25話:満月の日1
「まぁそんな感じかな」
その日、私はシルビアの家で二人っきりのお茶会をしていた。
テーブルに置かれたお菓子の上には、精霊たちも腰掛けており、彼らもまたお菓子をほうばっていた。
話題は先日の稽古のこと。本当に悔しかったことをわかって欲しかったが、シルビアはなぜか絶望的な顔をしていた。
「シルビア?」
「そんな……私だってトレーフル様にキ、キスなんてされたことないのに……」
「いやしないでしょ普通。女の子同士だし、ルヴィーもいるし」
「別に私は、トレーフル様なら構いません!それに、殿下から、浮気するならトレーフル様にしてくれと言われています」
「おい」
なんてことを話してるんだこの二人は。
あれから、二人の仲はさらに良くなり、私がいなくても問題ないほどになった。月に一度。いや、週に1度のペースで二人はお茶会をし、親交を深めていた。
仲を取り持った者として嬉しい限りだ。
「でも、結果としてへーリオス様には剣を教えていただけなかったのですね」
「あぁいや、実はどんな結果であれ勝ったことには変わりはないからって、今度カルシスト家に行くことになったんだ」
「まぁ、それは良かったですね」
「うん。楽しみだな、へーリオス様。お会いしたのはずっと昔だから、全然覚えてないんだよね」
会ったのは記憶を取り戻す前。それこそ生まれて間もない頃だった。
父の初めての子供ということで、お祝いでうちに来てくださったらしい。
記憶が曖昧で、あまりはっきりとは覚えてない。まぁすぐに会えるしいいかな。
「あ、それとね。その日は泊まる事になってるの」
「え、お泊まりですか!?」
「うん。早朝の訓練もぜひ参加したくて」
「あぁ……そうなんですね」
早朝の訓練かぁ。私はやったことがないからなぁ……早起きは苦手だけど、うん、頑張ろう!
「あ、シルビアも来る?」
「え、私もですか?」
「うん。どうかな」
「あぁ……いえ、私は遠慮しておきます」
「そう?」
シルビアが来てくれたら、同じ部屋に泊まって、同じベッドで寝て、楽しく女子トークできると思ったのに。
……はっ!いかんいかん。これでは本当にシルビアと浮気してるみたいだ。例えルヴィーが良しとしていてもこれはダメだ。
「じゃあ今度さ、うちに来ない?」
「はい、行きます」
「即答だね」
いつものように、たわいもない話が続く。
私が男装して出席したお茶会を最後に、私とシルビア、アルはそういう集まりには参加しなかった。
理由は単純に精霊師と神獣の加護を隠すためだ。
私たちが無事に成人するまでは、このことは公にされないため、他の人との接触もなるべく避けるようにしている。
そのため、限られた相手としか会わない。お茶会で仲良くなった子にも会いたいけど、こればかりは仕方がない。
「そういえばご存知ですか?トレーフル様がカルシスト家に行く日は、ちょうど満月なんですよ」
「へーそうなんだ」
「はい。私、いつもすぐに寝てしまうので、叶うことなら満月を見ながらお茶をしたいです」
「シルビアは規則正しい生活してそうだもんね」
前世では仕事で夜更かしなんて当たり前だったけど、今では21時ぐらいに眠るのが習慣化している。(日によっては19時とかに寝るけど)
「大きくなったら、一緒にしようよ」
「是非。夜のお茶会なんてワクワクしますね」
クスリと笑うシルビアは本当に可愛くて、気持ちがスッと穏やかになる。
このまま平和に時間が進めばいいな。みんなが幸せになる未来。
私も貴女も、バッドエンドが訪れないように。




