表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/486

175話:無関心

馬車を出てしばらくは、私もハーヴェも無言だった。

私はただ、気持ちが若干無気力だったから。ハーヴェは多分私を気遣って黙っていたのかもしれない。だから、私が口を開かないとハーヴェも会話を始めないかもしれない。


「別の言い方って、あったと思う?」

「……いや。少なくとも、僕はあれは正解だと思う。何を言っても、多分あの人はわかってくれないと思うし」

「そう、だよね……」


何度も何度も、私が否定しても彼はずっと自分に都合のいい解釈をした。

いや、根本から考えよう。

どうすれば、そもそもあぁならずに済んだのか。

どうすれば……


「……ねぇハーヴェ。人が最も傷つくことってなんだと思う」

「え?んー……嫌われること?後は、大事な人が傷つくとか」

「そうだね。まぁ今回の場合大事な人が傷つくって言うのは別の枠組みとして、嫌われたり、怒られたり、そういうのはまだ相手に関心があるからいいことだと思うの」


構ってくれるならどんなことでもいい。怒られても、嫌われても。

そういう、ちょっと違う思考の人はたくさんいる。

だからこそ、私の中で人が一番傷つくことは……


「私は、「無関心」ってもっとも苦しくて辛くて絶望的なことだと思うの」

「……そっか」


ハーヴェは、それ以上何も聞かなかった。

私がどうしてそんなことを聞いたのか、何をしようとしているのか。

それ以降その話題は口にしなかった。

領地で何しようか、何食べようか。ハーヴェのおすすめの場所に行ってみたい、せっかくならワインを飲んでみたいとか、そう言うたわいもない話。

せっかくの二人でのお泊まりだから、今は余計なことを考えたくなかった。

領地へは数日かかるが、馬車は魔法を使って自動運転をしている。

同時に、防護魔法をかけているため、攻撃を受けても特に変わらず馬車は走り続ける。

交代で睡眠をとりながら、目的の領地まで馬車を走らせた。


「わぁ、すごい。あれ、全部葡萄畑?」


領地に入ったようで、窓の外には一面に広がる葡萄畑が広がっている。

奥には大きな建物があり、ハーヴェにあれが何か尋ねれば、ワインを作る施設だそうだ。他にもいくつか大きな建物があるが、それぞれの場所でジュースやジャムが作られているそうだ。

カルシスト家は騎士家系で有名だけど、一部ではここで作られるワインは一目置かれている。お父様も、ここのワインは好んでよく飲んでいる。


「楽しそうだね、レーフ。僕より葡萄の方が好きかい?」

「え?いや、ジャンルが違うって言うか……」

「あはは、冗談だよ。そろそろ別荘に着くよ。楽しいのはわかるけど、馬車が揺れるかもしれないから、ちゃんと座って」


と言いながら、向かいの席から自然と私の隣に座ったハーヴェ。

まぁ、別にいっか。本当の意味での二人っきりは、もう後少しなのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ