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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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理想の朝

 翌日の早朝、俺は今まで経験したことがないほど心地よい気持ちで、自室のベッドで目が覚めた。窓際から差し込む温かい日差しの中で、漂う香ばしい匂いが鼻孔を刺激している。


(これは、コーヒーの匂いか?)


 そうだ。今日からはレイナがいるんだ。昨日は同じ屋根の下で眠るということで、俺は気持ちが変に高ぶって寝付けなかったのだが、それと反するほど寝覚めはよかった。


 今日からは一人じゃない。朝食は食べない主義だったが、レイナのために準備しなくてはいけないからだ。俺はベッドから跳び起きると、リビングへと向かう。


「あ、おはようノートン君」


 リビングでレイナは笑顔で挨拶してくれた。テーブルの上には、簡単な軽食とパンが用意されている。だが俺が驚いたのは、彼女の姿だった。


「なんで、メイド服なんだ?」


 彼女が着ていたのは、フリルのついたエプロンドレスに、カチューシャといったものだった。それも古風なロングメイド服ではなく、袖とスカートの丈をカットした可愛らしいデザインのメイド服だった。その下にはいつもの浮気者のニーソックスを合わせている。


「えへへ、可愛いでしょ?」


 レイナはスカートの両端をつまみ、貴族の女子風の挨拶をしてくる。ただでさえ短くめにカットされたスカートから、健康的で美しい太ももがチラっと見える。


 あまりの魅力に、朝から頭が少しクラクラしてしまう。


『がはは、オイラに萌えるな、やけどするぜ』


 メイド服からする下卑た声に、ハッとする。このメイド服もイマジンドレスの変形したものか。こんなものに萌えてはいけない。


「お台所かりてたよ、朝ごはん食べよう」


「あ、ああ」


 と生返事をし、俺は言われるがまま椅子に座り朝食を口に運ぶ。


「うまい」


 ウチの食材で作った朝食のはずなのに、今までで食べた料理の中で、一番おいしく感じる。


「よかった~、イエローちゃんに台所の使い方を教わってたんだ。不思議な魔法の道具がたくさんあって、すんごく楽しかったよ」


 レイナはテーブルに置かれたイエローストーンを見ながら嬉しそうに笑う。


『姑として、何も言うことはありません。レイナさんはなんでもこなせるので、きっといいお嫁さんになりますよ』


「いつからお前は俺の母親になったんだよ」


「ふふっ、コーヒーもどうぞ、旦那様」


 イエローストーンと話している横から、レイナが嬉しそうにコーヒーを差し出す。その優雅な仕草は、古風で献身的な若奥様か、もしくは貴族に仕えるメイドそのものだった。


「そもそもレイナはお客様なんだから、給仕なんてしなくてもいいんだぞ」


「でもお世話になっている身だしね、それにノートン君はメイドさんが好きなんでしょ? あのサーシャってコに対しても、なんか優しかったし」


「そんなことはない。サーシャに対しては、いつもスパルタのはず(?)だ」


「え~、そうかな~」


「それにしてもメイド服が似合うというか、板についているな」


「うん。だってローラント王家の花嫁修業の必須科目だからね」


「そうなのか!?」


 王族の花嫁修業に、メイド講習があるだと?


「貴族の女子は大変なんだよ。お屋敷には可愛いメイドがたくさんいるかもしれないし、もし嫁ぎ先でメイドたちに負けるようなものなら、実家や祖国にだって迷惑をかけるし、何よりすごくかっこ悪いし」


 なるほど、貴族の令嬢といえど嫁ぎ先での戦いがあるのか。


「だから王室の花嫁修業では、もし未来の旦那様が重度のメイドフェチだったとしても対応できるように、メイド講習があるの」


「め、メイドフェチ……」


 あの護身術といい、王室の花嫁修業は、絶対に変な方向に向かっている気がする。


「ちなみにわたしはメイドとしては完璧、って評価だったよ。だからなんでもご奉仕できるよ、ご主人様♪」


 上目づかいに微笑むレイナの笑顔がまぶしくて、ついつい目をそらしてしまう。


『ご主人、顔が赤いですよ~』


「ソンナコトハナイ」


「本当かな~なんか片言だし」


「キワメテフツウダ」


 レイナはニヤニヤしながら、俺の顔を覗き込む。頬が近い。イエローストーンとの奇妙なコンビを解消させないと、とんでもないことになりそうだ。


「おはようございます、ノートンさん」


 ドアが開いて、サーシャが入ってくる。


「あっ、レイナちゃんそのメイド服かわいい!」


「えへへ、ありがとう」


「住み込みの助手にかわいいメイド服姿で給仕させるなんて、ノートンさんはやっぱり〝そういう人〟だったんですね」


「〝やっぱり〟ってなんだ」


 あと、〝そういう人〟ってどういう人だ。


 ますます困る。サーシャという応援を得て、事態は改善どころか悪化しそうでもあった。


「サーシャちゃんも、その制服かわいいね」


 レイナの指摘する通り、サーシャはマホジョの学生服を着ていた。紺の上着にスカートを合わせたマホジョの制服は、王都でも可愛いと評判だった。


「えへへ、マホジョの学生服は、私もお気に入りなんだ~。スカートの丈も自由だしね」


「あ、そうなんだ。わたしは、もうちょっと短いのがいいかな~」


「レイナちゃんはスタイルいいし、なんでも似合いそう、いいな~」


 レイナたちは嬉しそうにスカートをひらひらさせてはしゃいでいた。そういう女子トークは俺のいない場所でやってほしい。


「それよりもサーシャ、こんな朝に、どうしたんだ?」


「はい。早速ですけど、学校から正規の依頼書を貰ってきました」


 サーシャにしては仕事が早い。これで堂々とマホジョで記憶を盗む怪盗を探せる。


「可能なら、今朝お会いしたいと担当の先生がおっしゃっています」


「問題ない。朝食をすましたら行こう」


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