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86話:東の王子様2

図書館を、ルヴィーに引きずられながら出ていき、中庭でシルビアが用意してくれた食事を食べながら説教を受けていた。


「お前な!昨日の今日でなんで話しかけてんだ!」


激しいお説教のせいで、シルビアが用意してくれたサンドイッチがしょっぱく感じる。なぜだろう……雨も降ってないのに目元が濡れる。


「まぁまぁ殿下。あまりトレーフル様を責めないだください」

「シルビア……」

「怒るなら、勝手に一人で行動したことを怒りましょう」

「シルビア!?」


まさかの裏切り。君はいつからそんな子になってしまったんだ。

どうしてルヴィーと一緒に私を怒るの……

とりあえず、一人で行動したことは謝罪した。でも、二人に言ったら絶対止められてたし。


「当たり前だろう。昨日警戒しろって話したばかりだろ」

「とは言っても、実習で同じチームになるわけだから交流は必要でしょ?アンジュやキリクはともかく、私たちはクラスが違うし」

「まぁ、確かに……一理あるな……」

「それで、どうでしたか。ミセリア殿下の印象は」


正直好印象だった。

結構人見知りでたどたどした感じだけど、好きなことへの好奇心は旺盛のようで、魔法の話をしている時は結構生き生きしていた。

あのまま二人が来なかったら夕刻まで話していたかもしれない。


「まぁ正直、王子っていうよりは学者って感じの印象かな。王子にしてはかなり地味」

「確かに話していなくても昨日会っただけでそれはなんとなくわかるな」

「まだ昨日今日会って話したばかりだし、その中で留学の理由もわかるんじゃないか。とりあえずは、チームになったから交流はしないと」

「では、一ついい提案があります」

「提案?」


にっこりと可愛らしい笑みを浮かべながら、人差し指を立てるシルビア。

その仕草も最高にキュート!

魔道具でカメラとかないかな?もしくは魔法とかでも。シルビアの姿だけを集めた映像とか作りたい!


「はい。やはり、交流といえばお茶会だと思います。甘いお菓子と美味しいお茶を飲みながら、お互いのことをよく知っていくんです」

「ふむ。まぁ大体の仲良しキッカケってお茶会だよね。私はいいと思うよ。その中で得意魔法とか、他に何ができるかとか話せばいいし」

「はい。実習も日時もそんなにないので、ミセリア殿下のことを知って、魔法討伐の成績をいいものにしましょう」


ミセリア以外のメンバーは昔から(アンジュは最近だけど)の知り合いだから得意、不得意の魔法。魔法以外の特技は一通り把握してる。唯一情報がないのが、ミセリアだけ。一応魔法討伐は授業であり、試験のようなもの。魔力もそれなりに高いメンツが揃ってるし、トップ取らないと変な言いがかりつけられそうだ。

まぁ私はいいんだけど、ルヴィーやシルビアがバカにされるのは腹が立つ。


「それじゃあ決まりということで。あとでアンジュ様とキリクにも話してミセリア殿下を誘ってもらいます」

「いつやるんだ?」

「明日というわけにはいきません。明日一日を準備機関として、明後日開催しましょう」

「私何か作って持って行くね」

「だったら、焼き菓子を頼む。お前のはそんなに甘くないから結構食べれる」

「わかった。あ、その焼き菓子のレシピ。シルビアにも教えてるから、今度作ってもらったら?」


耳元で、そっとシルビアが聞こえないボリュームでそう教えると、ルヴィーは顔を真っ赤にさせて顔を逸らした。初すぎやせんかいルヴィーさん。でもまぁ、もう直ぐ10年になる婚約でまだまだそんなに初々しいのはいいことだ。


「よし。シルビアの美味しいご飯のおかげで元気も出たし、午後の授業も頑張るぞー」

「午後は一般教養の授業でしたね」

「はぁ、退屈だな」

「ねちゃだめだよルヴィー」

「お前がいうな」


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