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余談2:婚約者へのプレゼント(ルヴィー視点)

ミセリアの国での魔王を生み出す計画を阻止し、とりあえずは無事に事件解決となった。

明日には国へ帰るため、その前に桜華の観光をということで、俺たち四人は城下を色々見て回った。

前世の記憶を持つレーフとホーリーナイト嬢は懐かしさを感じてるようで、俺やハーヴェンクが知らない言葉をさも当たり前のように口にしていた。

逆に、俺やハーヴェンクは見たことないものばかりで、その目新しさに興味を惹かれていた。

食べ物ももちろんだが、装飾品も煌びやかな宝石は一切使われていないが、細かな細工に目を奪われる。


「んー……いや、こっちか?」


食事を済ませた後は、それぞれお土産選びでバラバラに分かれた。

俺も、父上や母上。そしてシルビアに何かお土産をと思って探している。

とりあえず、父上には桜華の酒を、母には装飾品で簪を送ることにした。

そして、一番悩んでいるのはシルビアへの土産。

なるべく母上とは別のものにしたく、簪以外で何かいいものはないかと考えていた。


「あれ、ルーヴィフィルド様?」

「ん?あぁホーリーナイト嬢か」


聞き覚えのある声に振り返れば、店の出入り口にホーリーナイト嬢が立っていた。彼女もこの店に買い物に来たのだろうか。


「殿下も、お土産ですか?」

「あぁ、シルビアにと思ってるんだが、なかなかな」

「……僭越ながら、ご意見を述べてもいいですか?」

「ん?あぁ助かる。俺はこういうものは少し苦手でな」


プレゼントを送る相手は、政治的理由で決められた相手だけ。

それは結構気が楽になるが、その相手はどれも俺にとっては大事な相手ばかりだ。

どういうものを送れば喜ばれるのか、これは何年か前に送ったから別のものを。もうそう言う歳ではないから。そうやって難しく悩むせいで、いつもギリギリに決まったり、決まっても不安に感じることが多々ある。

特にシルビアやレーフへのプレゼントはとても悩む。

シルビアは婚約者だから、喜んで欲しくてすごく悩む。

レーフの場合は、あっちのプレゼントが凄すぎて、どれも見劣りしてしまって悩んでしまう。


「母上に簪を送ろうと思っていてな、できれば別なものがいいと思って……」

「そうですか……であれば、反物などいかがでしょうか?」

「反物?」

「着物になる前の布のことです。シルビア様はデザインセンスのある方なので、きっと素敵なものを作られると思います」

「……そうだな。確かに、完成品よりも色々考えて形にする方がシルビアも喜ぶだろうな」

「はい。それに、私たちのいたところでは着物をドレスにしたものもありましたので、物によっては流行る可能性もありますよ」

「ほぉ、興味深いな」

「今後、私からお話ししますね」


そう言いながら、彼女は笑顔を浮かべて、商品に目を向ける。

そういえば、こんなふうに彼女と二人で話すのは初めてかもしれない。

前世については、レーフから話を聞いていた。

ここはレーフが考えていた世界にそっくりで、その物語では彼女がヒロインで俺が主人公だったそうだ。

俺たちが恋に落ちて、シルビアやレーフが断罪される物語。今の関係性を考えるとあり得ないことではあるがな。

でももし、何かが違えば、俺と彼女は恋に落ちていたんだろう。


「柄は、どれにされますか?」

「そうだな……ん?これは何という花なんだ?」

「あぁ、それはスミレというんです。確か、花言葉は【愛】だったと思います」

「愛……少し照れ臭いが、これにしよう」

(もう一つ、【貞節】って意味もあるけど、それはあえて伏せておくか)

「1種類だけでは少し寂しいな。後2つほど選ぶか」

「でしたら、同じような意味の花の柄がいくつかありますよ」


こうして、ホーリーナイト嬢の手助けのもと、シルビアへのプレゼントが決まった。少し大荷物にはなったが、これを使って、シルビアが好きなものを色々と楽しそうに作ってくれたらいいなと思った。

送る相手は、もしかしたら俺ではないかもしれないが、それでも彼女が喜んでくれたら、俺はそれで満足だ。


「ホーリーナイト嬢、手伝ってくれてありがとう」

「いえそんな!私は、殿下とシルビア様がもっと仲良くなってくださるととても嬉しいので、その手助けができて嬉しいです」

「……君も俺たちの仲を応援してくれているのだな」

「もちろんです!お二人もですが、トレーフル様やハーヴェンク様のことも私は応援しています」


それは俺も同じだ。誰かが俺たちの仲を応援してくれているように、俺もまた彼ら彼女らの仲を応援している。その中には、ホーリーナイト嬢のことも含まれている。大事な従妹の友人だしな。


「お礼、とはいかないが、もし何かあれば頼ってくれ」

「そんな!私はそんなつもりで手伝ったのでは……」

「お前は謙虚だな。レーフなら私がいう前に貸しだと口にするぞ」

「確かに、トレーフル様ならいいそうです」

「だからお前も気にするな。公式の場では少し厳しいが、それ以外なら俺たちは友人なのだから、頼ってくれ」

「……殿下にそう言ってもらえてとても嬉しいです。では、その機会がありましたら、頼らせていただきます」

「あぁ、任せておけ」


そして、二人一緒に待ち合わせ場所に行けば、すでにハーヴェンクの姿があった。レーフはまだプレゼント選びに悩んでいるようで、それからしばらくして、彼女が待ち合わせ場所へとやってきた。


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