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17話:神聖なる神獣の世界2

最初はただ、前世の話をした。どいうものがあって、どういう人間、生き物がいるのか。そして自分のことも話した。

だけど、どんどん感情が高ぶって、結果的に自分がどう死んだのかも話してしまった。


「すみません、このような話をして」

「良い。気持ちは楽になったか?」

「そうですね。前世の記憶があるだなんて、誰も知りいませんから。だいぶ楽になりました」


うっすらと涙を浮かべながら笑みを浮かべる。そばで心配そうにしている子供のドラゴンが弱々しく声を上げながら私を見つめる。

安心させるために、私は優しく頭を撫でて上げた。


「それにしても興味深いな。この世界が、お前が記したものと同じというのは」

「正確には、今から10年ほど先の話です。神獣様からしたら、あっという間だとは思いますが」

「そうだな。我からすれば、10年など、数時間、数分と変わらない」

「時間……あの、神獣様にお聞きしたいことがあります」


あることを思い出した私は、何百年と生きている神獣様と話す機会などないと思い、話は突然変わってしまうが尋ねることにした。


「精霊を見る方法か?」

「はい。正確には、見えない人が見る方法ですが」

「そうだな。あるにはある」

「本当ですか!?」

「あぁ。だがそれは、普通しようと思ってできるものではない」

「それは……」

「我々との契約だ」


神獣との契約。そんなことができるものなのだろうか。

神獣は私たちが暮らしている世界とは違うここで生活をしている。見るのは当然、こうやって話すことすらできるはずがない。


「我々は神に作られた獣。あちらに住む生き物とは違うのだ。だから、主らが見えないものも我らには見える。お前の魂のようにな」


だから、契約することでその神獣の目を共有することができ、精霊を見ることも可能というわけだ。

他の方法がないか尋ねたが、彼が知る限りではないとのことだ。

研究すれば精霊を見る魔法や薬ができるかもしれないが、精霊もまた神の領域に近い生物のため、禁忌に属するもので、見つかれば問答無用で処刑されるだろうとも言われた。


「お前は、精霊が見たいのか?」

「はい。でも、それは半分です」

「もう半分はなんだ」

「友達が、精霊が見える目を持っているのです。でも、精霊が見える人間は稀な存在です。人間は、異なるものを軽蔑します」

「愚かだな」

「確かに精霊は見たいです。でも、私はその友人が見ている世界を見たいのです。あの子が笑顔で、幸せそうにしている、彼女が当たり前に見ている世界を、私は見たいのです!」


半分といったが、8割がこっちの理由だった。そのことを神獣様も見抜いたようで、なんともすごい迫力で大笑いされた。流石にこれにはびっくりした。


「お前は面白い人間だ。うむ、気に入った。そういえば人の子よ、名を聞いていなかったな。聞こうか」

「あ、はい。今世では、トレーフル・グリーンライトと申します」

「トレーフルか。良い名だ。我にも一応名はある。我が名は、アモルという」


アモル……確かラテン語で愛って意味だったかな。ホワイトドラゴンは家族愛の象徴だったから……なるほど、名はしっかりと現れているということか。


「アモル様、ですか」

「様は良い。気軽に呼べ。トレーフル、我は主を気に入った。主を我の友としたい」

「友……え!私がア、アモル様の友達ですか!?」

「あぁ。我は他の神獣に比べれば人間との交流はほぼ皆無だ。我と友になることは光栄なことだぞ」

「それはそれで重いです……」


ドラゴンの顔でも、アモル様が笑みを浮かべているのはわかる。

本当に、私が神獣と友達に!それが本当なら……


「とっても嬉しいです!」

「うむ。では、友の証を主に与える」

「証、ですか?」

「あぁ先ほど話した契約というのは、我らから、相手への友の証のことだ」


なるほど、友達の証か。契約って言葉にしたのは、わかりやすくいってくれたのかもしれない。でも、契約よりも友達の証の方が親しみやすい。

アモル様の頭がこちらに伸び、大きな額が私の額に触れた。しばらくすれば、アモル様の額が離れ、私は水辺で自分の額を見た。そこには、何か紋章のようなものが浮かび、光っている。


「それが証だ。これでお前は精霊を見ることができる」

「本当ですか!?」

「あぁ。それと、その証は我と主を繋ぐもの。我の名を呼べば、どこでも主を助けよう」


なんてすごいオプション付きの友達の証。でも、これって一方通行じゃ……何か代わりになるようなものないかな?


「どうした?」

「いえ、友達なのに、私ばかりがこんな……友達ってこう、助け合いというか……」

「ふむ……であれば、先ほど話していたトマトを木箱いっぱいに月に一度持ってくるのはどうだ」

「トマトですか?」

「あぁその子が随分と気に入ったようだからな」


その子、というのはそばにいる子供ドラゴンのことだろう。それだけでいいのだろうかと思ってしまったが、アモル様は元々私からの何かは期待していないとのことだった。人間が神獣にしてあげることがまずないからだ。


「……わかりました。トマトを用意します。でも、もしアモル様の方から私にしてほしいことがあればいってください!!私たち、友達ですから!」


ニッと歯を見せるように笑みを浮かべれば、アモル様も笑みを浮かべながら「あぁ」と答えてくれた。

その時だった。湖に、黒い影が現れたのは。上空ではなく、水中にいたそれは、しばらくすると勢いよく海面に飛び上がった。

上半身は馬で、下半身が魚の獣。


「ケルピー!?」


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