185話:夏休み最終日
ついに夏休みも今日が最終日。明日からはまた学園生活が始まる。
本当にあっという間の日々だった。
別荘の使用人たちにお別れの挨拶をし、私たちは領地を後にする。
帰り道、私たちが帰ることを聞きつけた領民たちが見送りをしてくれた。
私とハーヴェはそんな領民たちに手を振りながら学園へと向かった。
行きと同じように馬車に防御魔法をかけ、運転はアニーとエリオットが交代でやってくれた。
帰りは、特にお互いの屋敷によることもなく、まっすぐ学園に帰ることになってる。
一応両親には、お土産としてワインとジャムとジュースを送っている。
冷えた状態で飲んで欲しいので、氷魔法を使って保冷した状態で。
帰り道は特に賊や魔物や魔獣に襲われることもなく、無事に学園まで帰ることができた。
馬車の中で私はほとんど寝てしまっていて、気がついた学園についていた。
「それではトレーフル様。自分はここで」
「僕も先輩と一緒に寮に戻るよ」
「うん。エリオット、運転ありがとう」
「いえ。それではトレーフル様、失礼します」
「またね、トレーフル」
エリオットは一礼し、ハーヴェは私を抱き寄せて頬に口付けをした。
ハーヴェの行動にはすっかり慣れてしまい、笑みを浮かべる彼に私も笑みを返した。
寮にはすでにアンジュとシルビアも帰ってきており、二人と二人の使用人にお土産に領地のジュースとワイン、ジャムを渡してあげた。
「あ、そうですトレーフル様。頼まれていた新作の表紙ですが、完成しました」
明日から学校が始まるが、いろいろと話したいこともあり、私たちは就寝時間まで部屋でおしゃべりをした。
そこで、アンジュがお願いしていた表紙のデザインを見せてくれた。
「わぁー」
「アンジュ様、とっても素敵です」
「ありがとうございます。何度も描き直したんですが、これが一番トレーフル様の描く世界観に合うと思って」
「うん。私の思い描いているものまんまだよ。ありがとうアンジュ」
アンジュに頼んで良かったと思えるほどにいい出来だ。
なにより、この表紙を目にして物語に対する期待が高まる。むしろ私が内容に不安を抱いてしまいそうになるほどに。
「アニー、明日カルディナ夫人にこれを渡してきてくれる?」
「かしこまりました」
「さて、明日も早いですし、今日はお開きしましょうか」
「そうですね。それではトレーフル様、失礼します」
「おやすみなさい、トレーフル様」
「うん、二人ともおやすみ」
楽しい時間はあっという間。
さっきまで賑やかだった部屋が一気に静寂に包まれてしまった。
少しばかり寂しさを感じながらも、私は明日のためにそのまま眠りについた。