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38話:秘密ごと

時間というのはあっという間で、気がつけば随分と経過しているものだ。

植物の成長も生物の成長も。

そしていま、その成長を目の当たりにしていた。


「ノア、おいで」

「あ、あ」


柔らかい草の上、膝をついて両手を広げるシルビアに向かって、手を伸ばしながらヨタヨタと歩く幼い子供。

私が前世の記憶を思い出して2年。シルビアの弟であるノアことノアリシアは、歩けるようになっていた。

子供の成長とは本当に早いもので、今この光景を目にしているだけで周りの使用人と一緒になって泣いていた。


「ね、う」

「もうちょっとよ、頑張って」


姉上と言おうとしいるのか、シルビアに向かってずっと「ねう」と呼んでいる。

可愛い。可愛すぎる!

やっぱり年の離れた姉弟きょうだいっていいなぁ。

そんな風にしみじみと感じていれば、無事にシルビアの元にたどり着いたノアがギュッと抱きしめて満足そうな笑みを浮かべていた。

あぁ可愛い。


「いやぁ、ノア可愛いなぁ」

「ふふっ。トレーフル様、すっかりノアにメロメロですね」


あの後、ノアはガーデンハルク夫人のお迎えにより、屋敷に戻って行った。

元々私たちはお茶会をする予定だったので、そのまま庭に残り、使用人が準備してくれたお茶とお菓子を食べながら雑談をする。

いつもだったら、私とシルビアの二人だけだけど、今日はもう一人お客さんがいる。


「ラルエリナ様。お菓子はお口に合いますか?」

「あ、はい!とても美味しいです」


最近仲良くなったことをシルビアに話せば、3人でお茶会をしないかとお誘いを受けた。もちろん私は速攻で返事返した。もちろんOKと。

ラルエリナ嬢は最初こそ戸惑っていたようだけど、ハーヴェが背中を押してくれたようで、こうやって3人でお茶会を開けてる。

そして、私は今からもうラルエリナ嬢とは呼ばない。なんと、愛称呼びの許可を得たからだ!


「ラルはチョコのケーキが好きなんだよね」

「はい。レーフ姉様はどれがお好きですか?」

「んー、私は大体なんでも好きだよ。砂糖は正義」

「わかります。でも、わかってはいるんですが食べ過ぎると太ってしまうんですよね」


あぁなんていう幸せ。両手に花とはこのことかと思うほどに、可愛い義妹と可愛い親友に挟まれてのお茶会。最高です。ありがとう今世。


「そういえば、もうすぐルーヴィフィルド殿下のお誕生日ですね」

「あぁそうだ。今日の目的忘れてたよ」


そう。今日シルビアとお茶会をする目的は、近いうちにあるルヴィーの誕生日プレゼントをどうするかということだ。

基本的に家ごとにプレゼントを渡すのだが、個人でプレゼントを渡す人もいる。私とシルビアは後者。ラルは前者になるかな。あまり親しい間柄じゃないし。強いていうなら、兄の主君という立場だ。


「今年どうしようかなぁ……シルビアは決めた?」

「はい。最近刺繍を本格的にやってまして、お守り代わりになるように、ハンカチに刺繍をしようかと、デザインはまだ考え中ですが」

「素敵ですね」

「うん。ルヴィー絶対喜ぶよ」

「そう、ですかね」


うつむき気味に照れるシルビアはもうこの世のものとは思えないほどに可愛い。あぁ尊い。シルビア推せる。この生き物はちゃんと守らないと。


「じゃあ私はどうしようかなぁ……」

「あれはどうですか?」

「あれ?」

「トレーフル様が、私と殿下の婚約祝いにと送ってくださったお揃いのくまのぬいぐるみ」

「ぬいぐるみを送るの?」


二体もあると流石にルヴィーの部屋がファンシーにならないだろうか。

それに、シルビアとお揃いだからあのぬいぐるみも喜んでたけど、私単体だと喜ばないだろうな。

現に、ぬいぐるみを渡してお揃いだと伝えると、何かに耐えるように「ありがとう」ってお礼言ってたし。いつの間にか、ガチでシルビア大好きになってんだよね、あの子。


「いえ、ぬいぐるみがつけていたリボンの方です」

「リボン……あぁもしかして魔晶石の事?」

「魔晶石、ですか?」

「あれ、ラルは知らないかな」


不思議そうにしているラルに、私は説明をした。

簡単にいえば、魔晶石は魔力が結晶化したものだ。属性によって色が変わるため、自然にできるものは場所によって色が異なる。

しかもこの魔晶石。魔力が高ければ人間でも生成できる。

なので私は、二人の婚約プレゼントに、首に私の魔晶石がついたリボンを結んだぬいぐるみを送った。


「今、城下の方で流行ってるらしいんです。結んだいとに石をつけて大切な人に送るというのが。お守りのようなものだそうです」

「へぇーそうなんだ」


糸とお守りって聞くとミサンガ思い出すなー。あれに石がついたバージョンってことか。なるほど。結構簡単だし、それにしようかな。


「うん、じゃあ今回はそれにするよ。ありがとうシルビア」

「いえ。あの、それでですね……一緒に、糸を買いに行きませんか?」

「買い物?もちろんいいよ」

「っ!嬉しいです」


あぁなんて嬉しそうな笑顔なんだ。可愛い、ひたすらに可愛い。


「あ、あの!わ、私も行っていいですか?」

「え?私は構わないけど、ラルは特に買いたいものないでしょ?」

「えっと、確かにそうなのですが……わ、私はその……」

「……ハーヴェかアルにプレゼントするの?」

「え……あぁそうです。二人にプレゼントしたくて」


そっか。確かに、せっかくならみんなの分を作るのもいいかもな。

となると、ルヴィーのは特別にしたいから別のを考えた方が良さそうだな。なにがいいかなぁ……


(せっかくトレーフル様と二人でお買い物できると思ったのに)

(レーフ姉様と二人っきりでなんて許しません!)


私の知らないところで、二人がそんなことを思って、そしていがみ合っていることを私は知らなかった。


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