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沈黙の将軍と返り花  作者: 青嵐
第一章
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夢灯

「ギシッ…ギイ…ッ」

何者かが近づく気配で、ライはハッと目を覚ました。無意識のうちに、指が剣の柄を握っている。

静寂の暗闇の中 目を凝らした。薬草の束、整然と並ぶ薬壺、干した葉の香り…。

隣のベッドには、毒針に倒れた部下が寝ている。


(ああ…診療所か)


ろうそくの灯りが近づき、その中心に小さな影がぼんやりと揺れている。


(薬師か…容態を見に来たのか)


ミオは、静かに騎士の枕元に立っていた。


「うん…呼吸は大丈夫。汗も出てきてるから…もう少しね…」


確認するように呟きながら、額の汗を丁寧に拭ってやるミオ。


ライは声をかけず、その華奢な背中を黙って見つめていた。

そして、そっと目を閉じる。


数分後、小さな影は奥の部屋へと戻っていった。


ライは、天井を見つめたまま 不思議な一日を思い返していた。

──あの後、外で寝ようとした自分に、ミオは慌てて診療所のベッドをすすめた。


血と怒号と土ぼこり――

そんなものにまみれた自分が、この場所にはひどく不釣り合いな気がして、断ろうとした。


「あ、じゃあっ…!!夜中、何度か騎士様の容態を確認してくださいますか!?

もし変化があれば、すぐ教えていただけると助かりますのでっ!」


必死に引き止めようとする、アンバーの瞳――

そのまっすぐな眼差しに負けた自分に、ライは内心驚いていた。


──そして静寂の中で、ライはぽつりと呟いた。


「……何をやっているんだ、俺は」


その呟きは 薬草の香りの中へと、静かに溶けていった。


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