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運命の邂逅
「そこの顔の怖い人っ!!」
ヴァンデール帝国の山中、焦りと緊張をはらんだ女の声が空を切った。
帝国を束ねる将軍ライ・オルドレンは眉間に皺を寄せ、人だかりに近づいた。
山道に真っ赤な顔で、苦しげに横たわる部下 。そのかたわらに1人の女。
「誰だ、お前は−−−」
女はかぶっていたモスグリーンのケープを勢いよく外すとライの腰元を指差して、叫んだ。
「あなたの腰に下げているの、火酒か何か? 早く下さい!消毒したいの!時間が無いんです!!」
フードから出たアンバーの瞳が、真っ直ぐにこちらを見ている。
その強い眼差しに一瞬たじろぎ、ライは無言のまま腰元の火酒の筒を投げ渡した。