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沈黙の将軍と返り花  作者: 青嵐
第二章
28/45

双子の動揺

カタカタカタカタ…


クレアの昼食がトレーの上で小さく踊る。

否、踊らせているのはクレアの震える手だ。


自分の目の前に立つ、圧倒的威圧感を解き放つ、この男。


――ライ・オルグレン将軍――

が自分に話しかけている。


(何で…!何でこうなってるの!? 何したのミオっ!!)


***


今日も賑わう王宮内の食堂にて

クレアはぐるりと周囲を見渡した。


(ミオは今日も来ないのかな…)


いつもなら、薬師のローブをはためかせ、 ニコニコ笑いながら駆け寄ってくるのに。

あの軍事演習が終ってから1週間は経っただろうか… ミオは何かと理由をつけ 昼時の食堂には来なくなった。


クレアは、昼食が載ったトレーを持ち 適当な椅子に座ろうと辺りを見回す。その時


(――あ、来た。)


いつもながら、食堂の空気をザワリと変える集団。

そして、狼の群れを統率する、大きな男。


ライ・オルグレン将軍


(何なの…いつにもまして威圧感が凄まじいわね…)


その男が、何故かクレアに視線を飛ばし、自分の方へと、まっすぐに 歩いてくる。


(え…私?なんで…なんでこっち来るの!? こ、怖い怖いっ!!)


その足取りはクレアの前で、ピタリと止まった。

低く、厚みのある声がクレアの頭上に降り注いだ。


「……薬師は、来てないのか」


「は…はひっ…は、あの…」

「ここ最近…見てないが…」

「…し、ししし仕事が……忙しいと…」


トレーを持つ手が、カタカタと揺れる。


眉間にシワを寄せたまま、ライが小さく息を吐く


「…分かった」


とだけ言い放つと、サッと踵を返し、食堂を出ていってしまった。


(なんだったのぉ……?私、生きてる……?

ミオ、何やらかしたの〜。)


クレアはプハァと息を吐くと、ヘナヘナと空いてる椅子に座り込んだ。

しばらくボンヤリと、目の前の昼食を見つめる。

やがて、ゆっくり胸の動悸を抑えながら、昼食を口に運びはじめた。

クレアの頭の片隅に、ある一つの疑念が沸いてくる。


いや、前から薄々気がついてはいた…気づかないフリをしていただけだ。恐ろしすぎて…。


いつだったか、そうだ。街ではぐれた時。

ミオの側に将軍がいた。騎士服姿で。一瞬誰だかわからなかった。あまりにも、ミオを見る目が静かで、優しくて…。


今だって、自分に話し掛けながら――視線が何かを探し続けていた。


一番怪しかったのは…そう、ミオが軍事演習から帰ってきた、あの日。 シアンに肩をかつがれ、ボロボロの状態で帰って来た。

何事かと話を聞いたら、 崖から落ちたと言う。将軍に引っ張り上げてもらったのだと。

その話を、する時のミオの顔は――何故か真っ赤で。


(あああ、嘘でしょう…。)

パズルが、組み合わさってしまう。

クレアは眉間にシワを寄せながら、深いため息をついた。


その時、バタバタと鼻息も荒く、双子の弟のシアンが食堂に入って来て、自分の向かいに座った。


「聞いてよクレア!」

何やら真剣な面持ちで、クレアに顔を寄せる。

「何よ」

「僕、最近気になってることがあるんだ…。」


ギクリ。…薬草オタクでも気がついたか…。やるじゃないか弟よ。

シアンは何やら確信めいた表情で、丸眼鏡をクイッと上げ、話を続ける。


「最近さ…オルグレン将軍ってさ…」

「うん…」

ゴクリとクレアが喉を鳴らした…。


「――俺の事、興味あるのかなッ…!?」


「……はい?」


「いや、何かやたら視線感じるんだ!!さっき廊下ですれ違った時も、街で会った時も!!この前の軍事演習の時も…!!僕だけを!!この僕だけをじっと見つめてくるんだっ…!!」


(それは多分、アンタが邪魔で睨まれてるだけ…)


「やっぱり溢れ出るこの知性が、魅力してしまうのかなぁ…クレア…クレア!!…聞いてるっ!?」


「聞いてる…」


クレアはすぅ…と感情を消し、目の前で鼻息荒く興奮している双子の弟の姿を脳内から削除した。


大好きな友人の運命を憂いながら――。








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