表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/486

171話:不愉快

午前の授業が終わり、午後は実習となった。

ルヴィーとシルビアは、後継者としての追加勉強があるためお城に向かった。今日は寮に帰ってこないそうだ。

アンジュとキリクは薬学の勉強で今日は門限まで実験室に篭るそうだ。

私は一人となったが、たまたまミセリアを見つけたので一緒に新しい魔法の勉強をしようと誘い、今は図書室に向かっているところだ。


「トレーフル、大丈夫?」

「ん?なにが?」

「いや、最近南の王子に付き纏われてるって……」

「あぁ……うん。まぁ後数日の辛抱だから」


私がクロイツ殿下に付き纏われているのは、魔法科では有名だ。騎士科の方にも話は届いているようで、最近たまたま会ったウエンディー様にも心配された。

騎士科の女性の全員が彼に声をかけられたらしく、しかし全員がそれを断っている。なびきそうになる女性もいたり、遊びならと付き合う人もいるそうだが、本気になる人は一人としていなかったとか。

騎士科の女性には見かけたらちょっとお話しするぐらいで、私のような執着は見せないらしい。いい加減、私にも飽きて欲しいものだ。


「トレーフルちゃーん!」


そんなことを考えていれば、聞き覚えのある声が聞こえた。

足を止めて振り返ってみると、件の彼が笑みを浮かべて私たちに近づいてくる。

そばにあの従者の姿はない。騎士科がこっちに来ることなんてないし、ましてや図書室に来るなんてことはない。

きっと、生徒たちに私の居場所を聞き出したのだろう。


「ごきげんよう、クロイツ殿下」

「いいっていいって。ねぇねぇ、今暇?だったら一緒にご飯食べない?」

「いえ、今から図書室に行くので結構です」

「えー図書室行くの?勉強?だったら尚更ご飯は食べないと。お腹満たした方が、集中できるよ」

「結構です。それに、食事を摂ると眠くなるので」

「え、なにそれ可愛い。赤ちゃんみたいだね」

「……とにかく、結構なので」

「もう素直じゃないなー。まぁそんなところもいいんだけどね」


何を言っても聞く耳を持とうとしない。

嫌だと言っても、それを照れ隠しと思われるのが不愉快でたまらない。

大体、そばにミセリアがいるのにいないもののように扱ってるのも不快だ。

さっさとここから離れたい。


「トレーフルちゃんは冷たいな。大体いいの?一応俺王子様だよ?そんな扱いしたら、国同士の問題に発展しちゃうよ?」


私の手首を掴み、そんな脅し言葉を口にする。

本気で言ってるのか悪ふざけで言ってるのかわからないが、言っていいことと悪いことがある。

大体、私にこうやって執着することに対しては国際問題にならないって思ってるってこと?は?何それムカつくんだけど。


「だからさ、お互いの国のために俺のご機嫌は取らないとでしょ?」

「っ!いい加減に!」

「あの!や、やめてください!」


その時、ミセリアが間に割って入って私を庇ってくれた。

男の子にしては小さな体。筋肉もない、見た目通りのか弱い彼。

わずかに体を震わせながらも、腕を大きく広げて私を庇ってくれている?


「え?何君?というかいたの?」

「トレーフルに酷いことしないでください?」

「なに?もしかして君が噂の婚約者?あはは!君みたいなのが?」

「っ!ち、違います!僕は彼女の友人です!」

「友達?じゃあどいてよ。君には関係ないでしょ?……ん?あーなるほど、そういうことか」


虫を払うようにミセリアを追い払おうとしたが、少し考えるそぶりを見せたかと思えば、ニヤリと笑みを浮かべて彼のことを見た。

そして、あははと笑いながら今度は私に視線を向けてきた。


「婚約者以外と結婚しないとか言って、普通に男作ってるじゃん」

「は?」

「やっぱり、婚約者じゃ満足できないんだね。でも、だからってこんな子じゃなくていいじゃん。ね、やっぱり俺にしなよ。俺だったら、女として満足させてあげられるよ」


鳥肌がたった。

この人は、ミセリアを私のそういうものだと思ってるらしい。

しかも、それならミセリアじゃなくて自分をと言い出してきた。

本当に不快な人だ。

私のことならまだしも、ミセリアを馬鹿にした。私の大事な友達を。

なんなのこの人。どうしてそんな発言を簡単にできるの?同じ王子なのに、どうしてこんなにも違うの?

ミセリアだっていい環境で育ったわけじゃない。でも、こんなに酷くなかった。


「だからさ、トレーフルちゃん。そんな俺に冷たくしなくても、俺はちゃーんと受け入れてあげるよ」

「っ!いい加減にしてください!彼女は!」

「あー、はいはい。お前のこともちゃん認知してやるから、ちょっと黙っててくれねーか?」

「だから僕は!」


不快だ。

本当に、どうやったらこの人はこの口を閉じるんだろう。どうやったら私に執着しなくなるかな。

殺してしまったら国際問題になる。でも、そうしないとまたこの人は私に執着してくる。

それなら……それならいっそ……



「トレーフル」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ