82話:魔法剣士学園へ入学2
学園へはまだ少し距離がある。その道中で、ハーヴェが「そういえば」ととある話題というか情報を口にした。
「学園には、今2人の留学生がいるんだって」
「留学生?」
「そうなんですか?」
「あー、そういえば父上が言っていたな」
ルヴィーが話してくれたその二人というのが東の小国の第3王子と南の大国の第5王子らしい。
東の小国「フェデース」は聖女、勇者の信仰がとても強い国らしい。
黒髪黒目の女性を聖女、同容姿の男性を勇者として特別視しているそうだ。
ただ、あまりに信仰が強く東の大国からも目をつけられているらしい。
今学園に留学している王子は、私たちと同い年で、留学期間は1年だそうだ。
次に南の王国「クピィドゥス」は南で最も大きな国で、商業が盛んなところだ。
お金の巡りが激しく、あちこちで買っては売りが飛び交っているそうだ。
ただ、その売り買いには人間も含まれているとか。
留学している第五王子は、現在騎士科3年に在籍しており、運がいいのか悪いのか、騎士科3年は一学期(夏休み前)までは別の施設で実践訓練の実習を行う行事があるため、しばらくは会わずに済むようだ。
「どっちも癖の強い国すぎない?」
「まぁそうだな。東の方はレーフやシルビアにとってはいい思い出がないだろう?」
「まぁ昔のことと思いたいけど、宗教系に関わるのはもうごめんかな」
「南も、うちは禁止されてる人身売買が普通に行われるから、その王子の価値観がどれほどのものか不安に感じるな」
「ま、生徒の数も多いし相手からこない限りは関わりにはならないでしょう」
「そんなこと言って、一番関わりそうなのがお前だからな」
いや、痛いところ突かれてしまった。
とはいえ、私だって好きで関わってるわけじゃないし、相手がヤバい子だったらとっとと逃げますよ。
「いいか、お前はなるべく知り合いといろ。俺やシルビアと同じクラスになったら、絶対に一緒にいること」
「はいはい。ルヴィーは心配性だな」
「そうさせてるのは誰のせいだ」
「殿下の言うとおり、レーフは誰かと一緒にいるんだよ。僕は学科が違うから一緒にいられないし」
「もぉ、ハーヴェまで!大丈夫だって」
「あ、見えてきましたよ」
馬車の窓から外を眺めていたシルビアの明るい声で、私たちも外を見つめた。
まるでお城のような大きな建物。
多くの優秀な人材を輩出した魔法剣士学園。
とうとう、私は舞台の上に立つのだ。




