359話:招待の理由1
簡単なお願い事をするように、リーベ様は私にそんなことを言ってきた。
この国にいる七魔獣王といえば確か……
「エメラパゴの討伐、ですか?」
七魔獣王の1体。【森の王_エメラパゴ】は大きな亀の姿をした魔獣だと言われている。100年に1度訪れる捕食期間に目を覚まし、目の前のものを食らいつくし、お腹が満たされると再び100年の眠りにつく。
最後に確認されたのがここ、アラクランだと書物には書かれていた。
「よく知っておるな。だが、お主に討伐して欲しいのは亀ではなく、シャチだ」
「シャチ?シャチというと……」
リーベ様は、テーブルに並べられているお菓子のうち、いろいろな形と色をしたクッキーを取り出し、私に説明をしてきた。
王都から北に行った領土にエルフとドワーフの領土がそれぞれ存在する。
その二つの領土の中央には大きな泉があり、そこにはもともとたくさんの精霊や魔力の高い、神獣に近い生き物たちが住んでいたそうだ。
しかし数年前に、人知れずそこに七魔獣王の1体。【泉の王_オルカーネット】が住み着いたそうだ。
「奴はそこに住む精霊や生き物たちを片っ端から食らっている」
「確か、オルカーネットの主食は……」
「精霊と人間だ。精霊を食い尽くしたあやつは、特殊な音波を使って、魔力の弱い人間を引き寄せて食らう」
すでに数名犠牲者が出ているそうだ。それに、精霊の存在はエルフやドワーフにとっては親和性の高い存在。これ以上オルカーネットがあそこに住み続けては、エルフやドワーフに大きな影響が出てしまうらしい。
「ちょうどその時、お主がサヴァーイアを倒したと耳にしてな。協力を仰ごうと思った」
「リーベ様が倒すことはできないのですか」
「わらわをかいかぶっておるようだが、わらわが得意とするのは精神操作系の魔法。物理攻撃は全くダメだ」
そうだ。よくよく考えれば、この人はその精神操作の魔法だけで多くの国を滅ぼした。物理的な支配ではなく、毒のようにじわじわと支配していく。
「協力をしてくれるのであれば、わらわが持っているありとあらゆる情報をぬしに与えよう」
「……少し考える時間をいただけませんか。私は、その事実を知らないでこの国に来たので」
「よかろう。だが、なるべく早く答えを出して欲しい。わらわも、早くこの問題は解決したいのだ」