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34話:神獣の加護(め)1

「さて、流石にそろそろ帰らないと国中がおお騒ぎになるかな」


約30分ぐらいの滞在を得て、私たちは帰宅することにした。

というのも、ラルエリナがそろそろ眠りそうなのだ。その前に、運べる体制にならないと。


「ラルエリナ嬢、私の背中に乗って」

「んっ……ぇ、あ、いや」

「大丈夫大丈夫。しっかり鍛えてるから、ちゃんと送り届けるよ。ラルエリナ嬢は私の背中で寝てて」

「……わかり、ました」


少しだけ体勢を低くし、背中に重みを感じ、しっかりと固定されたことを感じると体を起こす。

私の背中を心地よく感じ取ってくれたのか、ラルエリナはすぐに眠ってしまった。

私は、彼女をおんぶしたまま精霊に導かれて、事前にアモル様に用意していただいた入り口に向かう。

意外と近くに道を作ってくださっており、すぐに辿り着けた。


「精霊さん、ありがとう」

「マタネー」

「バイバーイ」


精霊達に見送られ、私は入口を通って、また神獣様たちの世界に足を踏み入れた。


「あ、トレーフルちゃんお帰りー」


抜けた先、アモル様とロワヨテ様の姿があった。

なんていうか、雰囲気的にはついさっきまで私がいたような感じだった。


「あ、もしかして探してた子って背中にいる子?見つかってよかったねー」


体を少しだけ屈めながら、ロワヨテ様は私の背中にいるラルエリナの顔を覗き込んだ。

ここに来る前から眠ってはいたけど、当然ながら起きる様子はない。


「うん。薄いけど、紫の綺麗な髪だね。俺の好きな色だー」

「アモル様、お世話になりました」

「気にするな。また必要になれば声をかけろ」

「はい。あ、もうすぐ夏になるのでまたトマトを送りますね」

「あぁ、子たちも喜ぶ」

「ねぇ、トレーフルちゃん。ちょっと提案なんだけどいいかな?」


背中にいるラルエリナを見つめていたロワヨテ様が、私に声をけてこられた。

提案というのがなんなのか分からず私はなんでしょうかと尋ねる。


「この子に俺の加護をあげたいんだ。流石にここで眠ってる子と契約はできないけど、加護はあげられるからね」

「加護ですか?」

「そう。俺の加護は【千里眼】って言ってね、遠くのものが見えるんだ」


有名なやつだ。漫画とかアニメでよくある。

加護をもらうのはありがたいけど、ロワヨテ様で2人目。そんなにポンポンもらってもいいのだろうか?


「もちろん気軽じゃないよ。俺が、君とその子を気にいったからだよ」

「ラルエリナ嬢をですか?」

「うん。なんていうか、似てるんだ。昔、俺が友達になった人間の女の子に。その子も、気が強くて、でも子供っぽくてね。後、髪色も同じだった」


懐かしむように過去を思い出し、そして目の前にかつての友がいるような眼差しでロワヨテ様はラルエリナを見つめた。

千里眼……アルの時と同じで勝手に承諾して、後で後悔するかもしれないけど……でも、二人にとってこの加護はきっと将来必要になってくるかもしれない。


「わかりました。ラルエリナ嬢には私から説明いたします」

「うん。そこは任せるよ」


ロワヨテ様は嘴を軽くラルエリナの頭に置かれると、その間に赤みがかった紫色の魔法陣が展開された。

しばらくすればそれは消えた。


「終わったよ」

「ありがとうございます。……あの、三つほどお聞きしたいことがあるのですが、よろしいのでしょうか?」


私は視線をアモル様に向けて、彼に尋ねた。

ロワヨテ様が言われていた言葉や、これまでのことを思い返し、疑問に思ったことがあった。

アモル様は「なんだ」と言われた。つまり、答えてくれるということだ。


まず、一つ目の疑問。

先ほどロワヨテ様は”ここで眠ってる子と契約はできない”と言われていた。ウェールス様の時は、私と契約を結ぼうとされたが、それができないからアルに加護を与えてくださった。だけど、そもそもこの契約には条件があるのではないかと思った。

それに対してロワヨテ様が「鋭いね」なんて言われていたけど、説明はアモル様がしてくださった。


「確かに、我々神獣と友になる。つまり、契約を結べる人間は限られている。我らと友になれる条件は、ここで眠ることがない人間だ」

「つまり、転生者のみということですか?」

「いや、ここで眠らずにいるのは絶対に転生者というわけではない」

「そうそう。普通の人間でも、ここで眠らずにいたって子もいたしね」


そして、それにプラスして神獣に気に入られ、お互いの同意のもとでこの契約は成立する。

神獣が気に入らなかったり、人間側が拒めば成立はしない。とのことだった。

だから、眠っているアルやラルエリナと契約を結ぶことはできなかったとのことだ。

次に二つ目の質問。というか、二つ目と三つ目は似た質問内容になる。


「与えられる加護は、すべて目に関わるものでしょうか?」

「そうだな。加護は、我ら神獣の神眼の一部の能力を与えるというものだ」


ウェールス様の真実の目。これは、加護になることで嘘をついた人間の体から黒い靄が出るのが視えるようになる。

ロワヨテ様の千里眼は、加護になることで5〜10㎞のものを視覚できるようになるそうだ。

他の神獣にもそれぞれ特別な神眼があるらしいが、それは今後の楽しみにするといよう。


「最後ですが、アモル様も神眼があるのですか?もしかして、知らないうちに私も?」

「いや、お前には与えてない。欲しいか?」

「あ、えっと。望めばもらえるものですか?」

「構わん。お前にはあまり必要ないと思っていただけだ」


体を起こし、首を伸ばして、彼の口が私に触れる。瞬間、白い魔法陣が展開され、目がなんだか暖かかった。まるで、そう……ホットアイマスクをつけたような、そんなあったかさ。

しばらくすれば、アモル様は指定の位置に戻られた。

特に変わった感じはないけど……あ、そういえばなんの力か聞く前にもらっちゃった!?だ、大丈夫な力だよね……


「あの、私はアモル様からなんの目をもらったのでしょう?」

「我から主に与えた目は、【知識の目】だ」


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