163話:また近いうちに
翌日、朝食を済ませた後、私はいよいよ学園へと戻る。
荷物は空間魔法で収納しているため、いつもながら手ぶらである。
「では、そろそろ行きますね」
「あぁ、気をつけてな」
「みんなに迷惑をかけちゃダメよ」
いつも通り、両親は私を心配してくれている。別の意味でだけど。
アルは涙を滝のように流しており、そんな彼にステルラがハンカチを差し出していた。
「あ、そうだお父様、一つご提案が」
「ん、なんだ?」
「領地の南側、荒れた土地があると思いますが、そこをアルに調べさせてください」
「アルに?」
「土魔法のいい練習になるでしょうし、土地の状態がわかれば新しい作物が植えられて、領地の繁栄になると思います」
「確かに、あそこは開拓を進めたいと考えていたが……」
「僕、やりたいです!」
「だが、お前は来年には入学だ。そんなことをしている暇は」
「目処を立てるだけでも、入学までの課題とすればよろしいかと」
土地の状況が分かれば、後は父に任せればいい。
私が足を運んで、精霊たちに土の状態を聞けば済むが、それでは意味がない。
精霊がいて当たり前ではなく、一から調べて結果を出すことに意味がある。
それに、アルも屋敷の敷地内にある庭だけではなく、もっと大きな物に挑戦をしてもらいたいしね。
「何かあれば私も協力します。提案したのは私ですから」
「……よかろう。私も、お前があそこの調査をしてくれれば、別の仕事に手を回せるから助かる」
「はい。精一杯やらせていただきます!」
「何かあれば、すぐに言いなさい。どんな些細なことでもな」
そういいながら、父は私をチラリと見る。
きっと昨日の話のことなんだろうけど、あれはその時にも言ったけど確信がなかったからなんです。だから、わざとではないんです。
「それでは、そろそろ行きますね」
「何かあれば、いつでも連絡しなさい」
「はい。それでは、行ってまいります」
こうして、長いようで短い休みが終わった。
学園に戻ればすぐにテスト期間。それが終われば、二学期が始まる。
二学期は学園生活の中で最も期間が長く、その分イベントごとも多い。
文化祭のようなものもあれば、剣舞祭と呼ばれる戦いメインのイベントもある。
後は、論文発表会みたいな、新しい魔法の発表会的なものもあるそうだ。
どれも楽しみで仕方ないけど、なんだか一波乱ありそうで嫌な感じもする。
例の、依代の件もあるしな。
と、先のことを考えてもしかたない。まずはテスト勉強を頑張らないとな。