リド・ノーマンの回想
夕闇の薬草園の中−−
ミオが去った後…ライは暫くその場を動けなかった。
「ライ、お前、何で来た はないだろうよ…」
カサカサと葉を踏みながら
リドが頭に手を組んで呆れながら近づいてくる。
「……見てたのか?」
「お前ね、優勝セレモニーすっぽかした将軍を探しに行かされた俺の身にもなれよ…。」
ライの瞳は どこかまだ現実を受け止めていないように揺れている。
「断ると思った…村しか知らん薬師が、王宮の中でやっていけるのか…?薬師の知識を悪用される事だってあるんだぞ…!」
リドは こんなに他人に感情をあらわにする幼なじみを見たことがなかった。
「…なに、お前珍しいな 本当にあの薬師のお嬢さんに惚れてるのか?」
「違う。…ただ、俺達と会ったことで彼女の人生が変わった…王宮になど近づかんほうがいい…。」
ライはそう言い捨てると、視線を下に向ける。
「まあ、ミオ嬢…だっけ?別に彼女はお前に会いに来たわけじゃないだろ?」
「……!」ギロリ とライはリドを睨む。
リドは 降参するように両手を上げると、スタスタと薬草園を出ていった。
(ライのやつ、相当こじらせてんなあ…でも、あの薬師のお嬢さんが…あいつの孤独を理解してくれたら…)
リドは20年前、騎士学校へ放り込まれた日の事を思い出していた−−
男4人兄弟の3番目 騎士にでもなって来いと養成学校へ放り込まれたあの日、入学式で隣に立っていたのがライがだった。
静かな目の奥に何かを閉じ込めたかのような表情を漂わせる少年−−
オルグレン家は代々続く武家の家柄だった。母を早くに亡くし、軍の幹部だった父親はほとんど家にいなかったそうだ。
「別に騎士になりたかったわけじゃない。」
いつだったか、リドにだけポツリと言った事があった。
しかしながら恵まれた体格と剣のセンス、判断力−−ライはいつも周りの同級生のずっと先を走っていた
「すげーなライ!またお前実技で トップだろ!」
「別に…これしかやることない…」とグレーの目を静かに伏せる 幼いライの表情が、リドの脳裏に浮かんだ。
それから数年後 ライの父親は国境沿いの闘いで 命を落とした。
それからだった。
ライは猛然と 自らの居場所を求めるように剣に打ち込むようになったのは。初陣から武功を挙げ続け、気がつくと帝国随一の軍人の名を欲しいままにした。
だが、 リドは知っている。強くなればなるほど、何かを守れば守るほどライの孤独が深く濃くなっていくことを。
(…なんつーか、あいつの人生にも、こうご褒美みたいなもの…1つぐらいあってもいいと思うんだけどなあ…)
リドは群青色の空を見上げながら、深くため息をついた。




