表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/486

159話:口付け(マーキング)

一人、甲板に残った私は空を見上げていた。

別に、キスをされて呆けたわけじゃない。むしろその逆、焦りだ。

もしこのことがハーヴェに知られたらどうなるのかと。

相手は最古の吸血鬼で、あのリネアを殺した相手だ。殺し合いになればハーヴェが死ぬ。


《トレーフル、起きているか》

「アモル様!はい、起きています」

《先ほど、古吸が来ていたようだな》

「古吸……もしかして、ヴァルのことですか」

《ほぉ、お前には愛称で呼ばせているのか。珍しいな》


確かに、もう1000年以上契約をしているトレラ様でさえ、彼のことは普通に名前で呼んでいた。アモル様も古吸って呼んでるし。

まぁ、古の吸血鬼を愛称で呼ぶなんて普通ないからなぁ……


《何ようであれは来たのだ》

「天使リネアとの戦闘で助けていただいて、そのお礼の吸血です。去り際にキスされましたが……」

《キス……口付けのことか》

「あ、はい。ハーヴェにしられないか不安です」

《……お前はつくづく、多くのものに好かれるな》

「え、まぁ意図したことではないですが……」

《その様子では、意味は知らないようだな》

「意味、ですか?」

《吸血鬼からの口付けはマーキング。つまり、所有の証だ》

「所有って……え!?つまり血液タンクですか!?」


マジか!あのキスにそんな意味があるのか。

うわー、血液タンクって響き最悪。吸血鬼からしたらやっぱり人間の私も家畜と一緒なのだろうか。


《そう悪い意味ではない。マーキングは、言い換えればものに名前を書くのと同じだ。自分のものだから手を出すなという》

「ということは、マーキングされたことで何かあるのですか?」

《まず、当たり前だが古吸がお前を殺すことはない。そして、古吸よりも格上でなければ、他の吸血鬼がお前に手を出すことはない》


なるほど……つまり、私はヴァルに殺されることもなく、他の吸血鬼に襲われることもないってことか。

そんなことをするほどに私の血、というか魔力は美味しいのだろうか?


《まぁ、悪いものではないということだけは確かだ》

「吸血鬼のマーキングって、血を吸うことで行うかと思ってました」

《普通はそうだ。だが、それはあくまで食糧に対してのマーキング。お前のは、吸血鬼の好意によるマーキングだ》

「……食料ではなく、私という人間を気に入ったってことですか」

《そうなるな。あれが特定の人間を気にいるのはかなり珍しい。どういう行動をとるかわからんが、トレラには我から言っておく》

「よろしくおねがいします」


その後は、長い時間アモル様とお話しした。

不思議と、話をしていると眠気に襲われてきた。この眠気を逃すわけにはいかず、私は中に戻ることにした。


《またこちら側に来てくれ。子供達が寂しがっている》

「はい、また伺います」


その会話を最後に、アモル様の声は聞こえなくなった。

私は大きなあくびを一つした後、中に戻ってぐっすり眠った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ