373話:長2
「お前さん、あの梟を倒したのか?」
「えぇ……なので今回、リーベ様からご依頼を……」
ちらりとリーベ様を見れば。軽く首を傾げた。
そして、一目見れば強さの度合いはわかるだろうと言いたげな目をしている。
つまり、説明していないと言うことだ。
ならさっきの発言も仕方ないだろう。彼らは、私がサヴァーイアを倒したのを知らなかったのだから。
「本当に……サヴァーイアを……」
「はい。えっと……まぁ信じられないのも仕方がないかと思います。そうですね……これで証明になるかわかりませんが、何か魔法を展開してください」
「魔法を?」
「はい」
私がそうお願いすると、エルフの長は疑いの目をしながらも、魔法を展開する。
だけどそれはすぐに砕けて消えた。
驚きで目を見開く彼に、私を笑みを浮かべる。
もう一度と魔法を展開させるが、またその魔法は消えてしまった。
「まさかそれは……」
「はい、アンチマジックです」
「バカな!ドラゴンしか使えぬ魔法だぞ!人間如きが使えるはずが!」
「使えますよ。実際、この前魔塔で文面に書き記したので、今後使える人が増えるかと思います」
「魔塔、だと……」
奥歯を噛み締め顔歪ませるのを見て、なんだか随分と魔塔に恨みを持っているようだなって思った。
ふむ、エルフに魔塔か……もしかして、ルークスさんと何か関係があるのだろうか。
「お前さん、すごいな。随分と魔法の才能に恵まれている!」
「あ、ありがとうございます」
「だが、オルカーネットは魔法が効かねぇ。物理攻撃じゃねーと傷をつけられね。それも、ただの武器じゃだめだ。あいつは再生速度が速いからな」
「はい、知っています」
「だからこそ!俺たちが武器をつくってやる。どんなのがいい。そもそも武器は使えるのか」
「はい、剣術を。それと、武器はあるので作ってくださるなら防具の方がありがたいです」
私は空間魔法を使って愛剣を取り出した。
白く美しいその剣に、ドワーフの長は立ち上がり信じられないと言う顔をしながら、ゆっくりと手を伸ばしていた。
「こいつは驚いた……ラティメーヴルの骨で作った剣じゃねーか……」
「さすがです、一目でわかるんですね」
「なんてこった!こんなもん、普通のやつじゃあ使えねぇーぞ……どうやって手に入れた!!」
「フォルティトゥドーというドワーフさんが作ったものをいただきました。」
「なっ!フォルティトゥドーだと!?懐かしい名前だ、元気にしてるのか!?」
「はい。気難しくて有名のようです」
「相変わらずだなあいつは。そうか……あいつが作ったやつか……なら、生半可な防具は作れねーな」
「では……」
「おう、任せておけ。嬢ちゃんが死なねーようにいいもん作ってやるよ。要望があればいいな、しっかり取り入れてやる」
「ありがとうございます!」
ドワーフの長さんは随分といい人だ。いや、フォルティトゥドー様の名前を出したからこそだろうか。何はともあれよかったよかった。
「そういえば自己紹介してなかったな。俺はドワーフの長、ティブルティーだ。よろしくな嬢ちゃん」
「よろしくお願いします、ティブルティー様」
「ほら、おめーも自己紹介しろ」
未だ俯きながら、私がアンチマジックを使ったことが信じられないと言うように怪訝そうな顔をするエルフ長。だが、軽く咳払いをした後、背筋を正し、紳士的に挨拶をしてきた。
「エルフの長、シルフィーニアという」
「よろしくお願いします。シルフィーニア様」
「うむ、挨拶は済んだようじゃな」
話が一通りまとまると、横になっていたリーベが体を起こし、大きなあくびを一つする。
「ではトレーフル。話は終わった、稽古に戻って良いぞ」
「あ、はい。そうだ、こちらどうぞ」
私は空間魔法を使用して、中から数本のワインを取り出した。
フォルティトゥドー様も贔屓にしている、カルシスト家の赤ワインと白ワインだ。
「おー、酒か!」
「私の婚約者の領土で作っているものです。ぜひ召し上がってください」
「あぁ、いただく!ワインは久しぶりだからな」
「それではみなさま、お先に失礼します」