155話:終幕
さっきの魔法、魔力が一切感じなかったけど……知らない魔法だ。
「これで一件落着かな」
「……あ、はい。ありがとうございます」
「おいらは何もしてないさ。お礼ならニルヴァルドに言ってくれ」
「うおっ!?」
いつの間にか私の背後にいた彼は、首筋に顔を埋めてきた。
「お礼は君の血でいいよ」
「あ、えっと……今すぐはちょっと……」
「えー」
「は・な・れ・ろ」
ムッと不機嫌そうな顔をするニルヴァルド・メンシス・オルロック。そんな彼を私から引き離そうとするハーヴェ。
まぁ吸血行為は別に構わないけど、今はとりあえず休みたいから、とりあえずまた後日でお願いした。
お二人はそのままその場を後にし、私たちはゆっくりではあったけど地上に戻った。
逃げ出したフィデースの人間は桜華の兵たちによって再度拘束されていた。
この国のことは、雨龍様が後はいろいろやってくださるそうで、私たちは先に馬車に乗って桜華で休むことになった。
魔力切れ寸前だった私は、桜華ではほぼ寝たきり。起き上がるのもきつくて、アンジュがご飯を食べさせてくれた。
「ん、そっか。それはよかったね」
フィデースは桜華によって吸収されることになったそうだ。
一度国を解体し、新たに街を作って、そこに元フィデースの国民を住まわせるそうだ。その統治にミセリアが抜擢されたが、彼はまだ若い。それに、せっかく学園に通っているのだから、しっかり卒業した方がいいと言うことで、1年間の留学ではなく正式に生徒となり私たちと一緒に卒業することができるそうだ。
で、ミセリア父。今回の改革に関わった人間は、全員桜華の地下に幽閉され、しばらくして死刑になるそうだ。
まぁ未遂とはいえ、世界の危機の原因になろうとしていたし、危険視されて殺されるのは仕方ないだろう。
「トレーフル。改めて今回は巻き込んでごめん」
「気にしないで、もう終わったことだし」
「ありがとう。もし、僕に協力できることがあったら何でも言って。特に魔法の研究」
「うん。あ、何個かやってみたいことがあるから、学園に戻ったら研究手伝って」
「任せて!」
こうして、東国の魔王作成問題は無事に解決した。
羽衣華様のことも、今回の事件をきっかけに国民たちに、雨龍様が正直に話された。
黙っていた王族に反発する者もいれば、涙を流す者もいたとか。
「そうだ!もし、明日動けそうであれば観光しませんか。そろそろ帰らないといけないですし」
「そうだね、みんなにもお土産買っていきたいし」
「和菓子いっぱい食べたいです!」
「いいね。あんみつ食べたい」
「いいですね。他にわ……」
なにはともあれ、無事に事件が解決してよかった。
今日はしっかり休んで、明日はみんなで観光を楽しもう。