8話:従兄妹3
その後、私とルヴィーはその場で話をした。
ぶっちゃけた話、王とかめんどくさいことを話せば、彼は笑いながら「大丈夫そうだな」と口にした。まぁ仲良くなかったらこんなことも言えなかったけど、こうやって話せば彼も私が王位継承権に興味がないことは理解してくれたようだった。
「あ、主従契約については成人になってからやっても構わないよ」
「だから嫌だと言っているだろう!」
「私は割と本気なんだけどなー」
「……お前は、友人に首輪をつけたいのか?」
「んー、そう言われると確かに」
「そうだろ。それに、私とお前は友人というよりは家族、兄妹に近いのだ。兄妹に首輪をつけるだなんて、俺にはできない」
意外とちゃんと考えているようで良かった。そうなんだよなー。ルヴィーは馬鹿じゃないんだよ。トレーフルとシルビアが特別優秀だっただけで。ただまぁ、だからこそだったのかもしれないけど、とりあえず私との関係は良好。後は、シルビアとの関係が良くなれば、少なくとも本編のような展開は起きないだろう。
「剣術はいつからやっているんだ?」
「始めたのは2、3日前から。私の護衛騎士が師匠になるの」
「ふーん。で、その肝心の護衛騎士はどうした?さっきはメイドしかいなかったが」
「急な呼び出しがあったみたいで、いまは休憩中かな」
「なるほど」
そう言えば、呼び出されて随分経つけどまだかかるかなー。稽古の時間がなくなってしまう。
「そう言えば、ルヴィーとハーヴェって仲良しだよね」
「ん?あぁ、まぁあいつの父親が父上の専属騎士だからな。将来的に、あいつが私の専属騎士になるから随分前に紹介されている」
なるほど。本編以前の設定って、事細かにはまだ記載していなかったけど、そこの二人の関係は今より前なのか……流石に各キャラクター0歳からの表を作ったりしないからわかんなかったけど。
「じゃあさ、婚約の話とかも聞いたりしてる?」
「婚約?ハーヴェのか?」
「もだけど、ルヴィーの」
「……まぁ、すでに決まってるようなものだ」
「それって、シルビア嬢?」
婚約は、今から2年後。私とハーヴェの婚約。ルヴィーとシルビアの婚約。そして、アルとハーヴェの妹の婚約も同じタイミング。
シルビアは、私と同様に今の段階でその才覚が世間に知れ渡っている。私と同等かそれ以上の魔力保持だと。
ただ、彼女にはちょっとした噂があった。誰もいないはずなのに誰かと話をしたり、虚空を見つめて笑ったりしたりと、おかしな行動をとると。
「優秀な人間ではあるだろうが……天才と変人は紙一重というだろ?」
「それは私も変人だと言いたいの?」
「まぁ、ある意味では」
「ひどいなぁ」
「なんにしろ、あまり乗り気ではない」
「……つまり、シルビア嬢が変人でなければいいんだよね?」
「ん?まぁそうだな……」
「だったら、私に任せて!」
これはある意味彼女に近づくチャンスだ。そして、これを気にルヴィーとシルビアの仲が深まれば、本編にも影響が出る!みんながハッピーエンドになるんだ!
「任せてって……何か案でもあるのか?」
「うん。実は元々、シルビア嬢とは仲良くなりたいと思っていたの」
「……あんな噂が出回っているというのに……まぁ、そういう予定があったのならいいが……」
「安心してよルヴィー。大事な主君の婚約者になる相手だもの。ルヴィーにふさわしいかしっかり見極めてあげる!」
とは言ったが、彼女の変人行動が何なのかは私にはわかっている。問題は私がそのことを口にして、彼女が心を開いてくれるかだ。
家族はきっと彼女のそれをわかっているが、知らないはずの人間がそんなことを言って警戒しないはずがないからだ。
「ねぇ、ルヴィー。まだ時間があるなら剣の稽古してよ。強いんでしょ?」
「ん?ふふ、まー、始めたばかりのレーフよりは確かに強いな」
頼られて嬉しんだなー。とりあえずしばらくは、その自信をへし折ることを目標に剣と武術を磨いていきますか。