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沈黙の将軍と返り花  作者: 青嵐
第二章
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リブラ堂と巡回と

「ライいるかー?来週の軍法会議の件だけど──」


休日だろうが、騎士団には休みは無い。


リドが、ノックも無しに執務室のドアを開ける。

だが、どこを見てもライの姿はなく、代わりに文官の一人が書類を必死に整理している。


「あ…リド様。将軍は今、城下の巡回に出られています」


「……巡回? あいつがぁ……?」


まさかの返答に、リドは目を丸くした


「何だよ、あの巡回用の騎士服、目立つだの重いだのって アイツすっげえ嫌がるじゃんか。」

「あ、はあ…いつもはそうですよね…」


街での巡回服は 騎士そのものを目立たせ抑止力に使う為、嫌でも目立つ。

山で着る実用的な軍服より ずっと華麗で豪華だ。

濃紺を基調に白と金の差し色が入り、肩口からは輝くような金の編糸。マントは流れるように身体を覆うが、実際は重く、何より人の目を集めるため ライはその騎士服が大嫌いだったはずだ。


「珍しいことも あるもんだなあ…」


リドは頭をかきながら、ニヤリと笑い、執務室を後にした。


***

扉を開けた瞬間、ミオの瞳がきらきらと輝いた。


「うわっ……これ、ぜんぶ薬術書……!」


天井まで届く本棚に、ぎっしりと詰め込まれた重厚な装丁の薬術書。息を吸い込むと、落ち葉にも似た古い紙の香り。ここは薬術書専門店 リブラ堂だ。


「ひぇあっ!!シアン先輩っ、あれ、“レーゲナム式”の初版ですよね!?」

「おっ、こっちは“ラヴェンナ薬術方”の解説版!やっと入荷したのかっ!」

「はああっ!シアン先輩これ見て下さい!ずっと読みたかったグラードの外傷治療録の写本がここに!!どこから読もう……どこから…!!」


二人は早口で、わぁわぁとまくし立て、奇声まじりの声を上げながら 棚から棚へ駆け回っている。

「やっぱり私、薬師になってよかったっ……!」


そんな二人を、本屋の隅の小さな椅子に座り、薄く目を開け眺めている一人の人物──

クレアが、ため息混じりに言った。


「……良かったね…」


その呟きは、既に二人の耳には全く入っていなかった。








今日はあと1回更新します

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