153話:白い少女3
どれだけ戦っただろう。
相手は幼い少女。でも、中身はとんでもない存在。
勝てそうなのに勝てない。それが酷くもどかしい。
「トレーフル殿。娘は救えないのか……」
まだ気持ちの整理ができていないのか。戦う意思も、逃げる意思もない雨龍様は、ただぼんやりとリネアを見つめるだけだった。
「確かにあれはあの子じゃないかもしれない。でも、それでも……」
雨龍様の気持ちはわかる。でも、どうすることもできない。
助けようにもその方法がない。でもそれは、封印も殺しも同じだ。どうすればあれを止められるのか、その方法が私にもわからない。分かれば、どうにかして私はそれを実行するのに。
「ぐっ……」
「ハーヴェ!」
剣はリネアが触れれば折れてしまう。折れるたびに新しい剣を握るが、今彼が握っているのが最後の剣だった。
体力も限界だ。
私も、何度も魔法で援護しているけどすぐに壊されてしまう。聴覚遮断の魔法も、今は使えてない。
こんなこと何度も続けていれば魔力切れになるし、その前にハーヴェが死んでしまう。
どうすれば……なにか、なにか……
――― そいつを叩き割れば、その瞬間おいらたちが召喚される
ふと思い出したその言葉に、私は無意識にポケットに手を伸ばした。
問題解決するかわからない。でも、ただの人間の私たちにできなくても、人間ではない彼らならどうにかできるかもしれない。
これは賭けであり、そうであってほしいと言う願いだ。
「助けて……助けてください!」
ポケットから石を取り出し、地面に向かって思いっきり叩きつけた。
その瞬間、急に風が蠢きはじめ、砕けた石が淡く光り始める。
パッと目の前で魔法陣が展開されて赤く強い光が放たれた。
「ふわぁ……まだ昼間だって言うのに、呼び出すなんてひどいなぁ」
甲板で聞いたその声が不意に聞こえた。
徐々に弱く光の中から彼らが私たちの前に姿を現した。
「やっほートレーフル。早い再会だね」