168話:警戒
「なっ!南の国の王子にナンパされた!?」
教室前でアンジュと別れ、シルビアと共に教室に入れば、すでにルヴィーが登校していた。
いつものように挨拶してくれたが、私の不機嫌そうな顔を見てギョッとした顔をした。事情を隣にいたシルビアに聞いて、彼は冒頭の言葉を口にした。
「はい。私やアンジュ様は、トレーフル様が庇ってくださったので全く言葉を交わしてないのですが、トレーフル様はとても精神的に疲れたようで」
「なるほどなぁ……まぁタイプ的には、トレーフルの嫌いなタイプだよな」
「と言うよりも、南の国の考えはあまり好ましいものではありませんからね」
南の国の結婚制度に関して否定的と言うわけじゃない。国には国の考えというものがある。
アニメや漫画でも、そう言ったハーレムものの作品はよく目にする。でもそれは、あくまでフィクションだから良くて、実際は好ましいものではない。
私は、好きな人には私だけを見て欲しい。
好きな人が他の人も好きになって、自分と同じように愛する。そしてそれを許すなんて、普通はできるはずがないんだ。平等愛は絶対に成り立たない。
なにより、私があの王子が不快でたまらないのはハーヴェを馬鹿にしたことだ。
確かに家同士が決めた婚約だけど、私はちゃんと彼を愛している。なのに、あんな……。
「どうやったら国際問題にならずにあの王子殺せるかな」
「おい、発言がもう国際問題級だ。口にするな」
「だってあの王子!私やアンジュ、シルビアの婚約者!つまりハーヴェにルヴィーにキリクを馬鹿にしたのよ!まじ許せない!」
「確かにそうですね。私もお手伝いします!」
「気持ちは嬉しいが……シルビアを巻きこむな」
「でも実際、私やアンジュはともかく、シルビア口説くのは国際問題でしょ?次期王妃だし」
まだ矛先が私やアンジュに向くのはいい。いや、アンジュに向くのもなるべく避けたい。でも、シルビアはルヴィーの婚約者でこの国の次期王妃。そんな相手を奪おうとする他国の王子なんて、戦争になってもおかしくないことだ。彼は警戒すべき人間だ。
「はぁ、あんな王子に使える従者が可哀想だよ。荷物もあんなに持って」
「そういえば、3年生とはいえ、同じ科であの方は見たことがないですね」
「クロイツ殿下の従者は特別なんだ。一応生徒の扱いだが、クロイツ殿下の従者ってことで、彼に付き添って騎士科の授業に参加していたらしい」
ミセリアのこともあり、学園に戻る前にルヴィーは陛下からもう一人の留学生であるクロイツ殿下についての話を聞かされていたようだ。
どう言った理由でこの国の学園に入学したのか、入学してからどういう行動をとっているのか。
ルヴィーから話を聞いて、内容と今日会った人物は同一で問題ないと思えるほどたった。
ただ、本当のバカなのかそうでないかはわからない。
バカでなければ、シルビアには手を出さないだろう。それでもやっぱり、警戒はすべきだろう。
「まぁ、学科も学年も違うし、よっぽどのことがなければ会うこともないだろう」
「ルヴィー……いい加減覚えてほしんだけど。そういうのフラグっていうんだよ」
「え?……おいやめろよ」
まぁそのフラグがどのように立つかはわからないけど。