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154話:最凶の吸血鬼

眠そうだけど、あの時と同じで軽い口調のトレラ様。

相変わらず無気力な表情の吸血鬼、ニルヴァルド・メンシス・オルロック。

夜の住人たちが、今目の前に姿を現した。


「って、なんだあれ!?とんでもなく悍ましいのがいるぞ」

「お二人ともすみません。あれを、どうにかしたいんです」

「どうにかって……具体的には?」

「可能なら、中にいる元凶を取り出したいんです。依代になっている子は、彼の娘で……」


チラリと雨龍様の方を見れば、まだ彼は立ち直れてないようだ。

そんな彼の様子をトレラ様も見つめ、考えてくださってけど。


「無理だな。一度依代になってしまったら、もう元には戻れない。あれはもうお前さんの娘じゃないよ」

「……」

「他には?」

「戻すのがダメなら封印。それも難しければ殺してください」

「OK任せて。正直封印はお勧めしない。結局、最悪を引き延ばす形になる。一番いいのは殺すことだ」


やっぱりそうなるよな。

まぁ、1番の望みが無理なら、私も殺す以外の選択はないと思っていた。ここは、後で恨まれてもいいから頷くしかない。こういう状態で、被害を0に抑えるのは不可能なことだ。


「あれは、触れたり、声を聞いたり、目を合わせると死んでしまうそうです」

「えぇー!なにそれやば。随分悍ましいけど、魔族?それとも悪魔?」

「詳しいことはわかりませんが、悪魔に魅入られた死を愛する天使だとか」

「天使ね……見た目はそうだけど、能力が天使のそれじゃないな」


しゅるると笑うトレラ様。ニルヴァルド・メンシス・オルロックの方は、いつもと変わらない様子だ。大丈夫かな?


「だとよニルヴァルド。まぁお前にはあんまり関係なけど、ささと片付けろよ。昼間の活動は最小限にしたい」

「わかってる」


彼はゆっくりとリネアに向かって手をかざす。

すると、彼女の右腕が吹き飛んだ。


「再生能力はないみたいだな」

「次はひだ……」


次は逆側を吹き飛ばそうとしたが、リネアが口を開いて息を吸い込んでる様子が目に入る。声を出そうとしているのだろう。


『喋るな』


魔法を含んでいるのか、口にした言葉に少し違和感があった。そして、彼が言った通りリネアは喋らなかった。というよりは喋れなかった。


「目もあると面倒だな」


左腕を吹き飛ばす前に、彼は視覚を奪った。

金色の目は潰れ、視界が暗くなったことで彼女はキョロキョロしている。


「おいおいおかしくなったのか?あいつ笑ってるぞ」


視界を奪われた瞬間。無表情だった彼女の顔に笑みが生まれた。

どうして笑っているかわからない。彼女にとって、何かそうさせるものがあったのだろう。

どんなに表情が変わっても、吸血鬼には何の感情も動かなかったのだろう。躊躇なく左腕を吹き飛ばした。


「やめてくれ!!」


不意に、雨龍様はそう叫ばれた。涙を流しながら、苦痛に顔を歪ませる。

どうしてそんな顔をするのかわかる。たとえ中身は違えど見た目は娘だ。そんな娘の腕が吹き飛び、目が潰される様子を見て心が痛まないはずがない。


「雨龍様」

「人間、あれはもうお前の娘じゃない。それに、あんな悍ましいものの依代になっちまったんだ。長い苦痛を与えるより、一思(ひとおも)いに殺した方が娘のためだとおいらは思うな」


トレラ様の言う通りだ。

もしまだ自我があったとして、この光景を羽衣華様が見ていたらもうやめてほしいときっと思うはずだ。早く自分を殺して、この光景を終わらせてほしいと、そう思うかもしれない。


「あんたの親心ってものは、残念ながらおいらやニルヴァルドにはわからん。でも、それがいいものってのは理解してるつもりだ」


ニルヴァルド・メンシス・オルロックはリネアの方へ。トレラ様は、雨龍様の前へとやってきた。


「おいらは夜の監視者。基本的に夜に行動している。だから夜にあったことは大体把握している。あんたが、毎夜娘の部屋に行っていることも」

「っ!」

「だからこそ、あぁなっちまった娘のためにもしっかり見届けろ。そして、選択を誤るな」

「……そうですね。あぁなってしまったのは私にも責任があるかもしれない。すまない羽衣華。一人で苦しかっただろう。すぐにはいけないが、必ずお前に会いに行く。先に待っていてくれ」


涙を流しながら、雨龍様は手を合わせ、それとほぼ同時に、ニルヴァルド・メンシス・オルロックが魔法を使って肉のひとかけらも残さず、リネアを消滅させた。


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