で、体重を軽くしたうえでの大ジャンプなのだが、それを知らぬ生徒たちはただただ驚いている。
「みんな防いで!」
「あんな恥ずかしい体操着は嫌!」
敵陣地に着地すると、B組の生徒たちが襲い掛かってきた。
「ノートン君はあの使い魔をお願い!」
「わかった」
使い魔は使い魔どうしで争うことを要請され、俺はしぶしぶ植物型の魔獣へと向かう。
俺はこいつと同列なのか。
叫びながらウネウネと動く巨大な食虫植物を前に、複雑な気分となり少し考えてしまう。
サラマンダーの火酒で焼き払うのが手っ取り早いが、B組の生徒の持ち物だ。枯らすのはまずい。どうすべきか。
俺は考えた末、スライム酒を植物型魔獣にふりかけた。
『しゃあああああ~!』
スライム酒を浴びた植物型魔獣は、奇妙な声をあげながらぐにゃりとその場に倒れこむ。これでしばらくは動けないはずだ。
「きゃー、ウチのチーちゃんがシナシナに!!」
持ち主と思しきB組の生徒が悲鳴をあげる。やはり焼かなくて正解だった。オフェンスはレイナに任せ、このまま時間稼ぎに徹するとしよう。
隣からは「えいっ」というレイナの威勢の良い声が聞こえる。距離を詰めての白兵戦は、彼女の独壇場だった。B組の生徒たちを次々と投げ飛ばして、退場させていく。接近戦の覚えがないB組の生徒たちは対抗する術がまるでなく、一方的にレイナにやられていく。
「チェストー!」
ついに最後の一人を場外送りにして、レイナは棒を勢いよく倒す。鮮やかな勝利だった。
「勝ったあああ!」
A組の生徒たちが飛び出してきて、レイナの周りにあつまって喜びを共有する。
「負けちゃった」
「ブルマは嫌……」
「お嫁にいけな~い!」
反対にショックを受け、意気消沈するB組の生徒たち。こっちはまるでお通夜状態だ。
「──皆さん静粛に、私からお話があります」
レイナを囲むA組の生徒たちに、ポロン先生が歩み寄ってきた。
「A組の体操着は担任である私の責任で変更します。その代わり、今回の試合の勝利報酬からは取り下げてください」
ポロン先生が言うには、A組のブルマは変更するけど、B組に押し付けるのはやめてほしいとのことだった。
「了解です」
「わかりました」
A組の生徒たちは快く返事した。これにはB組の生徒も嬉しそうに、目を輝かしている。
「皆さんがそんなブルマーが嫌だったことに気づかずに、ごめんなさい」
ポロン先生はA組の生徒たちに頭を下げた。
「でも信じてください。先生の子供のころは、ブルマーは女子が憧れる、かっこいい体操着だったんです。決して、皆さんに意地悪していたわけではないんです」
よほど思い詰めていたのだろう。ポロン先生は心底申し訳なさそうな顔をしている。
「了解で~す」
「先生大好き!」
その心情を察したのか、A組の生徒たちは明るくポロン先生の謝罪を受け入れた。その反応に、ポロン先生の表情は光が差したように明るいものとなった。
「次はスパッツがいいかな」
「え~、普通ショートパンツでしょ」
「じゃ、ジャージ……」
早くも次の体操着が何がいいか、話し合いをし始めた。
「じゃあどんな体操着がいいか、わたしがモデルをしてあげるね」
そういうと、レイナはイマジンドレスを変化させ、ブルマからショートパンツ、更にスパッツタイプに変身させみせた。やはりあのブルマも、イマジンドレスが変化した姿だったか。
「すごい、イメージで服装が変化する魔法具だ!」
生徒たちは歓声をあげる。特にポロン先生は食い入るような視線で、レイナの姿を見入っていた。一瞬だが、その瞳には異様な光が宿っていたように俺には感じられた。




