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19話:友の共有1

神獣の住む世界から帰還して数週間が経った。

私が目を覚ました時、両親は随分と心配していた。もちろん、あの時周りにいた使用人達も。

私は慌てて両親に彼らは悪くないから辞めさせないで欲しいことを伝えた。彼らは反応は遅くなったが、私たちを助けようと駆け出してくれていたことはちゃんと見えていた。助けようとしなかったわけではないからと、私は泣きながら両親に訴えかけた。

それは、両親もわかっていたようで使用人達はお咎めなしだった。相手は神獣。死人が出ていてもおかしくない出来事だったと。だからこそ、私やアルが無事に戻ってきてホッとしたと伝えてくださった。

アルが目を覚ましたのはそれから数日後。

目を覚ましたアルを抱きしめ、何度も謝った。巻き込んでごめんねって。でもこの子は、笑って「姉様が無事でよかったです」なんていうものだから、嬉しさと申し訳なさで涙がドバドバ溢れ出てきた。


両親とアル。後はそれぞれの専属メイドや騎士を交えて何があったのかを話した。

神獣ホワイトドラゴンことアモル様が、私が子供を誘拐したと勘違いされたが、和解したこと。そして、話をしている中で彼が私を友と認めてくださり、契約を交わしたこと。

そして、もう一人の神獣であるケルピーのウェールス様が私への友好の証、アモル様の行動の謝罪の意味を込めて、アルに真偽を見抜く目を与えたことを伝えた。

子供二人が、神獣様から祝福を受けたことに驚き、両親は神へ感謝の言葉を述べていた。

良いことだとは思うけど、もしかしたらアルにとっはいいことではないと思ったが、案外嬉しそうにしていた。しかも、まだ一桁の子供だというのに「嘘を見抜けると政治に有利ですね!」なんていうのよ。この歳で随分しっかりした子になって姉として嬉しい限りよ。

かくして、私たちはまた平穏な日常を迎えることとなった。まぁ私の場合は、私の世界に新しいお客さんを迎えることになったのだが。


「ア、ニンゲンサンダ」

「ニンゲンサンコンニチハ」


アモル様との契約により、私は精霊が見えるようになった。

小さな小人のような姿をしている精霊達は、思ったよりもいたるところにいて最初に見た時は驚いた。


「こんにちは。今日は何人いるかしら」

「エットネ」

「ミンナ〜オヤツダヨー」


その場にいた二匹の精霊の呼びかけで、近くにいた精霊達が集まってきた。合計およそ10人ほど。うん、想定内だな。


「はい、いつも屋敷のお庭の管理ありがとう」

「ワーイ」

「オカシダー」


精霊がいるところは緑が育つ。

精霊を調べる中でその文面を見つけた。そこで、私は精霊さん達を見ることができるようになって、彼らにお願いをした。それは、アルの庭を含め、屋敷内の緑の場所に住んでもらい、異変があったら伝えてもらうというものだ。

お礼は、大量生産ができる小さめのお菓子。

植物以外にも、水場を好む子もいるので、その子達も好きな水場に住んでもらっている。

私は、アモル様のおかげで彼らを見ることができているので、力を借りて魔法を使うことはできなかった。やっぱり、元々見える人と何かが違うらしい。それでも、彼らとの交流をやめる理由にはならない。

お菓子をあげるかわりに、屋敷の異変報告。

屋敷の異変報告をするかわりに、お菓子をもらう。

私と精霊達との契約だ。


「オイシー」

「アマイノー」

「何か異常はあったりした?」

「ハタケノツチカピカピ」

「オミズヒツヨウ」

「オニワノスミニキノミアッタ」

「アマカッタネー」

「なるほどなるほど」


今この屋敷にどれぐらいの精霊さんが住んでくれているかわからないけど、私が思っている以上に知らないところでいろんな命が世界を見守ってくれているんだなって思った。


「姉様ー」


不意に、アルが私を呼ぶ声が聞こえた。

視線を向ければ、大きく手を振ってこちらにやってくる。


「精霊さんにお菓子ですか?」

「うん。アルも挨拶する?」

「はい」


私の隣に座り込んだアルは、ギュッと私の手を握る。

アモル様からの力の一つで、こうやって私に触れることで、私と視覚を共有し、精霊を認識することができる。

ちなみに精霊は、認識(視覚で捉える)しないと触れることができない。


「こんにちは、精霊さん」

「アタラシイニンゲンサン」

「オニワノニンゲンサン」

「オニワカピカピ」

「あ、そろそろ水やりしないとですね。ありがとうございます」

「トマトプリプリ」

「スッパスッパ」

「あとで切って差し上げますね」

「ヤッター」


アルも、ウェールス様の力を少しづつ自分のものにしていた。

とは言っても、今の彼にできる範囲はかなり狭いため、本当にくだらないことでしか使えてない。

例えば、出された食事に嫌いなものが入っていないかコックに確認して真偽を確かめるとか、そういう小さなこと。


「それじゃあ私たちは失礼しますね。お菓子は日暮れにまた持ってきます」

「ワカッター」

「バイバーイ」


小さく手を振る姿はなんとも可愛らしい。前世のとあるアニメ作品に出てくるキャラみたい。カップの中に入れたい。


「それじゃあ僕は庭の方に行きます。姉様は稽古ですか?」

「うん。まだまだジルクには勝てないよ」

「大丈夫です。姉様なら勝てますよ!」

「だといいな。それじゃあ、怪我しないようにね」

「はい!!」


無邪気な笑みを浮かべながら、私に大きく手を振り去っていくアル。

あの日のことがトラウマになったんじゃないかと思ったけど、私が思ってるよりも強い子のようで、普段通り笑っていた。


「よし、着替えて稽古稽古!!」


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