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380話:獣人の国。

そこは、アラクランとは違って国らしい国だった。

アラクランは、自然をそのままにしていたから、ひどく幻想的に国というよりも別世界に迷い込んだ感じだった。

それに比べて獣人の国は、自然の要素はほとんどなく、地面は石で整地され、建物も木材や石などで作られていて、見慣れた感じの風景だった。

それと、足元から感じるものに、私は改めて再確認させられる。


「エメラパゴの上に建てられているとは思えないわね」

「やはりご存じでしたか。我ら獣人は、ずっとエメラパゴの上で生活をしています。何度も彼が目覚め、眠す瞬間を体験しています」

「よく国が崩壊しないわね」

「はい。我らが神のご加護のおかげです」

「神……ね……」


窓の外の街の風景は、サージェントと変わらない。

親子連れや恋人。子供が元気よく走り回ってる姿もある。

一応アラクランの領地ではあるけど、これだと本当に違う国って感じがするな。


走り続けた馬車はしばらくすれば止まり、私はルフレの手を借りて降りた。

雨が降っているから、彼が着ていたコートを貸してくれたけど、私は魔法を使って雨を防ぐ。まぁ結界を自分の周りに貼ってるだけなんだけどね。


「お嬢様!」

「っ!おい、勝手な行動をするな!大人しくしろ!」


ジルクが私に駆け寄ろうとしたけど、それをみた熊族の男が彼に危害を加えようとした。だから私は、魔法を使って彼に攻撃をした。


「っ……」

「……ルフレ、今のはどっちが悪いと思う?ジルク……私の部下は、私を心配して駆け寄ろうとした。だけどそれをあの男は力でねじ伏せようとした。つまり、傷つけようとした……」

「……すみません、私の部下が失礼しました」

「っ!ルフレ様!人間なんかに!」

「黙れ!私たちは彼らを国に連れてくるように命じられているだけだ。傷つけていいとは言われていない。もし何かあれば、咎められるのは我々だ」


ルフレの言葉に、全員が押し黙る。

周りの様子を見計らい、ジルクが、他の騎士たちが私に駆け寄り心配してくれた。


「ではご案内いたします。王は謁見の間でお待ちしております。ただ、そこにお通しできるのは貴女さまだけです」


ルフレの視線が私に向けられ、察したジルクはなぜだと声を荒げる。

興奮する彼を私は宥め、ルフレの言う通りにするように言った。


「ルフレ、貴女の言う通りにする。だけど、彼らに手を出せば、手を出したものの命はないと思って」

「はい、わかりました」


途中まではみんないっしょに移動し、途中の十字路でジルクたちと別れた。

謁見の間に向かったのは、私とルフレと2名の獣人。

制圧は簡単だけど、さっきも言ったように無駄な争いはしたくない。とりあえず、目的を知らないといけない。

大きな扉が開き、ルフレに誘導されて中に入れば、両サイドに数名の高価の服を着た獣人たち。そして正面の玉座に上裸のライオンかな?の男がいた。

顔もいいし、筋肉もいいけど、私の好みじゃないな。やっぱり、ハーヴェ以上の男はいないわ。


「ルフレ、そのものがオルカーネットを討伐しようとしていたものか」

「はい、陛下」


ルフレが言われた質問に答えれば、しばらく俯いた後に大笑いし始める。

その笑いに釣られるように、両サイドにいたものたちも大笑いをしていた。なんて失礼な連中だろうか。


「そんなひょろひょろの、しかも人間のメスがあのオルカーネットを?ルフレ、俺を馬鹿にしているのか?」

「いえ、彼女で間違いありません」

「おいおいルフレ。お前が真面目なやつなのは知ってる、しっかり仕事をする奴だとは知っている。だけどな、たった一度のミスだ。隠す必要はないんだぞ」


目の前の男は、頭ごなしにルフレの言葉を否定する。

この男は、本当に私がオルカーネットを討伐する予定だった人間だとは微塵も思ってないようだ。

というか、なんだこいつ。ルヴィーもそれなりに偉そうだけどここまでじゃない。というか、なんかクロイツ殿下に似てんな。腹立つ。


「あの、人違いなら返してもらえませんか?私暇じゃないんですけど?」

「なんだ人間のメス。随分と強気だな。可愛い奴だ。本当は怖くて仕方がないのに、そうやって強気に振る舞っているのだろう?いいんだぞ、か弱いウサギのように震えて」


あーダメだこいつ。全く話を聞かない。やばい、どうしよう。だんだん腹立ってきた。

ちょっと殴っても怒られないよね?半殺しでも許されるよね。


「あ、あの……」


怒りのせいで魔力が外に漏れ出す。

人間よりも敏感な獣人族はすぐに感じ取り、一部のものの顔色が青くなっていく。

だけどそんなの関係ないし、いまだにベラベラ喋っている男をいい加減黙らせたくて仕方がない。だから……


「少し黙ってください」


身体強化の魔法をかけて、私は思いっきり目の前の男……この国の王の顔面を殴って後方へ吹っ飛ばした。

玉座が粉々。壁はボロボロ。男は失神。


「……はぁ、スッキリした!」


私の心は晴れ模様である。



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