幕間 まどろみ ―ミオside―
「はぁぁ……終わったあ……」
薬草園の奥、ひときわ背の高いスフィアの花の下。
ミオはふらりと腰を下ろすと、地面に仰向けに寝転がった。
視界には、薄紫の可憐な花々が青空の下、風に揺れている。
──研究発表会は、何とかこなせた。
人生で初めての経験
あまりの人の多さに、緊張で言葉が何回も詰まってしまったけど…
研究内容に関しては、高く評価してもらえた。
連日の睡眠不足も 少しは報われた、と思う。
「……あ~、寝ちゃ駄目よ…寝たら……」
(これから報告書もまとめなきゃいけないのに…)
緊張から解き放たれた反動で、頭がボーっとする。
まぶたがふさがって、身体から力が抜けて──
どの位たっただろうか
木陰に現れた大きな影が、ミオの側で足を止めた。
ライは少し眉をひそめ、
倒れているのかと、足早に駆け寄る。
その拍子に、――
「…カルネリの葉が……足りない……」
「……キピナの花で……ためしましょ……ムニャ……」
ライは一瞬、目を見開いた後、小さく吹き出した。
「……寝言でも、実験か……」
苦笑まじりに、呟いた
風が吹く――自分達を避けるように、薄紫の花びらが絨毯のように静かに広がる
「……たまには、悪くない…」
ぽつりとそう呟いて、
ライはミオの柔らかな寝顔を静かに見つめた。
しばらくして──
ミオはまどろみの中、耳元でささやく あの低い声を聞いた気がした。
「――起きろ。身体が冷える――」
目を開けたミオの視界に、薄紫がぼんやりとにじむ。
ゆっくりと起き上がると、右手が何かを握っている。
「……ハッカ飴……?」
ぽつんと手のひらに残された飴玉を見つめて、
ミオは小さく微笑んだ。
薄紫の花びらが、ふわりと、また風に舞っていた




