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18話:神聖なる神獣の世界3

海面から飛び上がったのは、青緑色のケルピーだった。

高く飛び上がったケルピーはそのまま激しい水しぶきと波を発生させ。水中に潜っていった。

私もアモル様も水浸し。アルはなんとかかばうことができて無事。そばにいた子供のドラゴンも水浸しになって、犬のように体をブルブルさせて水を飛ばしていた。


「ごきげんよう、アモル」


しばらくすれば海面からショッこりと馬頭が顔を出し、アモル様に挨拶をしていた。親しそうに声をかけているが、彼もまた神獣だろうか?


「貴様、嫌がらせも大概にしろよ……」

「あら、子供が一人いないと頭に血がのぼってるって聞いたから、私が冷やしてあげようと思ってわざわざ来てあげたのに」

「だからといって、やり方が横暴だ!」


なんだか言い争ってるようだけど、こっちはこっちで水かぶって風邪をひきそうだったので、風と火の魔法を応用して、温風を生み出して体を乾かした。この空間で魔法が使えるか心配だったけど、使えてよかった。

ある程度乾いたら、隣で興味深そうにしている子供ドラゴンにも温風を浴びせた。随分満足そうな顔をしている。可愛いなぁ……


「あら?どうしてこんなところに人間の子供が?しかも普通に起きてるじゃない」

「我の友だ」

「友ぉ?人間嫌いのあんたが?あはははは!!なにその冗談面白い!」


大笑いするケルピー。すぐにアモル様から私に視線が向けられ、ニヤリと笑って、どうしてここにいるのか尋ねられた。

私はアモル様の方を見るけど、彼は顔を背けられていた。

いっていいのかわからなかったけど、この人もまた神獣様なわけで、隠し事は良くないと思って素直に全部話した。

結果、大笑いされた。私、というよりはアモル様に対してだけど。


「全くとんだ勘違い野郎ね。大体、人間がどうやってこっちから子供連れ去るのよ。根本的にそこが間違いなのよ」

「黙れ魚類。喰われたいのか?」

「自分の立場が悪くなったらすぐそいうこというの良くないと思うわ。あぁごめんなさい。小さな人間さん。自己紹介してなかったわね」


アモル様を軽くあしらいながら、馬の頭が陸地のすぐそばまでやって来た。

確かに馬だけど、なんていうか綺麗な馬って感じだった。


「私はウェールス。よろしくね、人間さん」

「あ、はい。トレーフル・グリーンライトと申します」

「あらいい子ね。あれが迷惑かけてごめんなさいね」


なんともフレンドリーな神獣様だろうか。人間でも滅多にいないタイプだ。

にしても、ケルピーといえば水辺で、馬や好みの異性になって、水の中で溺死させて食べるって言われてるけど、もしかしてこんなにもフレンドリーなのは私やアルを食べるためじゃ……。


「ん?どうかしたの?」

「た、食べたりしませんか?」


恐る恐る尋ねれば、またしても大笑いされてしまった。よく笑う方だな……

話を聞くところによれば、ウェールス様は無闇に食べたりしないらしい。食べる相手は選んでるとか。まぁ、結局食べるんだということは置いといて。


「私はね、人の真偽がわかるの。相手が嘘を言っているのか、真実を言っているのか。私が食べる相手は、嘘つき。悪い人だけよ」

「じゃあ一般的に言われてるケルピーは……」

「私の子ではあるけど、何代か先の子ね。多分その子は真偽関係なく、味をしめたって感じね。それが原因で、一部では邪神扱いされてるのよ。やになるわ」


ぶるるとうまっぽい声を上げているが、おそらくため息だろう。

なんというか、神獣様も大変だ。


「ん?ということは、私たちの方にいるドラゴンやケルピーはお二人の血族ってことですか?」

「えぇ。とは言っても、私たちみたいに神の力はもう無いわ。神聖されても、私たちほどでは無いの。あくまで子供扱いね」

「なるほど……ケルピーの習慣の変化や、ドラゴンの種類が増えたのも、子が子を生む過程でってことなんですね」

「そうそう。賢い子ね」

「お前にも見えているだろう。トレーフルには、別世界の記憶がある」

「まぁ転生者。久しぶりに見るわね」


なんとも不思議な光景だ。ドラゴンだけならまだしも、私は今ケルピーとも話してるのか。すげーな今世。


「折角だし、私とも友達になる?」

「え?」

「やめろ。二匹の神獣と契約したらどうなるか」

「そうね。」

「どう、なるんですか」

「体が爆発する」


とんでもないことを満面の笑顔で言われた。

え!二人と友達になると体とぶの!?あぶな!


「そうなのよ。友達の証って、加護みたいなものだからね。あまりかけすぎると体が絶えられないの」

「なんていうか、不便ですね。友達になりたくても、友達になれないなんて」

「そうね。でも、証がなくても私と友達になってくれる?」

「私なんかでよければ是非」

「ふふ、ありがとう。お礼に、その子に加護をかけてあげる」


ウェールス様は、視線を私のそばで眠るアルに向ける。

私の代わりに証をってことだろうかと思ったが違うらしく、ウェールス様が持つ真偽を見抜く目をアルに与えるそうだ。


「全く同じってわけじゃなくてね。相手が嘘をつくと体に黒い靄がかかるって感じね。悪意に応じて靄の量が増えるから、わからないことがあればアモルを通して教えてあげる」

「よろしいのですか?」

「えぇ。トレーフルちゃんのことは気に入ったからね。それに、アモルが迷惑をかけたお詫びでもあるわ」


水場から、数個の水の玉が浮かび上がり、その玉はゆっくりとアルに近くと優しく包み込み、そのまま体に浸透した。


「常に発動するのもアレだから、彼が見たいと思ったら見えるようにしてるから」

「わかりました、アルに伝えます」

「……トレーフル、空間が治ったようだ。主らを元の場所に返そう」


ここに来てどれだけ経ったのだろう。長かったような、あっという間だったような。やっと家に帰ることができる喜びもあるけど、お二人と仲良くなったことでここを離れるのもちょっと寂しく感じてしまう。

どうもその気持ちにアモル様も気づかれたようで、私が望めば道が開くようにすると言ってくださった。ただ、入れるのは私だけらしいけど。

目の前の空間が、まるでチャックが開くように上から下に向かって穴が開いた。


「迷惑をかけたな、トレーフル」

「いえ!そんなことはありません。私にとっては、身に余る体験をお礼にいただきましたから」

「機会があれば、他の神獣も紹介するからまた遊びにおいでね」

「はい!それじゃあ、失礼します。アモル様、ウェールス様」


アルを背負い、深々と頭を下げた私は穴の中に入っていった。切なげな子供ドラゴンの声が聞こえたが、振り返ることなく奥へと進んでいく。





それからしばらくして、私はベッドの上で目を覚ました。

泣きじゃくるアニー。そばにいたジルクも涙目だった。

話を聞けば、私とアルは屋敷の正門前にある大きな噴水の淵に、体を寄せ合いながら眠っているところを発見されたらしい。

どうして庭じゃなかったのかはわからなかったけど、ちょうど警備の巡回ルートだったため、すぐに見つかったそうだ。


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