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73話:成人式6

無事に自分の事情を世間に伝えることになった。

これで悪い人が近づいてくる可能性が上がった。まぁ言わなければいいだろって話だけど、陛下的には忠告に近いのかもしれない。

相手は公爵家の人間の上に、魔法の才能も長けている。私は剣術もだけど。その上精霊が見えて、神獣から加護も持っている。関われば80%以上の確率で死ぬことになるだろう。


「まぁ、そういうのはどうでもいいかな」


陛下の話の後、ホール中央はダンスをする令嬢と令息たちの姿がで始めた。

そして今、未来の王と王妃がともに踊っている。とっても美しい美男美女。私が見たかった最高のカップリングで、私が求めた子供たちの幸せ。


「トレーフル様」


素敵な従兄と親友のダンスを見つめていた時、不意に私に声をかける男性の声。

顔を上げれば、そこには神官を引き連れた教皇様の姿があった。


「ご機嫌よう、教皇様」

「ご機嫌よう。貴女はあちらに行かれないのですか?」


教皇様の視線が、ダンスを踊るルヴィーとシルビアに向けられる。

私もそっちに視線を向けるが首を振る。

ファーストダンスは婚約者と。それは至極当たり前のことだけど、ちょうどハーヴェが席を外していて、私はそれを持っているところだった。


「では、少しお話をしても?」

「……ふふっ。では、テラスに行きましょう」


彼が何を聞きたいのかはわかっている。公になったし、さすがに話さないというわけにもいかない。今後、彼らの助けも必要になるかもしれないのだから。

テラスには私と教皇様だけ。他の神官たちは外に待機してもらった。


「驚きました。まさか貴女がアモル様と契約されているとは」

「神獣様のお名前をご存知なのですか?」

「えぇ。名前まで知ってるのはごく一部ですが、私は全員のお名前を存じております」


私も、それなりに結構色々調べたけど、神獣関連の書物にアモル様たちのお名前はなかった。となると、出回ってない書物。それこそ、教会側が古くから記され、保管されているものに書かれているのだろう。

何それ読みたい!


「神獣様もまた我らが神聖視する存在の対象です。そんな方と友人とは、トレーフル様も神の使徒なのですね」

「そんなことはありません。私は人間です。そんな風に特別な存在と言われるのはあまり好きではありません」


現に私はそれで自分を過大評価して、自分を犠牲にしたり大切な人を傷つけてしまった。そんなに力をつけても、やっぱり私は人でしかないのだ。


「私が何であろうと変わらず接してください。教皇様。今、貴方の目の前にいるのは神の使徒ではなく、ただの少し魔力が高く、神獣様とお友達になったただの人間。トレーフル・グリーンライトです」

「……かしこまりました。貴女がそう言われるのであれば、我々は貴女に対して今まで通り接しましょう。ただ、中にはそんなことどうでもいいという過激派もいます。お気をつけください」

「ご忠告ありがとうございます。それでは私は失礼します」


軽く頭を下げ、私は教皇様を残してテラスを出て行った。

と、ちょうどカーテンから抜け出したタイミングで目の前にその場を通り過ぎようとしているハーヴェと出会した。


「ハーヴェ!」

「びっくりした。ここにいたんだねレーフ」


さっきまで真剣そうな顔だったけど、私の顔を見るなりとても愛おしそうな笑みを浮かべていきた。

ギャップえぐいな……


「ちょうど探していたんだ。誰かと話していのかい?」

「えぇ、私がお誘いをしまして」


少し遅れて、教皇様がカーテンを抜けてそう声をかけられた。

じっと見つめ合う二人。そして、ハーヴェがにっこりと笑みを浮かべて私の肩を抱き寄せた。


「そうなのですね。教皇様がご一緒でしたら、安心です。大事な婚約者が他の男にダンスに誘われていたらと思うと怒りが込み上がってきますから」

「ご安心ください。我々は、役目を終えるまで女性に手を出すことは許されません。なので間違いが起こることはありません」


え、そうなの?

教会の事情はよくわからないけど、神官になるとつまり、女性と性的な行為ができなくなるってこと?

教皇様、とってもかっこいい顔してるしたくさんの女性がいいよりそうだし大丈夫なのだろうか?教皇様にその気がなくても、女性から襲撃というか……いわゆる夜這いとか……


「それに、女性には興味がないのです」

「……え!?」


私はすぐにハーヴェの方を見た。まさかそういうこと!?女性ではなく男性が対象!?


「あぁトレーフル様。勘違いされているようで申し訳ありませんが。私は女性はもちろん、男性にも興味がないのです」

「え、じゃあ……」


男性女性に興味がないとなると、もう後動物とかしか思いつかないのだけど。

だけど、そんな私の想像の若干斜め上の発言を教皇様はされた。それはもうなんていうか引くレベルの表情をされて。


「私は、私が崇める神以外には興味がないのです」

「……あぁ……」


そうかこの人、やばいぐらいの神信者だった。でもまさかそこまでとは……

その後、聞いてもいないのになんか色々言っているけど、結構過激な発言が多かったので、そばにいる神官たちに止めるようにお願いして、そのままテラスの方へと引っ張って行ってもらった。

教皇様とは協力関係でいたいけど、あれを見るとそれもなぁ……

軽いため息をつくと、そばにいるハーヴェが私の手を握ってくれた。


「気分転換に一緒に踊らないかい」

「……えぇ。もちろん」


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