表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈黙の将軍と返り花  作者: 青嵐
第二章
17/45

休日の朝

「……薬師って……ほんと……どうしてこう……」


休日の朝

ミオと同室のクレアは、頭を抱えていた。


その視線の先、ミオは鏡の前で薬師服を着て、ローブをまとい、いつもの様にポニーテールを結んでいる。


「ミオ、まさかとは思うけど…それで街へ……?」


「はい!薬術院の先輩と、城下町にある薬術書の専門店に行く予定で!

リブラ堂って言うんですけど――」


「駄目だわ…目眩が」


「えっ……駄目ですか?」


クレアは鏡の前までズカズカと歩いてくると、

ミオの肩をつかんで振り向かせた。


「ミオ!ここは王都よ!せっかくの休日なんだから、ちゃんとお洒落して行くの!」


ミオは目をぱちくりさせた。

(動きやすいから、いいと思ったんだけど…そんなに変かな)

鏡の中のローブ姿の自分を何回も見る。


クレアはすぐに引き出しから服の束を引っ張り出し、ミオの身体に次々と充てがう。


「ほらっ!これ!ミオの瞳の色に良く合ってると思わない?私の新作がようやく日の目を見るわね!」


「わあ、素敵な服…。クレアってこんな素敵なお洋服作れるの?凄いわ…」


ミオが小さく呟きながら

秋の森を溶かしたような色のワンピースをそっと撫でた。

布は薄く、サラサラとミオの指がすべる。


そこに──


「おーい、ミオー!」トントントントン


部屋のドアを開けると、ひょこっと顔を出したのは、

薬術院の先輩・シアンだった。


「あっおはようございます!シアン先輩。」

「準備できたー?リブラ堂早く行こうよ。まあ、あそこはいつ行っても空いてるけどさあ。」


シアンの姿を見てクレアは再び気絶しそうになる──腰に薬袋、おなじみのローブ姿、さらに怪しげなボロボロの資料を脇に抱え、

ミオとまったく同じ

“薬師です。これから出勤します。”

スタイル


「……ここにもいたわ……。ねえ、ファッションセンスが良くなる薬草とかないわけ!?」

クレアの声が低くなる。

ミオはただ苦笑いだ。


クレアは呆れながらシアンに向き直る。


「アンタ、今日街に出るなら、ついでに実家に寄ってまともな服、見繕ってもらいなさいよ」


「ん?クレア …シアンの実家を知ってるの?」


「……は?何言ってんの。あたしたち、双子でしょ」


「えっ?」


シアンはため息をつきながら、ボサボサの前髪を無造作にかきあげた。


ミオの目の前に現れたのは──

クレアと瓜ふたつの、意外と整った顔。


「う、うそ……ほんとだ……!!」

(クレア・リンデル …シアン・リンデル ほんとだ!)


クレアは何回も自分達の顔を見比べるミオを見て

ため息をついた。薬草オタク2人が、休日の王都へ…

嫌な予感しかない。


「なーんか、あんた達二人で街に出すの不安になって来た…。私も一緒に行くわ。はい!ミオはさっさと着替えて来て!シアンは…もういいや。面倒くさい」


「なんかひどくない?」




***


「じゃあしゅっぱーつ!」

のんびりとしたシアンの号令で、3人は 街と繋がる王宮の門へと、歩き始めた。

あれからクレアに髪を整えられ、化粧を薄くほどこされ、何とも面映ゆい気持ちで ミオは歩く。


「ミオ、今日の髪型!その秋色のワンピース!いいとこのお嬢さん!って感じよ。いいわいいわ〜!私のセンス さすがだわ!」

クレアがウンウンと噛み締めながら横を歩く


「クレア、僕は?」

「あんたはちょっと黙ってて」


三人の笑い声が朝日に照らされた石畳に響いていた。


その光景を──


少し離れた回廊の影から、ひとりの男が静かに見つめていた。


ライ・オルグレン。


「将軍、本日の街の巡回ですが、今朝ひとり欠員が出まして……」


部下の報告に、ライは目を細める。

視線の先では、ミオの栗色の髪の毛がキラキラと光り、優しく風に揺れている。


「……俺が行く」


視線をミオに残したまま その一言だけを部下に告げ、ライは踵を返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ