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沈黙の将軍と返り花  作者: 青嵐
第一章
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ミズツバキが揺れるころ

「やったあ!ミズツバキがこの時期にこんなに収穫できるなんて…!」

モスグリーンのケープをかぶり、足取りも軽く下山する一人の女。

ミオ・サイラス

ミオは山あいの村で診療所を営んでいる薬師だ。

この日は、予想外の収穫にホクホクした気分で帰路を急いでいた。

背負いかごの中には、溢れんばかりのミズツバキの葉。鎮痛、消炎作用があり、ミオの治療には欠かせない薬草だ。

村まであと少し、しかし 山道の先に見慣れぬ人だかりが見えて来た。

「…あの制服、騎士団の方たちだわ。演習中かしら…早く通りすぎた方が良さそうね。」

そう呟き 歩を速めた瞬間、一人の騎士が首を押さえて倒れこんだ。

「う…ぐっ。首が…!!」

「お、…おいっ!どうした、しっかりしろ!!」

倒れた騎士の周りに人だかりが出来る。

ミオは背負っていた籠を即座に降ろすと、迷わず輪の中へ飛び込んだ。

「…待って!待って動かさないでっ!!」


−−−騎士の首は赤く腫れ上がり、呼吸は浅く、苦しそうに顔を歪めている。そして指先の震え−−−。

(この腫れ、呼吸困難に痙攣…神経毒ね…マヌガ蜂だわ)

ミオは確信したように頷く。


「…おいっ!お前は何だっ?村人か!?」

ハッとしたように一人の騎士が聞いてくる。


「私は村の薬師です!彼はマヌガ蜂に刺されたものと思われます。今すぐにでも毒針を抜かないと、彼は呼吸困難で命を落とします。」


見守る騎士達に、動揺が走る。

ミオはポーチからピンセットと布を取り出した。

(あぁ、…消毒液があれば…)

焦ったように辺りをぐるりと見渡す。


その緊迫した空気を断ち切るように、一頭の黒馬が土煙を立て、山道を駆け降りてきた。

漆黒の騎士服に身を包んだ男はひらりと馬から降りると、無造作に髪をかき上げ 倒れた兵士の方向へ視線を向ける。

眉間にシワを寄せながら、その大きな男はツカツカと近付いてきた。自然に人だかりが二手に別れる。


「将軍…っ!」騎士達がざわつく。

「何が起こった。状況を説明し−−−」


「あぁっ!そこの顔の怖い人っ!!

あなたの腰に下げてるの!火酒か何かですかっ!?」


−−それが、

ヴァンデール帝国随一の将軍ライ・オルグレンと薬師ミオ・サイラスの出会いだった。


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