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161話:面倒ごとは大人に任せて

簡単な身支度をした私は、そのまま使用人も連れずに父の書斎へと足を運んだ。

扉を軽くノックをすれば父の補佐官が私を出迎えてくれた。

案の定父は仕事中で、補佐官も父が多忙であることを説明された。

そんな時に、私が今回のことを話せば悩みの種が増えてしまう。頃合いを見て、また出直そうと思った。


「構わない、通せ」


一歩、後ろに下がった瞬間にデスクで仕事をする父が書類に目を向けたまま許可をくださった。

そのまま中に入り軽く挨拶をする。

父の机には多くの書類。休憩スペースには手付かずの紅茶や食事が置かれている。本当に忙しいようだ。


「忙しい時に訪ねて申し訳ありません。ご多忙であれば、また後日伺います」

「構わない……それに、少し休めとも言われているしな」


チラリと父の視線が上がった瞬間、扉が閉まる音がした。

先程まで部屋の中にいた補佐官がいなくなり、私と父の二人だけになった。


「何か話があったのだろう」

「あ、はい。今回のこともありましたので、勝手をしてしまうとその……怒られると思いまして……」

「なんだ。まだ言ってないことがあるのか?」

「はい。信憑性がなかったため、話しておりませんでした。しかし、明日には学園に戻るので、私ではどうしても調べられないと思ったので、父上たちにお願いしようかと思いまして」


でも、こんなにも忙しそうな父に本当かどうかもわかないことを話して大丈夫だろうかと、ここに来て思ってしまった。

さっきも思ったが、父の悩みの種を増やすのは正直申し訳ないとおもってしまう。


「そうか。まぁ、その心意気は成長の証だな。お前は本当に色々なことに巻き込まれるかな」

「言葉もありません」

「それで、その信憑性のないこととはなんだ」

「はい。実は……」


私は父に、ヴァルが口にしたことを話した。

どこかの国が何かの依代を作っていること。ただ、それをヴァルはトレラ様にいつの頃聞いたことなのか。場所がどこなのかも、いつの話かもわからないそれは、本当なのかもわからないし確かなものではない。


「依代……今回の桜華の姫のような存在か?」

「いえ。それが生物なのか、人形なのかもわかりません。あくまでも何かの依代としか」

「そうか……確かに、信憑性のないことだな。しかし、神獣様が口にされたことであれば、可能性がないわけではない。わかった、それについてはこちらで調べよう」

「お忙しいところ申し訳ありません」

「いい。国に関わることだ。それに、私のことを気遣ってお前が独自で調べるほうが悩みの種になってしまう」


本当にぐうの音もでません、お父様。

ただ、あまりこう言うことを思いたくないですが、なんだかヴァルに聞いた時にフラグが立ったような気がします、本当に。


「この事は私から陛下に話しておく。お前は大人しくしていろよ、と言いたいところだが、一応このことは頭に入れておけ。何かあってはいけない」

「わかりました」

「あぁそうだ。休み明けにはテストがあるだろう。兄上……陛下もお前の成績を楽しみにされている」


なぜ陛下が私の成績を楽しみにされているのだろうか。

まぁ、悪い成績をとらないようには気をつけるけど。

実技も筆記も不安要素はないしな。あぁでも、アンジュが薬学が不安って言ってたな。シルビアは魔物に関する部分がちょっと不安だと言ってたな。

そこらへん、先生たちに個人レッスンを受けてたおかげで完璧だから、戻ったら一緒にテスト勉強でもしようかな。


「任せてください。とても素敵な成績を収めましょう」

「そうだな。しばらくは、大人しくしていてくれ。2学期になれば、行事ごとも多いだろうしな」

「わかりました。私の話は以上になります、失礼します」

「あぁ、また夕食で」

「あ、そうだ父上」


一度父に背を向けたが、私はあることを思い出してもう一度振り返り、机の前に足を運んだ。

そして、そこに小瓶を1つ置いた。


「これはなんだ?」

「私が調合した疲労回復の薬です。あまり寝れていないようなので」

「確かに、仕事が忙しくてあまり寝れてないな。疲れが溜まってるせいか、寝つきも悪くてな」

「そうですか。もしこの薬の効果があるようであれば、後日レシピをお送りします。依存しすぎるのも良くないので、使用するのは月に1回までにしてください」

「すまないな。ふむ……お前はこういうのも作れるのか」


体質の調査の際、バイエルン先生に色々と薬草について教えてもらったおかげで作ることが出来たものだ。

完成した時、試しに先生に飲んでもらったら3日間爆睡して、目が覚めたら体がピンピンしていたそうだ。

きっと、この書類の一部には私も関わっているだろう。せめてもの謝罪の気持ちだ。


「早速、今夜にでも飲ませてもらう」

「もしかしたら、効果があって数日寝るかもしれないので、仕事の引き継ぎはしっかりしてくださいね」

「そ、そんなに効くのか?」

「人によると思いますが、明日は見送りをして欲しいので、私が学園に戻った後に飲んでくださいね」

「そうさせてもらう。ありがとう、レーフ」


再度、私は父に挨拶をして部屋を出た。

一応母やアル。メイド長や執事長にも薬については話しておかないと。

突然父が数日眠るとなると騒ぎになってしまう。


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