196話:剣舞祭4(シルビア視点)
剣舞祭が開催されて、いよいよ私の番。
ルヴィー様もミセリア様も2回戦に進まれた。絶対にトレーフル様も2回戦には進まれるから、私がここで負けるわけにはいきません。
《1回戦第四試合!東、1年シルビア・ガーデンハルク》
名前を呼ばれ、入り口を潜って会場に足を進める。
その瞬間、会場を揺らすほどの歓声が上がる。私は今からここで魔法を披露するんですね。少し、緊張します!
「姉―さまー!!」
歓声の中、わずかにノアの声が聞こえて会場中をキョロキョロする。そして、貴族たち様に用意された席で、ノアが大きく手を振り、その後ろにお母様とお父様の姿があった。
忙しいでしょうに、わざわざ見に来てくださるなんて……。
思わず涙が出そうになりましたが、泣いている場合ではありません。
叶うことならトレーフル様と戦いたい。そのためにはまず、目の前の試合から。
《1回戦第四試合!西、4年レドネスク・エルツェール》
向かい側、私の対戦相手である先輩、レドネスク・エルツェール様が会場へとやってきた。
最高学年であり、4年生の中では3本の指にはいるほどの実力者と聞いている。
水魔法……私は、とても運がいい様です。
「初めまして、シルビア様。まさか貴女と手合わせできるとは」
「私こそ、先輩ほどの実力者と手合わせできて光栄です」
「それはそれは光栄です」
「しかし、申し訳ありません」
先輩には申し訳ないですが、この試合は私が勝つことになるでしょう。
理由は簡単。相手は水魔法の使い手。そして私は、幼い頃から水魔法を使う方と共に暮らしてきたのですから。
「私はこの試合に負けることはありませんの」
《1回戦第四試合!試合開始!》
水魔法と相性がいいのは雷魔法であることは常識。それは最高学年であるエルツェール様もご存知。対策はされていることでしょうから、私は別の形でアプローチ。
トレーフル様は常に、多くの可能性を考えている。当たり前の相性とは別に、どういう形でその魔法を打ち下すことができるのかを考えていらしゃった。
彼の方のそばにいると、本当に魔法に関しては多くのことを学ぶことができる。
だからこそ、私にとってこの場所はあの方に学んだことを披露する場。だから先輩、申し訳ありません、貴方にはその相手になっていただきますね。
《……あっ!一回戦第四試合。勝者、シルビア・ガーデンハルク》
私の勝利宣言と共に、会場がまた震える。
無事に先輩に勝つことができ、私は第二回戦に進むことができた。
360°の会場。全てに一礼をし、最後に国王陛下に挨拶をして顔を上げた。
「っ!」
だけど、私は見てしまった。いや、見えてしまった。
フォルティトゥドー様に与えられた【具現の目】。
人も物も関係なく、見えないものを見る目。魔法で隠しても、この目の前では無意味とされている。
この目は今まで一度も使用していなかった。使用する機会がなかったからだ。今回も使うつもりはなかったが、無意識に目を使ってしまった。
それは、反射的でした。
国王陛下の後ろにいる男性。見た目は人だが、人ではなかった。
《ガーデンハルク様》
「え?あ、はい!」
《そろそろ次の試合を開始するので、控え室にお戻りください》
「あ、はい。申し訳ありません」
慌てて、改めて一礼をして足早に会場を後にした。
よく見れば、あの男性以外にもところどころに似た様な人たちがたくさんいた。
どうなってるんだろう……もしかして、何かよくないことが起きようとしているのだろうか。
《それでは、気を取り直して第一回戦第五試合を開始します!》