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77話:入学準備3

その日、私は王城へと足を運んだ。

何かをやらかしたというわけではなく、従兄であり、次期国王となるルヴィーからの呼び出しである。

なんでも相談したいことというか、お願いしたいことがあるとのことだった。

なんだろうと思ってやってきたのだが、向かいにいるルヴィーはだんまり。私は出されたお茶とお菓子を口に運ぶ。

ある程度満足して、やっと私の方から口を開いた。


「それで、お願い事って?」


私が来ることは誰にも伝えていなかったようで、廊下で陛下と顔を合わせたとき驚いた表情をされた。

それに、部屋には私たち二人だけで使用人の姿は一人もいない。

誰にも聞かれたくないことなのだろうか。


「じ、実はだな……」


ぐっと奥歯を噛み締めるような音が僅かに聞こえ、立ち上がったルヴィーは私の隣に来ると誰もいないというに耳打ちをしてきた。


「お前とシルビアが仲良くしている小説を書いて欲しい」

「……は?」

「頼む!一生の頼みだ!」


勢いよく私の肩を掴みそう懇願するルヴィー。

要は、私に同人誌を書いて欲しいと頼んでいるわけだ。しかも、絡んで欲しい相手に直接。


「いや、なんで本人に頼んでんの?」

「お前以外に、身近に小説書けて、尚且つそういう話をした相手がいないからだ!」


本人は自覚していないが、すっかり百合沼に落ちてしまったルヴィー。

確かに私とシルビアが絡んでるのをみるのを好いてはいたが、ついに同人誌を求めるまでになったか……あのルヴィーが。


「頼む……最近、勉強だったりなんたりと忙しくて、疲れてるんだ。そんな中、お前はシルビアと出かけたり、最近ではホーリーナイト伯爵令嬢と3人で出かけているとも聞く。みたい!お前ら3人が仲良くしているところが見たい!あわよくば!お前に甘える二人が見たい!」

「ルヴィー落ち着こう。どうどう」


随分疲れが溜まってるみたいだな……すっごい興奮してるよこの子。

つまり、癒しが欲しいと。で、その癒しが百合同人誌ということか。まさか自分の同人誌を頼まれるとは思わなかったけど、まぁ書けなくもない。


「まぁ別にいいけど」

「ほんとか!?」

「見返り求めていい?一応自分出すわけだし」

「もちろんだ。欲しいものがあれば準備する」

「じゃあ護身用の短剣ね。なるべく丈夫なやつで」

「まぁ別に構わないが、別にいらないだろ」

「無いよりはいいでしょ。短いのでいいならすぐに書けるけどどうする?」

「本当か!?じゃあ今から3時間ほど剣の稽古があるのだが、その間に書いてくれるか?使用人には頼み事をしているから部屋に入らないよういっておく」


そうしていただけると助かる。

お城の使用人に、私が自分でシルビアとイチャイチャしている小説を、ルヴィーの部屋で書いてるなんてバレたく無いしね。

お茶やお菓子は好きにしていいとのことなので、好きにさせてもらうことにした。


「それじゃあ任せたぞ」


そう言って、ルヴィーは剣の稽古に出て行った。

私は準備された紙にペンを走らせてお話を書いていく。

ルヴィーがどういう話が好きかわからないので、とりあえず全年齢の純愛もので、少し現実味のあるもので書いていくことにした。

前世に比べて、世界がファンタジーということでイメージも簡単にしやすい。

小説自体は、1時間程度で書き終えた。


「さて、残り2時間はどうしようかな」


そう思いながらふらふらと部屋の中を歩き回った。

好きにしろとは言われたけど、勝手に触るのはよく無いと思った。

でもまぁ、本は思わず見ちゃうよね。

王城にある本なんて珍しいものだろうし。まぁルヴィーの部屋だから大したものはなさそうだけど。


「帝王学の本が多いな……意外と頑張ってるみたいだ」


本編とは随分と違うキャラクターになってしまった。

婚約者や従妹を嫌う王子様はいなくなった。相変わらず素直じゃ無いけど、あのツンデレ具合は読み手も好感が持てるだろう。むしろ、からかって楽しみたいという人もきっと出てくる。私のように。

もう物語本番も目の前。今までの行動が、どう影響するかわからない。

もしかしたら、アンジュのポジションが別の誰かになるかもしれない。

別の可能性で結果的に私やシルビアが断罪されて死んでしまうかもしれない。

そうならないためにも、私は多くの死の可能性を全て取り払う。

前世の記憶を取り戻した時から、今この瞬間まで、私の目的は変わらない。


「みんなが幸せになる未来が、私の願い」


作者として、登場人物みんなが幸せになる未来を掴まないと。それが、私が完成させてあげられなく、酷い結果を与えてしまったあの子達への償いだ。


「レーフ、起きろ」

「んっ……」


いつの間にか眠ってしまっていたようで、ルヴィーの私を呼びかける声で目を覚ました。


「あれ、寝てた」

「まったく、風邪を引くぞ」

「面目ない。あ、小説かけたよ」

「むっ……ご苦労だった」


上からの言葉だけど、その表情は早く読みたくて仕方がないようだった。

読み終わったら感想聞こうかな。


「あぁそれと、父上と母上が、昼食を一緒に取らないかと言っていた。黙って呼んで怒られてしまった」

「そっか。じゃあご一緒させてもらおうかな」

「うむ。せっかくだから、シェフにはお前の好物を準備するように伝えてある。感謝しろよ」

「あはは、それはとっても嬉しいな。ありがとうルヴィー」


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